特集・ベストSFイヤーをもとめて

 ポスト・モダンの時代には、時間的広がりがないのだ、といわれる。

 過去でも未来でもない、“いま現在”こそが重要なのだという立場である。サイバーパンクが紹介されだしたころ、“いま”しか書かれていないじゃないか、と評された。批判的な意味も含めてのことだろう。けれど、まさに時代が“いま”(=同時代)重視だったのである。それを非難してもしかたがない。

 とはいえ、たとえば、SFファンが好きなベストテン選びは、過去の時間に左右される。それでなければ、過去に読んだ本を、状況のかわるごとに評価し直さなければならない。たいていの人は、そこまでしないだろう。自身の立場が、すでにできあがっているためである。編者が興味をもったのは、その“できあがったときがいつか”である。

 今回特集を組むにあたって、

1.読み手(ファン)としてのベスト
2.送り手としてのベスト
3.状況としてのベスト(翻訳、創作、海外)

 という、3種類のベストを想定した。寄稿をお願いしたのは、KSFAと関係が深かった翻訳家、作家関係の方々である。柴野さん、浅倉さんといった、初期からご支援をいただいている方や、酒井さんのようにthatta以降の方まで、幅広くお願いした。作家関係も、堀さん、谷さんから石飛さんまで、広い意味でKSFAと(あるいは編者と)関係のあった方々にお願いした。

 内容や対象については、何の制約ももうけなかった。同じことを、「アメリカがもっともすばらしかった年」とか、「バラードがいちばんだった年」とか、限定してみてもおもしろかったかもしれない。しかし、それではベストテンの延長にしかならない。書き手の本音が聞えてこないからである。

 結果は、1が圧倒的に多かった。2、3に触れたものも、1の立場を踏まえていた。目次の分布をみると、KSFAの世代が70年代中ごろを原点としていることがわかる。ノスタルジィだけのものもあるが、ある種の決意表明や、過去との決別を指向したものもある。それぞれに、あらたなベストをもとめていこうとしているのだと、編者には感じられた。

 各文の終りに、簡単な注釈をもうけた。これは、主に著者紹介(KSFAとのかかわりなど)や、文中の状況紹介を記したものである。それ以上の解説的な内容は、最小限にとどめた。

 なお、今回横組で編集した都合上、さしつかえがないと思われる部分(主に年号)について、本文中の漢数字を英数字に修正した。ご了承いただきたい。



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