97/6/1

谷甲州『撃滅北太平洋航空戦』(中央公論社)
北千島を巡るソ連と日本海兵隊との死闘に、アメリカ空母が参戦。という内容であるが、いつものように局地戦と、戦術的駆け引きが大半を占める。戦略的な大所高所ではなく、こういう視点こそが谷甲州式シミュレーションノベルの面白さといえる。とはいえ、今回は話があまり進展せず。次回でまた大きく転換するのだろう。


97/6/6

ロバート・J・ソウヤー『ターミナル・エクスペリメント』(早川書房)
 瀬名秀明の解説が大半を語っているようなので、あえて付け加えることもない。臨死体験と魂の存在、人間の精神のシミュレーション、といった根源的な問いかけがある一方で、本書自体は単純な犯人捜しであったりする。『火星転移』でも似たような議論があったと思うが、アイデア重視のマニア向けとお話重視の一般読者むけに2種類の規範が必要なのかもしれない。そういう観点があるにしても、私としては、本書より『火星転移』をかいます。
 ところで、森下一仁さんのHP等を見ていて気になるのが、瀬名秀明はSFが分かりにくいといっている、昔SFを十分読んでいなかったからではないか──ととれるような書き方です。私のみる限りでは、瀬名さんの解説は“立派な”SFファンとなんら変わりのないもので、一般読書むけのSFとは何かを述べているにすぎないと思われますがね。


Digital NOVAQご覧頂けたでしょうか。
今回はまだ書けていませんが、1997年の注釈を本読書日記の中に設ける予定です。本文中には、作者自身の注釈しか載せられませんでしたので。ご感想などもお寄せ下さい。ご意見の一部は読者欄に掲載予定。読者欄自体まだありませんがね。

97/6/14

篠田節子『齋藤家の核弾頭』(朝日新聞社
3月にでた本ですが、注目作。誰かも書いていたけれど、レイドロー『パパの原発』を思わせる内容で、コメディでありながら笑えない点も、よく似ています。100年後の日本、超A級の市民から不要市民へと格下げられた主人公が、自宅を立ち退かされ、ついには国家相手に核武装して戦う──お笑い貧者の核戦争、とでもいえる内容。多分に現実の日本に対する逆説的な批判が交じっているのは、この類のデストピア小説の特徴でしょう。面白くも、悲しき物語。


ナンシー・A・コリンズ『ゴースト・トラップ』(早川書房)
ソーニャ・ブルーのシリーズ第2作。バンパイア物はどんな作品でも結構人気がでるようです。本シリーズも売れ行き好調。例によって貴族趣味のサディスト風吸血鬼を、現代女性の女主人公が片付けていくカタルシスが目新しい。本書でも好調さは持続されていますが、やや中ダレぎみ。次作では本書で登場した赤ん坊が成長して活躍か。とはいえ、敵が相対的に弱くなりつつあるこの展開では、欲求不満も残りそう。

97/6/15

最近になって、神戸大学SF研のメーリングリストというのに加入する
 私はOBです。“隔世の感”でもあれば、まあそれなりに納得するのだが、意外にそうでもなくてSFを読んでいる人もいる。翻訳の連載をメーリングでしてたりで、まーなんといいますか。
 今年は創部25周年だそうで、95年卒の岡本真生子さんという人が、サンリオ・ハヤカワ・創元全採点を企画している。がんばってほしいですね(NOVAQ日記を読んで、原稿強奪法を研究してください)。でも、未だに創部メンバーの水鏡子や米村秀雄が出入りしていて、基準作品は『アンドロイドは電気羊──』で70点、とか口をだしているのはどうか。もーいいかげんにしなさい、年寄りなんだから。だいたい基準がディックで70点って、何を意図しているのか分かりません(分かりすぎる?)。
 ちなみに、今年の新入部員は8人でSF読みは1人、ファンタジイ読みはいないそうである。


97/6/22

某パティオに加入する
 まー内容はともかく。一週間で100メッセージもあるという、なかなか賑やかなところです。一方神戸大学のほうも1週間で30通を越えるメールが届いて、結構なことで。今週はバタバタしていて整理がついていないので、この話題は次週に書きます。
スティーヴ・エリクソン『Xのアーチ』(集英社)
昨年12月に出た本。SFサイドからは『黒い時計の旅』(福武書店)以来、注目の作家である。最近、研究書や処女長編の翻訳もでて、『彷徨う日々』(筑摩書房)の前に評判の高い本書を未読ではすまされず、まず読んで見る。トマス・ジェファーソン(アメリカ大統領)の女奴隷にして愛人だったサリーが、時間線を越え、20世紀末のベルリン、アルタネート(並行世界)のアメリカとを輻輳としながら行き来し、幻想ファンタジイとしてだけでなく、殺人ミステリの謎解きとしても、時間SFとしても成立させてしまうという、離れ業的作品。娯楽大作というわけではないが、やはり見逃せない。


97/6/29

この話題も
 例の酒鬼薔薇のことも、時事ネタとして、一応書いておいたほうがいいのか、悪いのか。近所に大野万紀先生の長女が通う中学(例の中学ではない)があるとか、水鏡子が大阪と往復するKSFA通勤途上にあるとか、筆者の実家があるとか、まーそんなことはどうでもいい。これで、ミステリ・ホラーへの非難が高まるだろうとか、犯人が本格マニア(とは思えない)だったとか、例のツトム君のときもビデオマニア(実際はマニアでもなかった)だったとか、マスコミは当然単純な答えを求める。マニア犯人説は、なんたって明快でしょう。もともと名前からして、ヤングアダルト風で、どっちかというとその方面が怪しい、なんてことをいまごろいっても意味ないね。とはいえ、異常性格犯罪が、真相(単純でない説明)に突き当たるのには、これから少なくとも数年を要するように思われる。
 まーそういうことで、6月も暮れる。

目次へ戻る

次月を読む