94/11/06

 読書人は、結局、ベア『天空の殺戮』(主題が一貫せず)、半村良『虚空王の遺産』(観念的にすぎる)、トンプソン『ヴァーチャル・ガール』(きわめて原始的な設定と展開のお話)にするが、どれもいま一つの出来。

筒井康隆編『パスカルへの道』(中央公論)を読む。一作二〇枚とも思えぬ内容があって密度は確かに高い。天才的ひらめきというより、頭で書いたというタイプが多い。これを評価するのはけっこう大変であろう。

 新居の耐荷重は平方180キロしかなく(これが当たり前か)、本は分散収納となる。ちなみに、一般的なスチール本箱の一段に文庫を100冊詰めると約25キロ、六段で150キロであるが、当家の場合はむりやり九段+上置きにしているので250キロはあろう。マンションでも下手なところではあぶない。特にアパートで本に埋もれている、あなたは気を付けること。引っ越しも大変じゃ。

94/11/07

 引っ越しセンターとの熾烈な戦いが始まる。サカイ引っ越しセンターからは、蔵書家専門営業(本箱五つ以上)というのが来て、4トントラックもう一台余分に必要です、運搬は平日、荷作りは自分でやらないと高くなりますだって。かなりの悪条件である。帰りに、
「僕が来てよかった。他の営業だと大変なことになっていた」
 とうそぶいて帰ったという。まーいいけどね。

 とゆーことで、シロートが見積もったクロネコヤマトに決定。箱詰めまでやってくれて梱包ケースはサービス。お任せパックで値段も安い。見積もりは絶対変えませんとの御墨付き。まーいいけどね。

 引っ越し日を決めると、なぜか仏滅。

 実は(妻の指摘によると)岡本家の引っ越しは、これまで三回すべて仏滅であったのだという。意図して選んだわけではない、といっても、本欄の読者には納得していただけないでしょう(笑)。

94/11/13

 喜多(32)真理(31)結婚式に臨む。久方ぶりにSFファン向けスピーチをする。まともじゃんと、そんなことないぜ、という二説に分かれる。東京人の牧眞司からはまともじゃないといわれる。かつて、牧家の結婚式での筆者のスピーチが(牧家から)さんざんの不評だったそうで、まーそいうこともあろう。関西親族には結構好評なのですが(笑)。一方、三村美衣からは、まともすぎるという批判を受ける。かつての結婚式での新婦側の親類縁者を見た限りでは、まーそういうこともあろう。

 ヤマトの見積もりの話をすると、みんなヤマトに同情する。詐欺師だと罵られる。本を捨てるより、家を広げる方が簡単だ、ということでみんな納得する。

 翌日のセミナー。委員長の森太郎(23)は、さすが岸場(29、就職おめでとう)の後を継ぐだけのことはある。どーも年齢が気になる。みんなおっさんおばはんになった。これは10年前の写真とならべて見れば一目瞭然。徹夜明けの体力でも明らかか。ただ、雰囲気は何も変わっちゃいない。

 大学SF研座談会は、水鏡子(41)牧眞司(35)渡邉英樹(31)大森望(33)。巽(39)、若島(42)対談の、(若島正が)KSFAの例会にたどり着けなかった話は、運命の奇怪さを物語る。もしたどり着けていれば、当時(七〇年代)はSF全集やらNOVAEなどで全盛期でもあったし、大森望も可愛かったし大原まり子も若かったしで、それなりの展開があったかもしれない。大原(36)、菅(31)、大森鼎談は、小野不由美がなまいきだから殴ってやろう、とかいう話だった(と思う)。

 巽見解によると、レビュウは続けて五年が限度、それ以上続けてもトレンドが読めなくなるのだという。そーすると、アドベンを十三年続けたわたしゃどーなる。ただ、昨今のSFの半分強はヤング・アダルトであって、それがフォローできていないのだから、指摘は正しいともいえる。見えなくなったのは、十年目くらいからだった。

 最後になりましたが、菅浩江さま、当日ごあいさつもできず、愛想なしでしたが、御活躍を期待しております。京都人のいやらしさ(愚妻をみて、よく承知しております)でお気張りやす。古田尚子(二七)さま、また御挨拶もできませんでしたが、脱毛症というのは本当ですか(書いてはいけなかったのかしら)。職業柄、心労を御察し致します。大原まり子さま、授賞おめでとうございます。お話はできませんでしたが、と書いても読者じゃないか。

94/11/19

 京大生でSF研にも入らずファンダムに出没するHKが結婚したという。まー、そいうこともあろう。

 マキャフリイ&ラッキー『旅立つ船』(東京創元社)設定だけを生かしたお話で、そういう点ではまあまあ読める。ジョー・クリフォード・ファウスト『やけっぱち大作戦』(早川書房)は、先の『コーポレート・ウォーズ』に比べれば大変な進歩だと思う。ライトノベルとしては、まあまあ。

 ということで、引っ越し前のドタバタを背景にして、これまで。

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