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その日まで、筆者が関わったイベント系の企画はほとんどなく、唯一あったのが1977年10月16日に開催された「SFセミナー」である。実行委員長寺尾公博、筆者はプログラム(論文集)作成と、当日の進行役。参加者は少なかったが、柴野拓美、堀晃、安田均さんらが参加した。セミナーのプログラムは以下のようになっていた。
よく知られるように、この形式は東京のSFセミナーにそのまま引き継がれて、今日の姿となった。“最初”に価値があるとするなら、記憶にとどめる意味もあるだろう。 時代はめぐる。80年代に入ると、SF大会は大きく変貌していく。
SHINCON以来伸び悩んでいた参加者数は、一気に1000人を突破した。東京、大阪と大都市圏を往復するたびに巨大化も進む。このころはまだコミケは一般的ではなく、ファンジンを即売できるスペースとしてSF大会を利用するグループもあった。ワープロは普及していなかったが、オフセット印刷のコストも下がり、ビジュアルな形態の同人誌が大量に出回り始めたのである。大会のプログラムも多様化した。82年のTOKON8では、2日間で66の企画が大小7会場で開催されるなど、パラレル化が日常となった(注2)。また、DAICON3では完全な手作りアニメ(注3)が上映され、オープニング・アニメブームと、後のGAINAXを産み出すきっかけになった。 このように、大会が同一地域間でピンポンのように連続して開催できたのは、スタッフの継承性があったからである。たとえば、TOKON7の実行委員長佐々木宏氏は、ずばり
と述べている。イベントには、本来ならばSF読者が交歓を深めるとか、専門家が研究成果を発表する場を持つなど、固有の目的がある。しかし、SF大会の場合、開催すること自体が目的となるのである。中身は問われない。アマチュアが主催する大会では、出演者が参加者を100%楽しませてくれるという保証などない。観客の側は、常にリスクを持つ。一方、主催者からすれば、大成功であっても失敗であっても、イベントを実行したこと自体に達成感が感じられる。という意味で、運営したほうがよりリスク(不満)が少ないのである。イベント当日の独特の雰囲気(緊張感)は、またそれを味わってみたいと思わせる、ある種の快楽刺激物質=エンドルフィンともいえる。ただし、参加者が1000人を日常的に超える大会では、さまざまな問題が生じてくるようになった。 SHINCONが終わってから9年、ネオ・ヌルの活動やSFセミナーからも7年が過ぎた1984年8月のとある日、当時星群で活動していた坪井貞一、山根啓史、高橋章子(当時:後の筆名は三村美衣)らから、大阪でSF大会を開催するという話が持ちかけられた。奇妙なことに、大会立候補をEZOCON2(北海道)で済ませたというのに、組織的な裏付けは何もないのだという(注4)。この3人の大会観は、そもそも全く違っていた。 坪井が主張する大会はこうである(組織内連絡誌「DAICON通信」より)。
それに対して山根が主張するのは、ファンを公言しない一般ファンを含めたイベントであって、SHINCONの流れを汲む大会である。反面、SFファンダムとの付き合いは、坪井よりも山根の方が深かった。本当の意味で、一般のファンを見据えた立場とはいえなかった。事態を複雑にしたのは、彼のDAICON3・4に対する個人的なわだかまりだった。山根はアンチ・ゼネプロ(当時)で、大会を進めようとしていたのである。 注1:ここに収録しようと思ったが、結構な分量があるので別な機会に考えたい。SFの基礎教養という意味では、今やってみても面白いはず。とはいえ、SFセミナー当日は、何で試験をSFの集まりに来てまでやらなきゃいかんのだ、といった表情の人もいた。それぐらい本物の試験と似ていたのである。数年前の京都SFフェスティバルでも、同様の企画が「SF共通一次」として実施されているが、合宿企画なのでホンバン並みの緊張感はなかった。 注2:この大会では、印刷物のクオリティも高かった。編集をスタジオ・アンビエントなどのプロが担当/指導したためである。プログレスレポートの表紙に新井素子、大原まり子、菅浩江らのポートレートを起用するなど斬新(大胆)な編集方針だった。余談だが、当時はこのようなポートレート風写真に、あえて挑戦する作家もいた(下記)。
注3:大量のスタッフをアニメ製作に動員。徹夜続きで家に帰れない未成年スタッフの親が、悪いことにかかわったのではと憂慮する騒ぎになった。関係ないが、筆者のヨメも、アニメーション技術の専門家として参加。 注4:大会が巨大化することに対応して、立候補は2年前からできるようになった。すなわち、2年間の準備期間が与えられるわけである。 |
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