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甲州vs獏、山を語る(中ホール 8月23日13:30開始)
 出演者:谷甲州、夢枕獏


スライドで山の写真を写しながら、むしろの上で酒盛り

  スライド映写による山をバックに、ザックを背負った夢枕獏・谷甲州両氏がそれぞれ舞台の両協から登場。中央に敷かれたむしろの上に座ると、ザックからワンカップを取り出す、という演出によって企画は始まった。
「飲んでもいいという話なんで」との獏さんの言葉で二人は乾杯。
 ほろ酔い気分で話は高校時代や同人誌活動を始めた頃の思い出話となる。獏さんは、丹沢に友人と登った経験を披露。対して甲州さん、
「青年海外協カ隊でネパールに行った頃、カシミールで死にかけた」と遭難しかけた話を紹介。
 それがきっかけとなり、誰が死んだとか、あの山で遭難した、とか死人の話が続き、次に獏さんがマナスルに鶴を見に行った話を紹介したことから鶴談議となる。そのころ、甲州さんはワンカップを飲んでしまい(実は、お二人は打ち合わせと称して、楽屋で既に1本飲んでいた)、酒を探し始める。そこに実行委員長より差し人れ。
「ようやく宴会になってきたな」(甲州)、
「つまみが欲しいですね」(獏)。
 会場は湧きに湧いた。「対談」というより「雑談」に近い内容だったが、獏さんの流暢な話しぶりと、甲州さんのとつとつとした話し方が対照的な故に、妙な味がかもし出され、ほのぼのとした対談だった。

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電脳都市とSF(小ホール 8月23日13:50開始)
 出演者:坂村健

 SFは好きだが、熱狂的ではない、学会にはファンがいないので講演で声援を受けると戸惑いますと、坂村健さんは始める。
 TRONでコンピュータの新しい標準を作った提唱者、そして『電脳都市』でSF界でも話題を呼び、今回SF大会での講演をお願いすることになった。話題は、最新のコンピュータ事情から、最新SFにいたる幅広い内容。
 まずコンピュータの歴史、そして人工知能は、人間を作るものではなく、何年も知識を蓄えて意味があるという話から、SF作品に話は移る。科学的に正しいから、小説が面白いとは限らない、クライトンの小説のように、ほとんど正しくても1行間違っていると誤解されてしまうことがある。面白さという意味では、『ニューロマンサー』は、どこが新しいか分からない。電脳空間のイメージも『コイルズ』(ゼラズ二ー)や、「袋小路」(小松左京)の方が優れている。テクノロジーによって人間が変わっていくというのなら、『へびつかい座ホットライン』 (ヴァーリイ)の方がずっと良い、とサイバーパンクを批判。坂村さんはどうやら70年代作家がお好きなようだ。
 講演の最後では、再びコンピュータへと話は戻り、道具としてのコンピュータに知能はいらない。並列計算機は有効だが、不向きな論理深度のない問題がある、とした上で、アナログ信号を用いたあいまい論理のコンピュータの可能性が論じられ、講演は終了した。立見続出の人気企画だった。

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SF雑誌編集者パネル(レセプション 8月23日12:40開始)
 出演者:高橋良平(司会)、今岡清、関智、志賀隆生

 現代SFを支えるSF雑誌、その編集者に話を聞くのが当企画。出席者は、今岡清SFマガジン編集長、関智SFアドベンチャー編集部員、志賀隆生SFの本編集長、そして司会はおなじみ高橋良平さん。―杯きげんの今岡さんは、舌もなめらかに、ステージはまるでワンマンショー。
「SF誌だって商業出版、儲からねばならん」
「いつまでも同人誌で小説書いてないで、プロを目指せ」
といつになく厳しい言葉。今岡、関両氏に共通した言葉、とにかくSFは売りにくい市場であるということ。プ口になるには“やる気”が重要ということだった。

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SFミステリの歴史(集会室 8月23日16:10開始)
 出演者:風見潤、辻真先

 辻真先さんは、長野にある仕事場から、わざわざこの企画のために出てきていただいた。風見潤さんとのコンビで、今回は歴史的観点からのSFミステリを、という対談である。小学生のころ海野十三を読んだが、それがSFミステリにあたるかどうかと始まり、主に両氏の初期SF体験から、最後にSFとミステリの親和性について、話題が移る。SFの世界にミステリを持ち込む、両者等分、ミステリの世界にSFを持ち込むと3種類が考えられる。しかし、矛盾なく持ち込めるのは最初のケースだけではないかという結論。
 企画後、辻さんは、(鉄道ミステリなどに)取材になるからと、阪急の駅まで徒歩で戻っていかれた。

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ノスタルジック・フューチャー(練習室 8月23日13:50開始)
 出演者:永瀬唯

 舌鋒鋭い論調で知られる永瀬唯さんのスライドを交えた講演。飛行機・自動車・自転車の進歩から、我々人間が科学の発達によって否応なく変化させられていった過去を語り、未来に思いを巡らした。場内から鋭い質問が飛び出すなど、時間を忘れた白熱した語りに氏の変わらない情熱を感じとれる内容だった。

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SF翻訳の歴史とヴィジョン(中ホール 8月24日11:40開始)
 出演者:伊藤典夫(司会)、鎌田三平、黒丸尚、矢野徹

 伊藤典夫さんを司会に、翻訳SFを語って頂いた。まず司会の伊藤氏が、1950年代頃の日本SF創世期について矢野氏に伺うという形でパネルは始まった。これは「星雲」が創刊された由来や、それに続く「早川SFシリーズ」などへと至る事情経過についてであった。途中、伊藤さんが「元々社シリーズ」が発刊された頃に初めてSFを読んだ、と御自身の体験を披露。鎌田・黒丸両氏もSFに入られた頃や、あるいは初期のSF翻訳には悪いものが多かったと言う事から、翻訳者の名前を意識した時期について語られた。SF創世期からSFマガジン創刊後にSFが定着するまで、SFはあたらないとされていたが、これを覆した福島 正実・都筑道夫は「いいSF・いい翻訳」を意識していたからである。
 次に「歴史」から「ヴィジョン」にテーマを移し、伊藤さんがここ1〜2年、翻訳するのに難しい状況になったが、翻訳家の立場から見てSFが面白くなるのか、と問題提起。このあと、今後のSF界の展望や、訳した作品について語って頂き、終了となった。翻訳から始まった日本SFの流れを、翻訳だけをとらえて語る試みは、多くの参加者に興味深いものであったと思える。

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SFを翻訳するということは(小ホール 8月24日10:00開始)
 出演者:新藤克己(司会)、酒井昭伸、風見潤、黒丸尚、山田順子

 司会は東京創元社の新藤克己さん。
 話はまず、物事を調べる手間について始まり、次に、各氏は固有名詞にも苦しむと語る。同じ綴りでもドイツ読みフランス読み英語読みと異なるので、人名をカタカナ表記できないのである。最後に、翻訳家になるにはどうすればよいか、ということになると、やはり好きな分野、作品のはっきりした人でなければ駄目、と風見さん。「5000枚は書かないと翻訳家にはなれない」という矢野徹さんの言葉を引用し、「どんな作品を訳したい?」と聞かれて「ない」と答えるようではダメだ、と語る。それぞれの苦労やSFに対する思い入れなどを十分楽しめたパネルであった。

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冒険SFを語る(小ホール 8月24日15:25開始)
 出演者:鎌田三平、山田順子、佐藤道明

 パネラ―として冒険小説協会の各氏をお迎えして、冒険SFについて語って頂いた。当初予定していた内藤陳さんが欠席との事で、協会の会員を中心にして、という企画主旨を変更。パネラーの各氏には冒険SFのみならず冒険小説という広い範囲で話を伺うこととなった。

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SFマガジン創作講座(レセプション 8月24日13:20開始)
 出演者:今岡清

 EZOCON2・GATACONを経て、SFマガジン創作講座は3回目を迎えた。プログレス2号で募集した原稿は、最終的に十数編余りの応募があり、例年通りその応募原稿をもとに今岡編集長の話は進められた。まず、粗筋はコンテストなどでは重要な要素になるのでしっかり書いて欲しい、と応募原稿を例にとって「粗筋の書き方」になる。粗筋は小説のバランスが的確に伝わるように、クールに書くことが必要であり、
 「はたして主人公の運命やいかに」というのは駄目とのこと。
 おもわず会場から失笑が漏れると、
 「そういう人、いっぱいいるんですよ」と今岡編集長。
 そこから文章の流れについての話となり、凝った表現をあまり使うと、全体がぎくしゃくする、と実例として応募作を朗読・添削となる。最後にプロットの立て方となるが、これには方法論というのは存在せず、しいて言うなら状況設定をきっちりと作ることだろう、とのことだった。開始前に数十人の参加者が並んでいたことから想像できるように、会場は熱気につつまれ、話に耳をかたむけながら急いでメモしている姿が多かった。

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科学もドキ!ライブ(会議室 8月24日11:40開始)
 出演者:細川英一(聞き手)、志水一夫

 志水一夫さんに、その広汎な知識と氏独特の語り口によって疑似科学に関するお話を伺う、というのが企画趣旨であったが、当日は聞き手としてSFイズムの細川さんが参加。「ロ裂け女の噂のルーツは?」「ヒバゴンのその後は?」「情報公開制度に応じて公開されたUFOの情報内容は?」という話で盛り上がる。
 最後に「SFイズムが続く限り、『科学もドキ!』を書きます」とのことで、盛況のうちに幕となった。
(注:「SFイズム」は1985年の16号までで中断していた。結局17号以降は出ていない)

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本章はDAICON5アフターレポートからの抜粋・修正及び追加写真により構成されている。

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