装幀:横尾忠則

半村良『妖星伝7』(講談社)
 『スターメイカー』半村版という感想は、やっぱり正しいかもしれない。哲学的とまでいえないのは、主人公たちの思索に、現世のしがらみが残されているからか。もっとも、それはステープルドンにもいえることだが。

早川玄・著/筒井康隆・解説『サイバー大魔王の襲撃』(中央公論社)
 文芸的才能の称揚ということが、主張のようである。そのためか、現状のパソコンネットの利用者に対する批判がやたらと多い。今のネットのレベルの低さを話題にすること自体はまあいいとしてもね。
 著者自身の知能レベルがまた、この著作からは判読し難く、概して、何がいいたいのかが、とってもわかり難い内容。

93/6/12
 水鏡子の洋書買い、ムリョ数千冊のペーパーバックから、化石だけを掘り出しているという評判。(これだけの記述ではなんのことかわからないでしょうね)
チャールズ・デ・リント『リトル・カントリー』(東京創元社)
 がっかり。日常ドラマの貧弱さ。世界を支配する魔術師の秘密組織ときたら、ラファティだよね。

14:57 93/06/27
 ネビュラ・ヒューゴー候補作がCD-ROMで売られている。ヒューゴー候補作の全長編、長中編、中編、短編と、ネビュラの長中編以下がすべて入っている。といっても、93年度分だけだが。$230相当の書籍が、なんと$30で!とかなんとか。
 MAC、DOS、Windows など各種版あり。
 LOCUSも年鑑をやめたようだが、CD-ROM化でもするのだろうか? CD-ROM製造機は安いもので、300万(試作するだけなら100万円ぐらい、でも、ファン出版なら十分ではないか)程度まで下がっている。CDの原価は一枚せいぜい数百円。下手に本にするよりやすく作れるのである。
 Windows 化してはや1ヵ月の時点で、ソフトは WORD、EXCEL、VB(Visual Basic)、MIW(Mifes for Windows)と、これではまるでアシモフ、クラーク、ハインラインという個性のなさ。安売りキャンペーンに乗ったとはいえ、こまったことだ。
 ところで、義父が安く手に入れたとかで、マシンが98FAに変わった。CPUパワーからすると、ほぼアクセラレータ付き286並み。ただ、グラフィックは数倍早い(これは98の特長)。環境も若干改善されてはいる。
 どなたか、Cylix486付きPC286VEいりませんか? マシン本体の中古相場は約6〜7万ですが、買ったばかりのアクセラレータが5万円もしたので、ディスプレイ込み7万ではいかがでしょうか。

16:17 93/06/27
 と、思ったら、マシン本体の価格は、3〜4万が正しい。だいぶ下がっていたな。この際ディスプレイ、ラムボード込みで7万円ではいかがでしょうか。われながらせこい。

23:21 93/07/11
 早川清が死んだ
 デル・リイやディヴィッドスンも死んだ

22:54 93/07/16
ティム・パワーズ『石の夢』(早川書房)
 今までで、一番まともな、パワーズ。お話も一貫性がある。
大原まり子『タイム・リーパー』(早川書房)
 これは、果てしなきと同じ結末だね。あそこだけを長編にしたらこんなお話になるのだろう。悪くはない。
SF BIBLIOPHILE(牧眞司)
 によると、石原版総解説のフロッピー版が刊行される(このあと、同文のダイレクトメールも届いた)。フロッピー4枚(書誌データのみ)、10枚(解説込み)ということで意外に少ないが、SFに限れば妥当な分量かもしれない(19363冊=46〜90年)。結構なことであるが、4枚で壱萬弐千円は高いか安いか。筆者は10枚組みを買おうと思うが参万円は下回るまい。まあ、紙で出るより割安か。フォトCD(写真入り)でほしいけど。

0:23 93/07/17
 今日からモニターをマルチシンクに変えた。まだ、アクセラレータは買っていないが、Windows版FDともいえる卓駆を入れて、アプリをウィンドウ上から起動できるように変更。これで、ばっちり今日からウィンドウ一族。あー、こまったことだ。

16:03 93/07/23
 と、思ったが、アクセラレータは極度の品薄。VRAM(ビデオRAM=画面表示に使う。新聞などで書かれるいわゆるメモリはDRAMを指し、これとは違う)が不足しているためという。不況下でメモリの生産が低下しているときに、ウィンドウズ景気が到来したためである。2〜3週間から1ヵ月の納期という。

22:12 93/07/23
ロバート・コーミア『フェイド』(扶桑社)
 を読む。かなりまともなファンタジイではあった。キャロルの例を見ても解るのだが、こういった童話と日常の境目のようなお話は結構むずかしい。本書も大成功とはいえない。

現状のマシンの状況
 PC98FA2+KM151(マルチシンク)+300M(SCSI)+9M(内蔵5M)。マルチシンクは、海外ではナナオの次に評価が高いディスプレイ。15インチは小さいというおたく意見も多いけれど、我が家に30キロもある17インチディスプレイなど置く場所はないわい。
 投資は最小限にしたいが、グラフィック(S3)+CPUアクセラレータ(ODP)+内蔵のみ13M程度の補強は必要。遅さが気になる。Windowsが使えるといわれる(おたく)クラスのマシンに比べてだいたい三倍遅い(すなわち、BXクラスでも同じ)。ほんとうはDOS/Vなんだろうねぇ。マシンが安かったのでぜいたくはいえません。

11:51 93/07/26
 ダイナ☆コンから招待状をもらう。例年はもらわないのだが、今年はなぜか招待された(後述)。

00:00 93/07/29
 首相候補が細川某にきまったとかで、水鏡子説の竹村某は崩れた。
 まあ、しかし、小沢某が暗躍した結果は、たいていろくなことがない、たぶん今度も。

23:06 93/08/04
 アドベン追悼パーティの案内をもらう。主催者で、ザッタでの関係者は、難波弘之さんくらいか。ちょっと行けませんが。

22:11 93/08/06
 今日日本橋の片隅で、よーやっと(比較的)安物のグラフィックアクセラレータ(Power Window 801)を入手。高級品には手が出ない。

22:33 93/08/12
 1024*768(256色)環境で原稿書きに着手。字が小さすぎるような気がするが気のせいだろう(笑)。画面はでかくなった。なんといっても、従来の3倍だ。とーぜん、字は3分の1の大きさ。まー善し悪しだね。とーめんはこのまま書いて見よう。(1行あたり60文字以上が表示できる)。
ロバート・マキャモン『ナイト・ボート』(角川書店)
 重要な人物が後になってから唐突にあらわれたり(カリブ族の族長)、重要と思われるのにあっさり死んだり(元Uボート乗組員)、ほとんど意味のない人物がいたり(博物館の美人学者)かなり雑な出来。紹介が進むにつれ、期待がしぼんでいるとはいえ、マキャモンの才能を疑わせる作品ではある。

ディノ・アライブ
 で身の丈15メートルのティラノザウルスを見る。たしかにそれなりの見物だけど、実演時間壱拾伍分+出店で入場料弐千伍百円(大人一人)は高い。

15:43 93/08/29
ダイナコン
 は陰山が実行委員をしているのだという。子供が生まれるというのに何をやっておるのか。昔の形式に戻して、やりたいとのこと。渡邉兄弟もくる。永瀬唯もくるらしい。(関係ないか)。水鏡子先生、古澤先生、菊池先生は呼びなさい、と推薦。小浜はくるようだ。難点は京フェスの一週間前ということであるが。

石川英輔『大江戸神仙伝』(講談社)
 をなんとなく読む。お話のペースが善し悪しではある。まあ、それがこの作者の持ち味ではある。

今年のファンタジイ大賞
 受賞作を読む。といっても、たった数ページしか載っておらぬ。ちゃんと確かめずに買った方が悪いがねぇ。とはいえ、今年の候補者はこりゃ汚い。小野不由美(『魔性の子』)、恩田陸(『六番目の小夜子』)、南絛竹則(『怪談の悦び』)なんだから。賞にそれだけの権威があるということか。でも、以上の経験者を退けた、大賞受賞者は33歳の新人だった。選考者残らず大絶賛。ほんとかね。

スティーヴン・キング『トミーノッカーズ』(文藝春秋)

トミーノッカーズ、トミーノッカーズ
 ドアをドンドン叩いてる
 みーんな頭がよくなって
 みーんな人ではなくなって
 みーんな歯がぬけちゃうぞ

13:19 93/09/05
エレン・ダトロウ篇『血も心も−新吸血鬼物語−』(新潮社)
 なるほど、ダトロウらしい。単純ではない点はよいが、ただしかし、評価できる面と散漫さとの微妙なバランスで成り立っている。
亜木冬彦『傀儡の糸』(角川書店)
 かなり、バランスの悪いお話。結局、どのような恐怖が書きたかったのかが問題。

21:47 93/09/12
 SF大賞の候補作を選ぶ。まずは、昨年からのリストを見ると(以下刊行順)。

柾悟郎『ヴィーナス・シティ』(早川書房)
野阿梓『月光のイドラ』(筑摩書房)
 この著者の最高作ではないが。
中島らも『ガダラの豚』(実業之日本社)
永瀬唯『疾走のメトロポリス 速度の都市、メディアの都市』(INAX)
 いわゆるSF論ではないのが難。
清水義範『シナプスの入江』(福武書店)
 これもまた、この著者の最高作ではないが。
大原まり子『吸血鬼エフィメラ』(早川書房)
 タイムリーパーの方がSFではある。
谷甲州『終わりなき索敵』(早川書房)
 このところ、SFの注文がまったくこないのだという。

この中から、三編を選ぶことになる。今の状況なら、SFプロパーに取らせたいところだ(守旧派的発想です)。

15:18 93/09/15
 DRAMが値上がり。各社メモリボードにも高騰の波(5パーセントは、少なくともあがった)。いやー、困った。

21:50 93/09/15
 ダイナコンの企画を見て驚愕。これがこのごろの若手ファンの考えることなのだろうか?

0:35 93/09/19 とおもったら、案の定非難轟々で、陰山からおわびの電話がかかって来た。まあ、これでは出られるゲストがいない。

22:37 93/09/26
 ダイナコンのスタッフと電話。企画のプレゼンテータをやることになるが、3時間も司会をやれとおっしゃる。ここ数年、そういうことはやっていないのだが。まあ、いつもとスタイルを変えて、聞き役専門に徹するというのでいいだろう。もっと煮詰めるように依頼。大丈夫かね。
 SFの衰退原因云々パネルは、DAICONでもすでにやられているらしいが、同じような話しにしかならない可能性もある。

23:43 93/09/27
谷甲州『終わりなき索敵』(早川書房)
 意外なほど複雑な構成、時間論の展開、物語にやや不自然さ、大河長編の結構。はたしてSF大賞はとれるか。

22:38 93/09/30
大原まり子『吸血鬼エフィメラ』(早川書房)
 一応推薦したのだけれど、出来が荒い。『タイム・リーパー』の方がよいだろう。
 石原インデクスの完全版がでた。が、半分で弐萬伍千円と予想よりも高い。旧解説目録よりはやすいからまあ、いいか?

22:18 93/10/12
 陰山から電話。企画担当者を交代させた、司会はしなくていいとのこと。参加者がいっぱいだ。250名で企画は40もある。SF大会並みだという。まあ、そうだろう。子供が(今日)うまれた(ようやるわ)女の子だという。困ったことである。
 子供部屋も取れないとかで、しかたがないので、別のホテルを手配してもらう。こんど連れていかないというと、ぶん殴られるのである。
 担当者は、牧、水鏡子、大野万紀と岡本とで何を話させようとしているのかが、もうひとつ決まっていないみたいだ。まあ、適当に話せばいいのだろうけど。

15:42 93/10/23
ティム・パワーズ『アヌビスの門』(早川書房)
 この時期のパワーズを読むとやっぱりごちゃごちゃした印象を残す。訳文からも19世紀は感じられず。筆者としては『石の夢』の方を推す。
バリントン・ベイリー『ロボットの魂』(東京創元社)
 大森訳ということもあり、いつもながら快調に読めたが、やはりテーマの追求という意味では失敗しているのだろう。

14:02 93/11/03
テリー・ビッスン『世界の果てまで何マイル』(早川書房)
 この世界の広がりが、まったく感じられないのは、筆者の想像力が枯渇したせいか。しかし、東理夫の解説を読んだほうが、まだ感じられるというのも何だね。

筒井康隆『パプリカ』(中央公論社)
 『電脳筒井線』、『朝のガスパール』の姉妹編。筒井流にサイバースペースを描いてみたものだが、きわめてノーマルなSFになっている。なんとなくドリームマシン的な結末。

さて、DAINACONで何があったか、
 というと観客10人にたいしてパネル、まあこんなもの。
 司会の加澤君は、サイバーパンクにこだわる。 
 昔もそういうことはあった、というのはウィリアムスンだそうだが、ニュー・ウェーヴの時にたしか、筆者も同じことを言われたおぼえがある。あれは、確かディッシュの「リスの檻」についてで、過去のシュールリアリズムと何が違うのか、何も新しくないといった指摘だった。当時は、どーしてそんな冷めた見方をするのかと憤ったものだが、冷静なってみればまさにそのとおりなのである。
 堀晃、菅浩江、大森、牧、大野、水鏡子などがいる。会場貸し切り250名参加。宿泊部屋まで占拠されたので、別のホテルに帰るため早々に退散。
 で、せっかくつくったけれど、ふれることもできなかったグラフを一つ(略:内容はSF出版点数が減ってはおらず、むしろ増えているというもの)。
 この数値は、大森先生も指摘するように、我々の感覚からはまったくかけ離れた数値におもえる。数値だけで見ると、アメリカの出版点数すら陵駕しているのである。いうまでもなく、周辺ファンタジイ作品の肥大化が原因である(この点はアメリカも同様)。しかし、同じ周辺作が、一〇年前なら確実にSFと分類されていたことを考えれば、SFコアの出版数が一定不変だったともいえない。やはり数量比例で本は増えているのである。それを買っている読者も増えている。で、何が増えていないかというと、SFの専門的読者が増えていない。これは、映像メディア系分野の増大が、多くのおたくを吸収したことが主因ではないか。YAの多くは、SF関連というよりゲーム派生のものといえる。これは、グラフとゲームソフト販売点数を重ねれば、実証できるのかもしれない。

22:36 93/11/07
京都SFフェスティバル93
 いつもの京フェスとはちょっと違う。終身実行委員長が引退し、若手がいいかげんさを引き継いでいる。でも、そのぶん面白い。
 「若手レビュア(30過ぎ3名+40過ぎ1名)による日本SFの現状」
 は、状況論と感情論とが混交する展開。
 「SF教育を考える」
 昔堅気の非マニアSF啓蒙者(これは京フェスにくるような連中からは敬遠される立場にある先生)対、マニアのなれの果てとおもえる冷笑的(にしか見えない)先生。
まあ、しかし京フェスには異質のパネルではあった。
 「ルディー・ラッカー」
 については誰かが書くだろう。アレフ2より大きくてオメガより小さくて、すべては1つで、えーと、菊池、志村両先生や大森先生の話しはためになります。
 喜多哲士がようやく見を固められるようになったということで、まずはめでたい。
 菊池誠(大阪大学助教授)は、最近競馬をはじめ、競馬新聞などをかってくる毎日だそうである。確率は7割5分なのだそうである。

梅原克文『二重螺旋の悪魔』(朝日ソノラマ)
 はやっぱりひどいらしい。古本とはいえ買って損した。
グレゴリイ・フィーリイ『酸素男爵』(早川書房)
 疲れたわりには、たいした話じゃないな。ちょっと小説以前という荒さが目立つ。

93/11/10
 七五三、平日だというのに春日大社は混んでいる。でも、休日にいくと番号札でしか呼んでもらえないというから、まだましか。

23:07 93/11/14
大原まり子『恐怖のカタチ』(朝日ソノラマ)
 いや、意外にもなかなかの恐怖ぶり。これは、角川あたりのラインアップでも十分一級品で通るだろう。とくに「お守り」の結末がすさまじい(と思う)。

22:55 93/11/16
 SF大賞は柾悟郎。まあ、やはりだろう。でも谷甲州に取らせたかったね。

11:42 93/11/20
佐藤亜紀『鏡の影』(新潮社)
 ケプラーの話かとおもったが、そうではなかった。このお話にモデルはあるのだろうか。相変わらず、隙なしの構成。終盤盛り上げに欠けるが、これも作者の計算だろう。

22:26 93/12/04
 そーいえば、MAC(クアドラ610)は、今度でる新型98と比べると、おおよそ 9821Be 相当となる。
 68040 は、まあいろんな見方はあるが、だいたい 486SX/DX 相当であり、同一クロックの98最下位機種と同等性能と見るのが妥当であろう。価格(定価)は、CDやRAMを足して、だいたい同じくらいか(参拾伍万)。高い国民機とようやく同じ水準ということで、MACの暴利がわかるが、それでも利益が大幅減(アメリカ本社)ということは、まだまだ日本価格が高いということである。シェアアップの一方、扱い店が減っているという、奇妙な話しもある(要するに、在庫がはける前に安い新型がでるから、販売店が損する)。買う方も買う方で、三ヶ月に一度、価値が暴落するMACのどこがいいのやら。CDROMも遠からずWINが主流になる。で、何がいいたいのかというと、これは古澤先生や口車に乗った大森先生に対するいやがらせです。
 ということで、
 よーやく、キュービー・マクダウエル(創元表記)等を読みはじめる(関係ないか)。
 『アースライズ』、『エニグマ』、『トライアッド』、『ジャパノイド宣言』などなど。

22:31 93/12/06
 大野万紀先生は 9821Bp(486DX2/66Mhz)に買いかえるということだ(このマシンは節操もなく、DOS/Vのメモリがそのまま使える)。2次キャッシュも入れてギンギンだそうだ。岡本家でも、ODP(486DX/33Mhz 相当)を入れて(この原稿を書いている段階ではまだない)メモリを内臓11メガまで増やした。FAでできることはかぎられるので、とりあえず、これで98の増強は打ち止めとしたい。

22:47 93/12/08
 読書人から、レビュー依頼を受ける(来年1月から)。水鏡子先生に御推挙いただいたもの。三村美衣先生は断ったのだろうか。読書人ではもうからん、などと不遜なことをいえる立場ではない。
 ということで、2年ぶりのレビュアー復帰を報告しておしまい。

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