97/7/5

小松左京他『SFへの遺言』(光文社)
 これは実は遺言ではなく、次世代への申し送りである。しかし、残念なことに、本書構成ではその7割強が過去への言及である。それも大半は固有名詞の連続で、岡本家記録と同程度に分かりにくい。注釈は豊富だが、小松発言の背景を教えてくれるものでもないからである(そんなスペースもあるまい)。読者のうち、小松左京を知らない人にとっては興味も沸かないのではないか。小松さんはきっとこの100倍は話をしたはずなので、編者の苦労は分かるけれど、小松著作集を読んで得られる内容を越えるものではない。




二ーヴン、パーネル&フリン『天使墜落』(東京創元社)

 SFファンが活躍するお話で、日本でも10年以上前まではさかんだったファンダムの状況が描かれています。日本でファンダムが解体して久しいのですが、アメリカではまだ健在か、と思いきやこれはパーネルらの活躍していた過去のことのような表現もあって、SFファンダム堅気が消滅しつつあるのは同様のようです。科学大好き、ロケット大好きがファンのトレードマークだったのは、もはや過去のこと。今でも嫌いとまで言う人は少ないかもしれません、でもまーどーでもいいという雰囲気ではないでしょうかね。てんでにばらばら、でも集中すると緻密にしてオタク、センス・オヴ・ワンダーを口にし、SFはウェイ・オヴ・ライフ、懐かしい言葉ながら、そういう人はまだいるのでしょうか。昔『インフェルノ』を読んだ頃は、これほどの違和感はなかったような気がします。今ではアニメにゲーム、やおいにPC、ファンタジイにホラーと埋もれていくばかり、なんて書いていると梅原克文先生に殴られるかもしれませんな。オレタチハ、ホロビツツアルノカモシレナイ……。
陰山琢磨『大反撃一式砲戦車』(飛天出版)
本欄でシミュレーションノベルを取り上げることは、めったにない。そのへんは喜多哲士にまかせればよいし、SFの範疇からも離れるためである。専門外ながら、作者がめずらしいので触れる。戦車オタクらしく、主人公は戦車。日本に80ミリ級の砲を設んだ戦車があったなら、という設定。この辺、谷甲州でも既に出てきたシチュエーションなので、ちょっと残念。歴史の転換点などの説明もやや不足か。まあしかし、ありうべき戦車の姿で止めた点がよいだろう。なお、本欄でときどきKT君と書いているのが作者の陰山琢磨のこと。もう公人なので隠すこともあるまい。飛天ノベルズは橋本純なども書いているシリーズ。


97/7/11

ところで、今日小谷真理さんからエヴァゲリ本
『聖母エヴァンゲリオン』(マガジンハウス)をもらう。筆者はビデオも適当にしか見たことがないので、正当に語る資格はないものの、うーむ。まあ体裁は世間の便乗本と同じであるが、内容はなかなかの換骨奪胎。小谷真理本はSF者には分かりやすいのでお薦めである。


97/7/27

貴志祐介『黒い家』(角川書店)
 昨年も『十三番目の人格』で、小説的完成度の高さを知らしめた、同著者のホラー大賞受賞作。その印象は本書でも同様。超自然からサイコパスへと、視点を変えた(落とした)点が著者の資質に合ったのだろう。まーしかしペットの首を切るというのは、例の事件でも、またキングの『ダーク・ハーフ』でも描かれるように、ペットが近親者の象徴であり、身近であるが故に無気味さが増す。
という観点では、
中井拓志『レフトハンド』(同)は、ホラーなのかコメディなのか、SFなのか、とにかく混乱した印象を残す。主人公達が年齢のわりに無茶苦茶であるせいかもしれない。とはいえ、破天荒さに魅力がないわけではなく、当然そこが評価されたのだろうが。
クラーク『3001年終局への旅』(早川書房)は、こんな終わりかたしていいのかしら、という素朴な印象です。うーむ。



 よーやくPCの更新をしました(とゆーような書き出しの記事の大半は、単なるマシン自慢です。これも同様、ご容赦くださいませ)。WinNT、95デュアルブートでの立ち上げと既存システムとのネットワーク(10baseT)化を図ったためトラブル続出。その上、週末がつぶれる仕事の連続で、皆様にはご迷惑をおかけしました。NTはシステム動作安定化のため(今のところまだその恩恵はないですが)。ネットワークは既存ファイルとプリンタを共有するため。今時、フロッピのコピーではデータの移植もままなりません。
 システムは、ASUS-TX97+SDRAM64MとClassicPentium200Mを組み合わせた新旧混在のショップブランドで、価格は16万円也。最新のPentiumUならばこれより10万は高くなります。この差はすべてCPUコストの差。インテルのCPUの場合、利益率60%という驚異的売価なので、これぐらいの差は出ます。ちなみにPC本体の利益は通常10%以下、下手すると赤字ですから、まーインテルに貢いでいるようなもんですな。
 今後はこのシステムで、homepageベース(DTPベースは考えていません)の画像処理能力を増強する予定です。

目次へ戻る

次月を読む