表紙イラスト:生頼範義(以下同じ)

 「SFアドベンチャー」は1979年「SF宝石」とほぼ同時期に創刊される。出版社は徳間書店である。 当初は季刊(「問題小説」の別冊扱い)、第3号から隔月刊、第7号から月刊へと順調に移行。早川書房が翻訳中心だった関係で、日本作家の多くは「問題小説」等の中間小説誌に寄稿していた。その集大成が「SFアドベンチャー」だったのである。

 1981年の6月に突然SF宝石誌が廃刊となった後、SFチェックリスト欄はライバル誌であるSFアドベンチャー誌へと移ることになった。当時、チェックリスト欄の存在価値を重要視していた伊藤典夫さんらの働きかけで、ほぼ同じスタイルのまま継続されたのである。取り上げる作品も、宝石時代と跡切れ目なしという徹底さだった。アドベンチャーのもともとのレビュアーからは、野村芳夫が参加した。

 当時の編集者からは「よその雑誌のコラムをそのまま載せるなんて、かっこ悪いんですけどね」という、コメントも聞いた。

awaybull2.gif (77 バイト)1981年7月から1981年12月までの担当者:
awaybull2.gif (77 バイト)伊藤典夫 ・鏡明・安田均・伊藤昭・大野万紀・野村芳夫・岡本俊弥

 20号収録のレビューは、1981年1月31日から4月15日までの28冊。この時期もワープロ、パソコン以前の時代であるため、岡本分のみpdfファイルで収録した(以下同様)。

 また、当初は「SF宝石」にあった特集のような扱いもとられていない。

金星応答なし

スタニスワフ・レム 早川書房 伊藤昭

げたばき物語

半村良 講談社 岡本俊弥
レムの宇宙カタログ フランツ・ロッテンシュタイナー編 大和書房 大野万紀
カルチャトピア’90 糸川英夫+未来捜査局 CBSソニー出版 伊藤昭
プロジェクト・ライフライン ジャック・ウィリアムスン 早川書房 安田均
星へ行く船 新井素子 集英社 伊藤典夫
時空祝祭日 梶尾真治 早川書房 鏡明
ぼくはエイリアン 田中光二 奇想天外社 安田均
孔雀王 山田正紀 角川書店 野村芳夫
星型都市人 岡本達也 毎日新聞社 岡本俊弥
ボシイの時代 M・クリフトン&F・ライリイ 東京創元社 鏡明
幻魔大戦5〜10 平井和正 角川書店 伊藤典夫
ふぁん太爺さんほら吹き夜話 横田順彌 集英社 安田均
黄金の侏儒宮 半村良 講談社 鏡明
真幻魔大戦3〜5 平井和正 徳間書店 伊藤典夫
新宮本武蔵 光瀬龍 徳間書店 伊藤昭
パンドラ効果 ジャック・ウィリアムスン 早川書房 岡本俊弥
くたばれ敬語 豊田有恒 角川書店 野村芳夫
アバンダンデロの快機械 荒巻義雄 角川書店 大野万紀
ルーカン戦争 マイクル・コリンズ 久保書店 鏡明
ガラスの短剣 ラリイ・ニーヴン 東京創元社 野村芳夫
魔性の子 ロジャー・ゼラズニイ 東京創元社 大野万紀
憑かれた女 ディヴィッド・リンゼイ サンリオ 野村芳夫
杜松の時 ケイト・ウィルヘルム サンリオ 大野万紀
鳥人大戦争 ポール・アンダースン 双葉社 安田均
亜人戦士1 川又千秋 徳間書店 伊藤昭
ふるさとは水の星 森下一仁 集英社 岡本俊弥
虚人たち 筒井康隆 中央公論社 伊藤昭


 

 この号の目玉は平井和正『真幻魔大戦』の中篇一挙掲載である。この他、赤川次郎や西村寿行の連載が目立つ。
 


 1981年8月(21号)収録のレビューは、1981年4月15日から5月31日までの26冊。

 谷甲州の初長編『惑星CB-8越冬隊』が出版されているのが注目される。

世界カーSF傑作選 R・シルヴァーバーグ他編 講談社 鏡明
ファンタステス G・マクドナルド 国書刊行会 安田均
地球文明人へのメッセージ 小松左京 佼成出版社 鏡明
死者がUFOでやってくる ロバート・グロスバック 東京創元社 鏡明
惑星CB−8越冬隊 谷甲州 奇想天外社 安田均
人工の星 北杜夫 潮出版社 岡本俊弥
恋のメッセンジャー 山田正紀 集英社 大野万紀
風葬の街 田中光二 徳間書店 大野万紀
魔法使いの弟子 ロード・ダンセイニ 早川書房 岡本俊弥
神撃つ朱い荒野に 荒巻義雄 徳間書店 岡本俊弥
日本SFこてん古典V 横田順彌 早川書房 伊藤典夫
狼たちの曠野 高千穂遙 早川書房 伊藤典夫
トヨタが北米を席捲する時 高斎正 徳間書店 伊藤昭
宇宙塵版 派遣軍還る 光瀬龍 早川書房 野村芳夫
キャッチワールド クリス・ボイス 早川書房 伊藤昭
世にも馬鹿げた物語 横田順彌 角川書店 野村芳夫
罪深き愉しみ ドナルド・バーセルミ サンリオ 野村芳夫
予期せぬ方程式 横田順彌 双葉社 伊藤昭
ヘッドワイフ 式貴士 CBSソニー出版 安田均
略奪衛星 テッド・ホワイト 立風書房 伊藤昭
原魚ヨネチ かんべむさし 講談社 伊藤典夫
星の王子チャーリイ P・アンダースン&G・R・ディクスン 立風書房 安田均
奇妙な関係 フィリップ・ホセ・ファーマー 東京創元社 野村芳夫
THE 筒井康隆 峯島正行編 有楽出版社 大野万紀
昭和御前試合 清水義範 CBSソニー出版 鏡明
ドリームマスター ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 大野万紀


 

 この号の目玉は高千穂遥の「銀河番外地シリーズ」新作、白石一郎の「黒い炎の戦士」、石原藤夫の「光世紀パトロール」の中篇掲載など。
 


 1981年9月(22号)収録のレビューは、1981年5月20日から7月10日までの22冊。

 この月では、眉村卓の短編集3冊とアンソロジイが集中して取り上げられている。

幻の季節 眉村卓 主婦の友社 野村芳夫
師匠たちと弟子たち V・カヴェーリン 月刊ペン社 岡本俊弥
幻想のマーマレード 小泉喜美子 太陽企画出版 安田均
紫色の時差 ユング・ホルツ 日本経済新聞社 伊藤典夫
光の六つのしるし スーザン・クーパー 評論社 安田均
遥かに照らせ 眉村卓 徳間書店 鏡明
カメレオンの呪文 ピアズ・アンソニイ 早川書房 大野万紀
エーリアン殺人事件 栗本薫 角川書店 野村芳夫
ザ・ベスト・オブ・H・G・ウェルズ H・G・ウェルズ サンリオ 伊藤昭
ありふれた手法 星新一 新潮社 伊藤昭
ヴァージル・フィンレイ幻想画集 大瀧啓裕編 青心社 安田均
モーレツ教師 眉村卓 角川書店 大野万紀
理科系の文学誌 荒俣宏 工作舎 野村芳夫
キンズマン ベン・ボーヴァ 早川書房 伊藤昭
遥かなる光 エイザベス・A・リン 早川書房 岡本俊弥
沈黙の岬 UFOハンター・シリーズ1 田中光二 文藝春秋 安田均
幻覚のメロディ 眉村卓選 集英社 伊藤典夫
あいつらの悲歌 光瀬龍 光文社 大野万紀
きまぐれ読書メモ 星新一 有楽出版社 岡本俊弥
幻獣の密使 川又千秋 徳間書店 伊藤典夫
竜神戦士ハンニバル 大魔界1 田中文雄 早川書房 鏡明
スイートウォーター ローレンス・イエップ 立風書房 鏡明


 

 この号の目玉は、再び登場の平井和正「真幻魔大戦」の中篇一挙掲載。


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 この同じ月に、奇想天外誌が2回目の廃刊となった(奇想天外社版:1976年4月〜81年10月)。ちなみに奇想天外は、その後大陸書房から1987年に不定期刊の雑誌として復刊したが、1990年に3回目の廃刊を迎える。


 1981年10月(23号)収録のレビューは、1981年6月30日から8月10日までの21冊。

 奇妙なキャプションが付いているが、これは何かのCMのパロディ。何だったかはもはや憶えていません。
 

ヘルメス 落ちてくる地獄 ジョン・バクスター 角川書店 伊藤典夫
熱い太陽、深海魚 ミシェル・ジュリ サンリオ 伊藤典夫
エコトピア・レポート アーネスト・カレンバック 東京創元社 岡本俊弥
幻影の都市 アーシュラ・K・ル・グィン サンリオ 鏡明
メデューサの子ら ボブ・ショウ サンリオ 大野万紀
ショートショートの広場3 星新一 講談社 野村芳夫
矢野徹・SFの翻訳 矢野徹 奇想天外社 伊藤典夫
リングワールドふたたび ラリイ・ニーヴン 早川書房 岡本俊弥
ウルフェン ホイットリー・ストリバー 早川書房 岡本俊弥
ヴァルプルギスの夜 荒巻義雄 角川書店 野村芳夫
妖精画廊part2 荒俣宏編著 月刊ペン社 伊藤昭
三分間の宇宙 アイザック・アシモフ編 講談社 安田均
世界のオカルト文学・幻想文学総解説 由良君美監修 自由国民社 安田均
オペレーション・ノア 野坂昭如 文藝春秋 安田均
加藤直之画集 加藤直之 朝日ソノラマ 野村芳夫
パッチワーク・ガール ラリー・ニーヴン 東京創元社 伊藤昭
夢幻会社 J・G・バラード サンリオ 鏡明
スリランカから世界を眺めて アーサー・C・クラーク サンリオ 大野万紀
夢の言葉・言葉の夢 川又千秋 奇想天外社 伊藤昭
影の軍団 五島勉 双葉社 大野万紀
ロボットDとぼくの冒険 都筑道夫 桃源社 鏡明


 


 この号の目玉は、堀晃『バビロニア・ウェーヴ』、眉村卓『不定期エスパー』連載開始、笠井潔「巨人伝説シリーズ」第1作掲載など。


 1981年11月(24号)収録のレビューは、1981年7月30日(『太陽の世界2』のみ3月5日刊)から1981年8月31日までの21冊。

 

太陽の世界2・3 半村良 角川書店 大野万紀
おしゃべり各駅停車 眉村卓 角川書店 伊藤昭
乙女座からきた少女 若桜木虔 文化出版局 野村芳夫
異邦からの眺め フランツ・ロッテンシュタイナー編 早川書房 鏡明
ガニメデの優しい巨人 ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社 伊藤昭
黄金の水平線 荒巻義雄 徳間書店 安田均
幻魔大戦11・12 平井和正 角川書店 伊藤典夫
神々の角笛 ディ・キャンプ&プラット 早川書房 岡本俊弥
2018年キング・コング・ブルース サム・J・ルンドヴァル サンリオ 岡本俊弥
火星の美女たち 武部元一郎 岩崎書店 安田均
妖姫のいけにえ 川又千秋 角川書店 大野万紀
ナイトランド ウィリアム・ホープ・ホジスン 月刊ペン社 鏡明
みどりの妖婆 スーザン・クーパー 評論社 岡本俊弥
クトゥルーU 永劫の探究 オーガスト・ダーレス 青心社 野村芳夫
ユートピアの罠 ジョン・ウィンダム 東京創元社 大野万紀
SF九つの犯罪 アイザック・アシモフ他編 新潮社 伊藤昭
花と機械とゲシュタルト 山野浩一 NW-SF社 伊藤典夫
《虹》作戦を追え 宮崎惇 徳間書店 鏡明
無窮花作戦 豊田有恒 徳間書店 伊藤典夫
SF街道・二人旅 かんべむさし&堀晃 徳間書店 安田均
砂のなかの扉 ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 野村芳夫

 

 


 この号の目玉は、恒例平井和正「真幻魔大戦」の中篇一挙掲載の他、山田正紀『最後の敵』第2部が掲載されている(1982年に第3回日本SF大賞を受賞)。


 1981年12月(25号)収録のレビューは、本来の1981年9月から1981年10月15日までに加えて、年初からの注目作10冊を追加した21冊。
 

牧神の祝福 ロード・ダンセイニ 月刊ペン社 伊藤昭
時の旅人 アリスン・アトリー 評論社 岡本俊弥
ビバ! ドラゴン G・K・チェスタートン他 早川書房 野村芳夫
堕ちる天使 ウィリアム・ヒョーツバーグ 早川書房 岡本俊弥
神々の異端者 エスパー・コネクション1 清水義範 朝日ソノラマ 鏡明
世界終末大戦 デヴィッド・ラングフォード 三笠書房 安田均
秘密の武器 フリオ・コルタサル 国書刊行会 野村芳夫
冷凍人間アイスマン 加納一郎 朝日ソノラマ 伊藤典夫
第3の選択 レスリー・ワトキンス他 たま出版 鏡明
吉里吉里人 井上ひさし 新潮社 伊藤典夫
夜明けのヴァンパイア アン・ライス 早川書房 安田均
宇宙の傭兵たち ジェリー・パーネル 東京創元社 岡本俊弥
カリスマ マイクル・コニイ サンリオ 伊藤昭
都市国家ハリウッド ロバート・ブロック 早川書房 大野万紀
滅びの星 エドモンド・ハミルトン 久保書店 安田均
あやかし 山田正紀 集英社 伊藤昭
フランケンシュタインのライヴァルたち マイケル・パリー編 早川書房 伊藤典夫
早春のライダー 高斎正 徳間書店 大野万紀
JEM フレデリック・ポール 早川書房 鏡明
ひとめあなたに…… 新井素子 双葉社 野村芳夫
オベロンの手 ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 大野万紀

 1981年全般については、1982年の4月号 にベスト対談が組まれている。対談の出席者は、伊藤典夫、鏡明、安田均の3人で、下記作品が注目作に選ばれている。

  • ピータ・ニコルズ 『解放されたSF』(東京創元社)
  • 堀晃 『梅田地下オデッセイ』(早川書房)
  • 筒井康隆+横尾忠則 『美藝公』(文藝春秋)
  • R・A・ラファティ 『九百人のお祖母さん』(早川書房)
  • 筒井康隆 『虚人たち』(中央公論社)
  • クリス・ボイス 『キャッチワールド』(早川書房)
  • 横田順彌 『日本SFこてん古典(全3巻)』(早川書房)
  • ピアズ・アンソニイ 『カメレオンの呪文』(早川書房)
  • 眉村卓選 『幻覚のメロディ』(集英社)
  • ミシェル・ジュリ 『熱い太陽、深海魚』(サンリオ)
  • 井上ひさし 『吉里吉里人』(新潮社) *第2回日本SF大賞
  • 平井和正 『真幻魔大戦/幻魔大戦』(徳間書店/角川書店)
  • ロジャー・ゼラズニイ
    (ドリームマスター/砂の中の扉/真世界シリーズ全5巻/ロードマークス)
    『ロードマークス』のみサンリオ、他早川書房

 同号の評者によるコメントは下記の通りである。

 アメリカでは、2年連続でSF出版点数が減り、今年あたり1000の大台を割りそうだ。 日本でも、史上最大だった80年に比べ、たしかに減少している。しかし、翻訳ものでは、主に長編に、内容訳文とも良質なものが多かったし、国内の創作は短編集に良い作品が集まった。ベストに挙げられこそしなかったが、新人の進出が目立つ。例えば、神林長平、谷甲州、大原まり子、田中文雄らや、新井素子、夢枕獏、梶尾真治などの成長には、目をみはるものがある。
 


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