(サンリオ文庫版カバー)
この書評は、『世界のSF文学』(第3版/自由国民社)に収録されたもの。同書の性格から、書評というより紹介記事に近い内容となっている。(1984年12月刊) |
三匹の蛇がいる。 一匹は<砂>、 一匹は<霧>、そして、もう一匹は<草>と呼ばれた。<治療師>スネークは、そんな蛇たちの毒を、病気の治癒に用いる。しかし、ある村で、スネークは夢の蛇<草>を殺されてしまう。<草>は、病人の心に安らぎを与えた。繊細で、何より得難い生き物だった。数少ない貴重な蛇を失うことは、そのまま、治療師としての資格喪失につながる。こうして、夢の蛇を求める、彼女の旅が始まる。
核戦争後の地球、荒れ果てた地上には、小さな村々が点在するだけだ。天候は激変し、ある時期以外、移動することもできなくなる。過去の技術を守る都市は、扉を閉ざし、よそ者を一切受付ない。けれど、スネークは旅の間に、彼女を慕う少女と、青年の愛を得る。やがて、蛇を大量に飼う秘密のドームを知るが、そこでは、一人の男が蛇の毒を麻薬に使い、中毒者たちに君臨していた……。
ウォンダ・N・マッキンタイアは、C・J・チェリイ、タニス・リー、ジェイムズ・ティプトリーらとともに、70年代を代表する女流作家の一人である。本書は、78年のヒューゴー、ネビュラ両賞を共に受賞するなど、大変に大きな評価が与えられた、代表的作品だ。比較的フラットな物語に、色鮮やかな情景描写が鏤められている。翻訳書には、友枝康子訳『夢の蛇』(サンリオ文庫)がある。
*本書は1988年に早川書房から再刊されている。 |