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デザインイメージの大会

 CIという言葉は、昔(DAICON5があった80年代には)大変流行したが、最近ではめったに見かけなくなった。ただ、それは言葉の流行だけの話で、概念がなくなったわけではない。CI (Corporate Identity)とは、企業イメージなどを統一するために、企業ロゴ、ユニフォーム、会社の書類や名刺にいたるあらゆる媒体、場合によっては社訓までを、統一的に刷新する手法を指す。“会社のイメージ一新”というニュアンスでよく使われた。

 それとSF大会とがどう関係するのか。

 従前のSF大会では、デザイン面から見た統一性というものが全くない。ロゴはロゴ、プログレスはプログレス、パンフレットはパンフレットと、すべてばらばらだった。単に“SF大会”だからという、参加者の「SF大会とはこんなもの」という共同幻想に甘えていただけなのである。これでは新しいイメージを想起することなどできない。そこで、CIの考え方を用いる。ロゴも封筒も統一イメージで押さえる。制服や看板まで含めて、参加者が一目見てDAICON5を想起しうるものにする。

 このような考え方を打ち出したのは、松林富久治(注1)だった。彼は大会のスタッフではない。しかも、よくいる素人イラストレータでもなく、本格的なデザインの勉強を経て、工業デザイナーを目指していた。そのせいで、SF大会を極めて客観的に、場合によっては辛辣に見ることができた。大会ロゴデザイン、会場のデザインボード、ユニフォームまで(予算の許す限りだが)彼の提案は多く取り入れられている。ファンが何もかもやる大会では、どうしてもイメージが曖昧で甘くなりがちだ。ファンだから下手でもよい、不統一でもよいというのは主催者の勝手でしかない。デザインくらいは外部の見方を取り入れたほうが締まって見えてくる。

統一ロゴデザイン

  

会場案内ボード、詳細な指示書、大会封筒(最終版)のデザイン

 ということでは、プログレスレポートも同じである。下記に示すのはその表紙であるが、ここまでシンプル (すぎる点はあるが)、ピュアなデザインは大会史上DAICON5だけのはずである。

  

ジャーナル1・2・3号(プログレスレポート)

 縮小のために見難くなっているが、1号は銀河を、2号は太陽系(赤と黒の2色)を、3号は原子の回折格子(青と黒の2色)をイメージしている。1号はもともと単色刷を予定していたものを急遽2色刷にしたため、2号以降とデザインが異なってしまった。この変更でデザイナーともめたこともある。内容も、表紙に合わせてレイアウトした。レイアウト自体は筆者が行っている。印刷物で注意が必要なのは、むやみにフォントの種類や大きさを変えない、という点だろう。フォントもオーソドックス、レイアウトも読みやすさを第1に考える。わざわざ変わったフォントを使ったりする場合もあるが、そのようなフォントはすぐに飽きられてしまう。プログレスは少なくとも半年以上にわたって出されるものなので、思ったよりも長期間参加者の目に触れるのである。

 

プロシーディング(大会のプログラムブック)
アフターレポート(この地球は小さな方眼をモザイク状に組み合わせて表現されている)

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bullet注1:後に、創元推理文庫やハヤカワ文庫の表紙デザインを多数手がけたが、仕事の条件面で折り合わずに、最近では止めているようだ。
 

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