97/3/10

コードウェイナー・スミス『第81Q戦争』(早川書房)
本書そのものは雑多なテーマの寄せ集めである。しかし、あらためて読んで見ると文章の緻密さや独特の表現等、スミスらしさを再発見できる。中では「人びとが降った日」人海戦術のスミス流、詩的(直喩的政治表現)な視点、ランボーがSFになってしまう「酔いどれ船」、「達磨大師の横笛」は、スミスとしては意外な気がする繊細なアイデアストーリー、等がベストか。それにしても、人類補完機構のネーミングは浅倉・伊藤のcopyrightのはずなので、ガイナックスは著作権料を払うべきではないかしら。昨今の論議は逆である。

97/3/15

大原まり子『アルカイック・ステイツ』(早川書房)
ヴォクトに献示が奉げられていることからもわかるように『イシャーの武器店』を題材に取った作品(ってのは半分嘘である。遠い未来か過去の店が28世紀の地球に出現するという設定こそ『イシャー』であるが、それ以外大きな共通項はない)。ヴォクト的な破天荒さが最大の相似なのかも。そういう意味では、まさに「センス・オヴ・大原まり子」とも読める(わかりますか?)。まーしかし、当然ながら、物語にまとまりはつかぬ(これこそがヴォクト)。

97/3/31

『SFマガジン97年5月号』(早川書房)
クズ論争糾弾特集を読む。先月の『本の雑誌』にインスパイアされての特集。日経の誤解記事は当然批判の対象とされているが、相手が高橋良平、鏡明となると、やや書きにくそう。日経については、新聞記者が客観的で公平な記事など書けるわけがないので、まあこんなもの。そもそも業界紙の記者が業界情報をほとんど知らないという恐ろしい状況なので、記者のレベルは基本的にシロート以下と考えねばならない。記者発表するときは、あらかじめ新聞原稿を発表者が作っておくのが普通です(わたしも経験があります)。なんたって、記者にモノを調べる時間などない。インプットゼロでアウトプットがどうなるかは想像するまでもないでしょう。塩澤編集長も難しい回答はいけない。イエスかノーかどちらかしか言ってはいけません。まーそれはそれとして、『本の雑誌』に対し、マガジンでは主に論点不明、言っていることとテーマとが食い違っている云々、不真面目さに対する批判が寄せられています。実は、古代よりSFを罵倒する文書はこの2種類、すなわち無知である(主にSF外部)か、ふざけすぎている(主にSF内部)に集約されるといってもいいようです。中には、巽孝之さんのように、森下一仁の『この不思議な地球で』批評の不当性(印象批評にすぎる)まで論じている向きもあって、結局レビュアーのレベルにまで批判が及んでいます。ただし、こうなってくると、この特集の意図もまた意味不明となる恐れがあるでしょう。

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