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UNICONの日

 UNICONで出された印刷物にはどんなものがあったのか。

UNICON通信はプログレスレポートに相当するもの。
UNICON通信第2号。ロゴやデザインまで変わっている。
当日配布されたプログラムブック。出版社の広告も掲載され基本的な体裁は整っていた。

  これらを見ていても、およそ統一性がない。デザイン不統一だけの問題ではなかった。UNICONの場合、企画、印刷物、事務連絡から会場準備まで、あらゆる点が不統一だったのである。UNICONには、3つの企画の柱があった。

bullet 1つ目は、ショーとしてのメインホール企画
bullet 2つ目は、翻訳者を集めたセミナー風マニア向け企画
bullet 3つ目は、初心者向け入門企画(注1)
 

 この3本柱を「SFの再入門」でくくることが企画のコンセプトだった。しかし、フェスティバルに集まった参加者にとって、このどれもが「専門化」しすぎていたのである。たとえば、メインホールではTARAKO(注2)のコンサートが開かれ、桂春輔(注3)の落語が口演されたが、両者はまったく客層が異なる内容だった。また、初心者向けの入門講座と、セミナー流れのマニアックなファンとの接点もほとんどなかった。会場では、3種類の先鋭的な企画が全く異なる方向に並べられており、参加者が困惑して立ち尽くす状態だった。そもそも、そのような分離を考えるには、参加者が少なすぎたのである。

 前日の準備では、コンサートの楽器レンタルからトラブルが始まった。ライブの機材は主催者で用意する必要があった。しかし、まず車がなく運転者がいない、楽器が借りられる時間も不明だった。現場で機材の手配をするスタッフが決まっていなかったのである。最初の混乱だった。

 翌朝になると、混乱は増幅されていく。真夏の炎天下、開場を待つ参加者は放置されたままで、不満の声をあげる。整理責任者はいたが、指示は場当たりだった。スタッフも揃いの制服(Tシャツ)を着けてはいたものの、各自の役割のガイダンスもないまま途方に暮れている。参加者よりスタッフが目立ち、締まりのない印象を与えていた。

 企画も、準備ができているものと、何の打ち合わせもできていないものが混ざり合っていた。進捗を管理する部門がなかったからである。同様にゲストに対するフォローは、担当者によってまちまちだった。後になって、好評不評に大きく分かれたUNICONの評価は、このあたりが原因している。

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注1:初心者向けには「よいこ企画」が準備された。初参加者専用に「よいこNEWS」が発行され、SF入門を目指した「よいこ手帳」が刊行された。

「よいこNEWS」は合計4号が製作された。内容には喜多哲士のアイドル入門などが含まれており、SF入門なのかイベント入門なのかよく分からない不思議な内容。

表紙イラスト:田中紀子,題字:劉春子
「よいこ手帳」は総ページ数122頁、ワープロ3段組の立派なファンジンである。編集には田中紀子、山崎博美、高橋章子、斉藤一美らがあたった。

注2:歌手・声優のTARAKOである。当時実行委員をしていた辻睦彦がファンクラブの幹部をしていた関係で呼ぶことができた。ただ残念なことに、客層との乖離が目立つ結果に終った。

注3:現在は祝々亭舶伝(しゅくしゅくてい・はくでん)に改名。天下の奇人として知られている。背広に色違いの軍手をつけ「現実とは全く接点のない、完全なナンセンスこそが真の落語」と説く。そのため、口演は、SFファンが聞いても理解できないほどの究極のシュールさであった。

 

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