96/8/10
アンダースン&ビースン『星海への跳躍』(早川書房)
処女作であるがゆえに後期作のアメリカ的発想が薄く、SFグローバルな初々しさがある。とはいえ、主人公が一体だれだかわからないという、処女作であるがゆえの欠点もあるのはやむを得ぬか。
96/8/13
大阪府立体育館でボリショイサーカスを見る。サーカスなどは百年ぶり。ボリショイの特徴は、白猫(あまり芸はしない)とシベリア犬と熊の棒+縄跳びと馬である。2階席で遠いが、まあ8割引の団体券なのでやむを得ない。
今年のSF大会の怪文書(泣き言)を受け取る。内容は、スタッフがやめていく、みんなノイローゼだ、大変だ大変だどうしようどうしよう、というもの。まー大会というのはこういうものなのですが、一体これを書いてどーなるというのだね。きみ。
嫁さんの旧友夫妻がくる。コミケに出店するような人たちで、奥さんは中島梓そっくり。例によって?エヴァゲリ本をもらう。
96/8/14
半村良『人間狩り』(二〇三〇年東北自治区)(祥伝社)
を今頃読む。東北に誕生したエリート国家に対する、半村流主張(反論)がなされる。これには続篇があるが、本書単独ではやや消化不良。
96/8/25
九州小倉で開かれたSF大会、“コクラノミコン”に参加。今年は1つも企画を見なかったので、何のために金を払ったのか分からぬ。のぞみで往復、リーガロイヤルで2泊、いったいいくらかかったのか分からぬ。大会も存続を危ぶまれる時代となった。とはいえ、我々の時代も実際はそれに近かったですね、やっぱり。
子供と行ったスペースワールドは、コスモピア経由ルナ・エクスプレスにプラネット・クルーズ、ブラックホール・スクランブル、スター・シェーカー、クリッパー、宇宙博物館、フリーフォール、コスモファイター、ミルキー・ウェイ、スペース・バルーン、くるくるUFO、わくわくクレーター、スペースカップ、ブーブーフランクにビッグバンプラザときた。のべ5時間、フリーパスで雨上がりの涼しい平日でなければ死んでいたところ。翌日は小倉城からインド料理。堀晃先生は遠望、石飛卓美先生は何か年を取った感じ。その他甲州会(谷甲州ファンクラブ)のKやら、S年F組という芸をしていた現役高校教師の西川先生にあった程度か。
唯一顔を出せたのはSFマガジン阿部編集長(編集部)の部屋のみ。トリプルルームに五0人だかいて大変。まー海外SF企画ももう少しあってほしい。我々の常識外ですが、水鏡子に会って感動している人もいるのです。
ジョン・クレイマー『重力の影』(早川書房)
超ひも理論が大学権力闘争物語まで縮退、というか古代(戦前)SFの冒頭を読むような古いタイプのお話。ただ、結構読めるのは、臨場感溢れる大学描写と理論説明にあるのだろう。
川上弘美『物語が、始まる』(中央公論社)
恐るべしお茶大SF研出世頭(といってもあんまり儲かるまい)の短編集。言語感覚で芥川賞受賞となったわけで、内容は純文ファンジイに多く見られる夢ネタに近い。しかし、基本的な構成物(ガジェット)はお茶大風SFといえる。