95/05/01

瀬名秀明『パラサイト・イヴ』(角川書店)を読む。著者の専門的私小説部分を除くと、いまひとつである。しかし、その専門的部分があるからこそ、生きているともいえる。三〇億年の恩讐を秘めた(ミトコンドリア)遺伝子の逆襲、でありながら、遺伝子の頭がちょっと悪すぎるか。ほとんど(発想が)人間そっくりのエイリアンしか出てこないハリウッドSF≠ニ同じ出来である。

めずらしく庭仕事などをする。はじめから、勝手に木が植えてあるので、手入れせざるをえない。勝手に育つと思っていたのに、虫はつくは病気になるはで、人工樹木のひ弱さに愕然とする毎日。木の名前もよくわからんのだがねえ。

95/05/13

佐脇宅のXマーク(壁面の亀裂)マンションの写真を見る。この徴は、しかしまだマンションが地震に耐えた証拠であるらしい。柱が破砕するには至らなかったのである。なぜかというと、このマンションの佐脇宅の壁には『川の書』が人柱となって挟まっていて、建物の倒壊を防いでいるからである。主人の命を救った忠本川の書と呼ばれている。

さて、東京界隈では、大野万紀夫人のザッタ連載「スラムダンク日記」が大好評だという。震災を無視する極限状態の心理、家庭崩壊としか思えぬコミケ通いなどが、熱心な読者を産んでいる。内田春菊のようなものか。主婦というと、おばさんまんがトリオ(名前の頭文字=KYK)は、相変わらず膨大なインプットに命をささげている。日記を書けば、SD日記くらいは受けるはずである。その異常さは保証する。まあ、こういった過剰な消費者がいるからなりたつマーケットではあるが。で、うちの主婦はというと、家事もせずに、リカちゃんの服を近所のフリーマーケットで売りさばいていて、やっていることの次元はかわらぬ。ちょっとでも稼ぐのだからまーいいか。

フリー・ライターの坂井光宏が来ていた。関西にはまだ公共施設にごみ箱が置いてあると感動していた。

セミナーの話題はリムネットにまかせるとして。

大学後輩のK君が敬遠されているそうだ。彼は、筆者の世代からいうと、もはや五世代くらい後の後輩である(といいながら、フルネームも知らない)。まあなんというか、ノリの悪い人で、関西人でありながら正しい突っ込みができない。結構SF知識豊富なだけに、不幸なことである。

水鏡子は、あいかわらず競馬ツアーだったという。特に言うことはない。

アニメ『ママレード・ボーイ』が小学生に人気。息子も(今年から小学生)なぜか毎週見ていて、愛の本質を勉強している。こまったもんである。それにしても、うちの子供たちは、公衆の面前で無作法に騒ぎまくるという、しつけの悪いガキそのものとなりつつある。まったく親の顔をみたい(と思えるのも、幼少の自分を忘れた、子がない大人だけです)。

95/05/14

Y(昔の大会関係者)と会う。近所のNTT関連施設に勤めていて、来年からはN大の博士課程(専門はATM)に進む予定だという。巽博士に始まって(?)、成澤博士や菊池博士など博士の権威に陰りが見える今日この頃、なんというか、まあいいけどね。日本国の通信事業の明日に危惧を覚える今日この頃でもある。

95/05/16

出張で歩いていると、号外を受け取る。例の麻原逮捕ってやつね。まーそれはそれとして、オウム報道で識者のオウム批判は、たいていすべての宗教にあてはまる。教祖批判でいくと、池田大作某をはじめとして、キリストやマホメットなんて即逮捕。これは、宗教否定に直結する。権威がないとか、えらそうでないとか汚いとか、どーでもいいことを批判の種にしているのも不可思議。

マインドコントロール批判も同様。どこの国でも企業でもやっていることなので、批判=自己否定につながる。たぶん、言っているほうもわかって言っているので、なお困る(というほども困らんか)。

95/05/20

リムネットは、ウゾームゾーのホームページが山のようにあって混沌闇鍋サーバーである。大森望のページも、他のつまんないページに比べれば、結構なレベルではあるけれど、中味はザッタ並みの身辺雑記。毎日アップするのは感心であるが、このペースがそう長く続くとも思えぬ。だいたい何人のアクセスがあるのかね。インターネットは(プロバイダーさえ選べば)、だれもが情報発信者になれる。これは逆にいうと、あのつまんないパソコンネットの会議室が、そのままホームページになってしまう危険を孕んでいるということでもある。べっこーあめやらリムを見る限り、将来はあんまり明るくないよね。まあクズにリンクを張らなきゃいいわけだから、まだましか。ホームページの淘汰も急速に進むであろう。こういった大衆向き回線はどうせ安物低速だろうし(日本のこういった回線は、ほとんどが64kという低速ネットで繋がっている)。

ところで、QV10(カシオ製デジタルカメラ、実売5万円弱)は瞬く間にインターネットホームページ必携ツールと化していて、240×320の絵があれば、まずこれというくらい。画質は全く写真のレベルには及ばないものの、PC(WS)ならアラは目立たない。競合品のリコーデジタルカメラは、メモり込み三〇万で勝負にならぬ。ちなみに、抜群の解像度を誇るNIKONのデジタルカメラは、一〇〇万円を下らない。しかし、コダックもWIN対応デジタルカメラを目指していて、一〇万円台のカメラを出した。

95/05/21

久美沙織『夜にひらく窓』(早川書房) アイルランドを舞台にすれば、もうちょっとファンタジイとして自然だったろう。軽井沢では土曜劇場(火曜サスペンス?)の域を出ない。

神林長平『敵は海賊・海賊課の一日』(早川書房) いつものシリーズ。今回はやや軽い出来。

草上仁『愛のふりかけ』(角川書店) 例のスタイル(結末には不覚にも……)の大森望推薦文はあるものの、うーむ、これはちょっと冗長である。不要な会話が多すぎて、もうちょっと刈り込む必要があるのでは。ところで、前回書いた『くたばれ!ビジネスボーグ』は二年前の旧刊であった。本にはどこにも記述がない(カバーにも今年の奥付しかない、もちろん再版とも書いていない)。

ラシュコフ『サイベリア』(アスキー)買ってから、大森訳と気づくまぬけさ。謝辞を見るとほとんど身内本ですな。もうひとつドラッグ関係にはノレず。まーそれにしても、オウムはサイベリア的宗教だということがよくわかる。

95/05/27

西秋生からの手紙によると、神戸では本を古本屋に売る人が続出、しかし業者は新しい新書とコミック以外には興味を示さないそうである。ハードカバーなど二束三文。怒りのあまり、結局(蔵書の一部)五百冊を、中央図書館に寄付したとのこと。東京の皆さんも震災古本ツアーに出かけては。『パラサイト・イヴ』はコワさの裏付けが不足していて、リアリティを付加するだけならSFじゃないか、と怒っている。ホラーサイドの人から見れば、そういうことになる。しかし、同手紙にはMYD=麻原教祖説というのが書かれていて、なるほどねと思ってしまうのがまたコワい。

カード『神の熱い眠り』(早川書房) 表紙からして、惑星愛育シミュレーション・ゲーム風(プリンセス・メーカー風?)。中身はともかく、まー実際そんな設定ではあるな。

目次へ戻る

次月を読む