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草上仁『天空を駆ける者』(早川書房)
 後半、単純なおっかけすれちがいドラマに終始してしまったのが難点。

とある日
 ホソキン(細田均)さんのハヤカワ文庫SFデータベース(93年1月当時)があった。これは、京フェスで配られていた小浜リストと同等のもの。1000冊について絶版、生存を明記してあり、ちょっとした索引には便利。ただし、原題までは入っていません。他に、ポケミスデータベースもある。


ハヤカワ文庫SF出版点数ベスト22(数字は出版点数)

38 エドガー・ライス・バロウズ
32 マール+ダールトン
25 ロバート・A.ハインライン
25 エドモンド・ハミルトン
23 A.バートラム・チャンドラー
20 マイクル・ムアコック
19 アイザック・アシモフ
19 アーサー・C.クラーク
17 フランク・ハーバート
17 ジェイムズ・ブリッシュ
15 ロジャー・ゼラズニイ
15 フィリップ・ホセ・ファーマー
14 アン・マキャフリイ
13 グレゴリイ・ベンフォード
12 フィリップ・K.ディック
11 ラリイ・ニーヴン
11 マール+シェール
11 スタニスワフ・レム
10 ロバート・シルヴァーバーグ
10 ドナルド・モフィット
10 キース・ローマー
10 ウィリアム・フォルツ



生き残り作家ベスト14(*は全冊生還)

32 ダールトン+マール *
25 ロバート・A.ハインライン *
20 マイクル・ムアコック *
19 アイザック・アシモフ *
19 アーサー・C.クラーク *
14 ジェイムズ・ブリッシュ(スタートレックのみ)
14 アン・マキャフリイ *
13 グレゴリイ・ベンフォード *
12 フィリップ・K.ディック *
11 ラリイ・ニーヴン *
11 マール+シェール *
11 フランク・ハーバート
10 ドナルド・モフィット *
10 ウィリアム・フォルツ *

絶版作家ベスト13(*は全滅)

38 エドガー・ライス・バロウズ *
24 エドモンド・ハミルトン(『虚空の遺産』のみ生存)
23 A.バートラム・チャンドラー *
14 フィリップ・ホセ・ファーマー(『恋人たち』のみ生存)
12 ロジャー・ゼラズニイ
10 ロバート・シルヴァーバーグ *
10 キース・ローマー *
9 平井和正 *
9 リン・カーター *
8 アンドレ・ノートン *
7 ロバート・E.ハワード *
7 ポール・アンダースン
7 ジャック・ヴァンス *

ところで、
 PCVAN50万会員の統計があって、男女比96対4(!)、年齢構成20、30、40代がそれぞれ22%、40%、24%、会社員+公務員で68%(自由業3%)、首都圏会員41%とある。なんとも偏った会員構成だが、NIFTYあたりも大差はないはず。SF界より(ある意味で)ひどい世界があるのである。

そういえば、
 年末から今年にかけて、ネットや雑誌の環境おたく界では、CPU換装(286・386・486)の話題が沸騰した。どうもこれは日本だけの現象のようである。アメリカでは、CPUを交換するより、パソコンを買い直したほうが安いからだろう。世界標準では、激安98でも、まだ4割くらい高い。

アウトラインフォントで書いている
 とーぜん一太郎ではなくてWORD、ジャストウィンドウではなくてWINDOWSである。

ということで、
 マシンも486DX66(メモリ16メガ+2次キャッシュ256キロ)+VLローカルバスアクセラレータ・ウェイテック9000+VLキャッシュIDE500メガ+マルチメディア・エクステンション(倍速CDROM+サウンドブラスター)+ハイレゾCRTナナオのT560ijときて、98MATE最高級機種の性能より軽〜く数倍という世界標準スペックに買い替えた。ぎゃはははははは……と、いうのはみんな嘘で。
 そんな金あるわけない。CPUを換装しただけ。世にゆーところの貧者の486≠ニいうやつですな。まあしかし、マニアのUGT製2次キャッシュ内蔵型(自慢できるのは、せいぜいそれぐらい)で、たしかに四倍程度早くなったような気はするぜ(嘘)。なんとかWINDOWSががまんできる限界だろう。原稿執筆マシンとしての遅さは、たこい君のUvxくらいか(PHOTO-CDを見るときと、ゲンコ書きのマックの遅さには死ぬ。あ、何もけちをつけたわけではないですよ)少なくとも、WXUのレスポンスの重さはなくなったわい。この原稿もVzで書いてます(笑)。DOSだとびんびんだぜ。げははははははは、げほげほ。
 ま、ほんとは原稿の半分はWORDで書いた。なれればなんとか。プリンタが一部低解像度でしか使えず、ゴシックのアウトラインフォントが綺麗に出ない。レイアウトももうひとつ。Ver.5待ちである。こんな5年前の改造機でもMSKK3.1(Windows3.1 Epson版)は動く(という程度。しかもソフトのパッチあて改造がいるけど)。ちなみに、前者のマシンをそろえるとなると、今でもまだ約80万(やすい!、車に比べれば)は必要です。

さて、2月末から5月末まで

ハワード・ランゴールド『ヴァーチャル・リアリティ』(ソフトバンク)
 これはノンフィクション。

チャールズ・プラット『バーチャライズド・マン』(早川書房)、
ジョン・スラデック『遊星からの昆虫軍X』(早川書房)

 の中では、『バーチャライズド・マン』が一番正確である。さすがにパソコン入門書で小遣い稼ぎをしているだけあって、コンピュータの限界をわきまえており、よくできた話。ヴィンジ『マイクロチップの魔術師』以来の時事ネタ注目作。鮮度的に、あと3年くらいはもつかな。お話の点でもきわめて堅実だ。それにくらべると、スラデックは(いろんな意味で)かなり荒い。セミナーでは、坂井君がVRとネットとを対比的に比較していたが、現状この2つを結び付けているのはアミューズメント分野だけである。画像を大量電送できるインフラがないからである。

そういう意味で、柾悟郎『ヴィーナス・シティ』(早川書房)
 はコメディというニュアンスで結構面白くはあった。現実の皮肉である以上、新しいアイデアが盛りこまれないのはやむをえない。これからいくらでも書かれそうに見えるけど、風俗小説との違いをどこで出すかが問題。(もはやそれぐらい、生臭い世界なのよね)。

マイクル・スワンウィック『大潮の道』(早川書房)
 ゴーメンガストを思わせる奇怪な人物配置なんかもあって、雰囲気のある作品ですね。

筒井康隆『最後の伝令』(新潮社)
 全編にあふれる死の匂い。あるいは予感。筒井さんもまもなく六拾歳になる。
筒井康隆『本の森の狩人』(岩波書店)
 岩波新書で書かれる筒井講座は、やはり相当戦略的でありますね。

ジョン・ケッセル『ミレニアム・ヘッドライン』(早川書房)
 まずまずの出来ではないか。たしかに、良平先生のいうように原理主義の脅威は実在感に乏しいが、天理のような宗教都市に近いと、まったく判らないでもないのである。

梶尾真治『ドグマ・マ=グロ』(朝日ソノラマ)
 『サラマンダー殲滅』よりはまとまりがある。いつもの、梶尾流コメディの味は出ている。そのぶん驚く部分もない。

R・A・ラファティ『どろぼう熊の惑星』(早川書房)、『トマス・モアの大冒険』(青心社)
 高橋先生の言い分も分らないことはないけれど(こればっかり)、井上央の解説がそれほど支離滅裂とも思えない。不思議にも『どろぼう熊―』を読めば読むほど難解さが増し、あとの『トマス・モア―』は読みやすくなるという逆転現象が生じた。

椎名誠『地下生活者』(集英社)
 2中編の前1つだけが、アド・バード世界。無理して読む本でもないだろう。

谷甲州『第二次オホーツク海戦』(角川書店)
 いやー地味だね。でも迫真だ。

五代ゆう『はじまりの骨の物語』(富士見書房)
 奈良の女子大生作。書くというレベルではまずまず。しかし、主人公の心理描写に難。ほんの数行書き加えるだけですむと思うんだけど、編集部は要求しなかったのだろうか。あるいは、そのような必要性がなかったのだろうか。

アラン・ライトマン『アインシュタインの夢』(早川書房)
 時間というのは便利なテーマで、いつまでたっても古びない。渡部慧のように、戦前に書かれた論文が今でも有効な世界である。哲学の時間・文学的時間・生物時間・物理的時間と何でもあり。この本も、物理的といいながら、哲学や宗教でポピュラーな時間論をはさみ、おなじ曖昧さをはらんでいる。正解がないから楽ともいえる。

ピーター・ストラウブ『ココ』(角川書店)
 メタ・フィクション風サスペンスで、ホラーではない。ホラー文庫に入ったのは不幸。しかし、角川のいうホラーとは、普通小説+αで、基本的にこの線のようである。

荒俣宏『ワタシnoイエ』(角川書店)
 あいかわらず、荒俣さんは小説がうまくならない。不思議なもんだが、才能の方向が違うのだろう。

菅浩江『雨の檻』(早川書房)
 出るたびに、これこそSFといわれる菅浩江の決定版、という扱い。この作者の場合、すべての作品が、既存のSFの再話である点こそ、最大の特徴ではないかと思う。しかし、語られる視点は作者自身であり、テーマも処女作以来一貫している。

黒丸尚さんが亡くなる(3月15日、ネット情報による)
 41才。うーむ。あまり親しくお話ししたわけではなく、大森望のようなレクイエムが書ける立場ではないけど、年齢的には寺さんが亡くなったのと同じくらいか。やはり、うーむ。

山高昭さんが亡くなる(4月18日)
 大会関係ではお世話になった。SF大会ゴロ(あなたのことです)には敬遠される人だったが、若い参加者とまじめにSFを話そうとしてくれたのだから立派だった。

大野万紀家の長男がしんちゃんのまねをする
 というが、うちでは娘がまねをする。ぞーさんとかをするは、母親をようかいげじげじおばばと呼ぶは、いやーこまったね。近所ではテレビ禁止令が続発、幼児教育にはよくないのである。

SFセミナー(5月3日)
 水鏡子の老残を見る。大森望も引退してNOVAMの家督を譲るという。人間歳はとりたくないもんだ。牧眞司がまた太っている、とかいう話題はもうやめよう。
 ところで、DAICONは申し込まないうちに、定員オーバーで参加できなくなってしまった。キャンセル待ちもないらしい。インネンをつけてゲストにしてもらうというのもいやだしなあ。このようなゲストは、主催者から蛇蠍のごとく嫌われるのである。ロビーでうだまいてないで、最低一つは企画に協力するように。
 まあ、何はともあれ赤字大会でないだけましだよね。主催者幹部とはまったく面識がないのだけれど、他人事とはおもえない。
 ということで、今年の夏の大会では皆様とはお会いできません、失礼いたします。

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