●海外作品
フラックス ジョン・バクスター(早川書房)
アインシュタイン交点 サミュエル・ディレイニー(早川書房)
ハッカーと蟻 ルディー・ラッカー(早川書房)
この不思議な地球で 巽孝之編(紀伊国屋書店)
ナイチンゲールは夜に歌う ジョン・クロウリー(早川書房)
[コメント]
今回は順不同。残念ながら飛びぬけた傑作、“本流”SFはなく、種種雑多な選択となった。バクスターやラッカーなどの90年代作と、60年代の伝説『アインシュタイン』が混在するラインナップ。ディレイニーは原作からついに30年が経過してしまった。中では、ファンタジイのクロウリーが、意外にSF味があってよい。この他、ジョナサン・レセム『銃ときどき音楽』、R・A・ラファティ『つぎの岩につづく』などが注目作。
●国内作品
1.引き潮のとき 眉村卓(早川書房)
2.オタクと3人の魔女 大原まり子(徳間書店)
3.MOUSE 牧野修(早川書房)
4.ピピネラ 松尾由実(講談社)
5.星界の紋章 森岡宏之(早川書房)
[コメント]
まず、昨年の終わりに完結した『引き潮のとき』である。近年にない大作SFであり、ベスト1。2位大原まり子は、ファンには待望作。『MOUSE』はイギリス人が書いた『ヴァート』より、SFとして納得がいく。幻想色が強いためベスト外としたが、川上弘美はお茶の水女子大SF研出身作家であり、芥川賞『蛇を踏む』は、ファンジン掲載作と思えばそう見えてしまうという不思議な感覚を持つ。同じく、松尾由実の『ジェンダー城の虜』も秀作。『星界の紋章』は、かつての中篇とは全く印象が異なる流暢な処女長編。