申し込み状況が芳しくない頃、事務局には営業スローガンが毎月張り出されていた。
参加者募集強化月間(12月)
参加者増加月間(1月)
参加者倍増月間(2月)
参加者躍進月間(3月)
合宿駆込参加募集月間(4月)
事務局電話前には、電話の受けかたが書かれていた。担当者不在の場合の応答法など、社会的常識に不自由なスタッフのため。
しかし、ゲストの有名人はもとより、外人参加者からの国際電話までかかってくるので、電話を恐れるスタッフも多かった。
大半のゲストが東京在住のため、電話代は膨大なものに昇った。企画関係の電話代はムリョ100万円。当時NTTは民営化されておらず、KDDIもなかった。
ついでに、大会でコピーした書類はあっと驚くムリョ20万枚。
大会の1月前には衆参同時選挙というのがあって、ポスター掲示板が捨てられていました。そこで某選挙管理委員会に話を付け、べ二ヤ板を大量に仕入れることが出来ました。
事務局に差し人れを持たずに訪れた参加者は、総てスタッフにされたという伝説がある。
スタッフアンケートより。回答者62名(全スタッフの約半数)。
どうしてスタッフに? |
だまされて |
25 |
誘われて |
13 |
一度SF大会をやってみたかったから |
12 |
面白そうだったから |
5 |
友人ができそうだったから |
2 |
暇だったから |
2 |
その他 |
5 |
きっかけは? |
友人に誘われて |
25 |
自主的に |
11 |
ダイレクトメール |
9 |
無理やり |
9 |
その他 |
7 |
なって良かった? |
はい |
44 |
いいえ |
9 |
その他 |
4 |
事務局には恐ろしい原住生物たちがいて、昼となく夜となく棲息していた。それは、実行委員長、企画部長、合宿局次長と一応呼ばれていたが、名前から連想するような姿形はしていなかった。
実行委員長は、あまりに委員長らしくない汚い格好だったので、当日まで大会委員長だと知らないスタッフが大勢いたという。
事務局宛に送られた封筒の切手は、新聞社を通じて寄付されました。ワクチン1本ぐらいにはなったことでしょう。
大会前日、会場の入口に不審な人影。夜明かしして、大会1番乗りをめざす参加者だった。
今回の大会は11年ぶりに定刻通りに始まり、定刻通りに終わった。
気付かなかったでしょうが、阪急吹田駅では、駅員を増員して会場の案内をしてくれたのです。
会場入口でのパチンコ屋風呼込み口上
「ありがとうございますありがとうございます
全国津々浦々コンべンションは数々ございますが
ダイコンファイブダイコンファイブにご来場戴きまして
実行委員長以下スタッフ一同厚く深く御礼申し上げます」
翻訳家パネルで披露された浅倉久志さんの替え歌。
「チバ・シティブルース」(ヨコハマたそがれの節で)
仁清(二ンセイ)、やきとり、ホテルのコフィン
杯溢(パイイツ)、おりがみ、ゲームのノイズ
ブル―ス、ギブスン、サイバーパンク
SFは行っていってしまった、SFは行っていってしまった
もう、わからない
翻訳家の黒丸尚さんは、24日の企画で3連続出演の快挙を成し遂げた(朝10時から昼過ぎの3時まで、途中1時間休憩)。もともと2企画だったものだが、別のゲストの要望で企画増となったものである。尚、黒丸さんは1993年に亡くなっている。
同じように、中ホール司会を依頼した大森望の場合、初日は比較的まともな格好をしていたが、2日目はやけになったのかこんな格好に。
司会の正信美香と大森望(初日)、短パンで登場(2日目)
その上、ワールドコンへの星雲賞運搬係まで、「くそー、こき使われてしまったぜ」といいながら、引き受けさせられていた(ヒューゴー賞授賞式の前に、柴野さんから受賞者に渡されるのが恒例行事)。
ゲストのために、会場内の和室が専用の控え室として確保されていた。単に案内するだけでなく、湯茶の接待程度は行ったのだが、ゲストの反応はさまざま。ここまで配慮する大会は少ないので、概して評判は良かった模様。
手塚さんは手塚プロからの電話呼び出しを再三無視して、応対するスタッフが手塚プロから怒られる始末。岡本忠成さんと昼食の約束をしたから準備をと突然言われたり、日曜の朝、放送されるアニメの内容確認をするのでテレビを見せてほしいと突然言われたり…(色ずれした14型TVで見ていただきましたが)。
大会本部は、楽屋の奥に設けられていた。トラブル対策で紛糾するとの予想と裏腹に、忘れたころに電話があるだけで、修羅場の会場を離れ平穏な別世界だった。
ハリスンは多国語に通じているが、ア二メ『天空の城ラピュタ』の話をしていると、突然ネーミングが悪いという。ラピュタは、ガリバー旅行記に出てくる浮かぶ城のこと、ところがその意味は、スぺイン語で“放蕩女”なのだ。同じく『ナウシカ』もnausea(ノーシア、吐き気を催すの意
)を連想するので、良くないとのこと。
ハリスンの奥さんは、SFのママさんとよばれていて、本当に優しいすてきな人である。大会当日も、忙しく走り回っている委員長を捕まえ、ここで休んでいけというのだが英語の分からない委員長はおろおろするばかりだった。(注)
ホーガンは、来日直後イギリス紳士と見なされたが、大会になってイギリスの失野徹と呼ばれるようになった。
ホ―ガンは、とにかく多くのファンと会いたいと、9月5日まで2週間余り日本に残っていた。
東京スタッフの小浜徹也はホーガンの洗濯までやらされていたので、帰国を聞いて一番喜んだ。しかし、アメリカへ送るようにと書かれた荷物が、なぜか残されていた。
なぜホーガンが慌てて帰ったか? アメリカの大会で自分がゲストだったことを、突然思い出したからである。
アメリカのSF業界誌LOCUSに、ホーガンのレポートが載っている。(外人作家による日本の大会のレポ―トは、DAICON4のE・ハル以来2回目)。内容は、
「日本の大会もアメリカとよく似ているが、日本のファンは、後ろ向きのファンタジィより、むしろ前向きのサイエンス好きであること、コスチュームショウでカンフー演技(TRYのショーのこと)があったことや、ルームパーティではプロもアマもなく、量子論を議論するかと思えば歌い騒ぐなど、渾然一体のところがなんとも驚異だった」
参加者
事前アンケート結果集計
(プログレスレポート1号で求めたアンケート。この資料は当日配布されたもの)
大会後の参加者アンケートから抜粋
企画の数や内容のバランスがよくとれていた。海外ゲスト・参加者が異和感なく迎え入れられていたのが好印象(25歳 男)
25周年という節目のせいか、企画・内容とも少々堅かったような気がします(28歳 女)
シンポジウム等のまじめな企画が多く、その反面、お遊び企画もあった(29歳 男)
もうすこし初心者向きの企画が欲しい(15歳 男)
ア二メファンが減って、活字・映画ファンが復活した感じでしたね(26歳 女)
プ口グレス・レポートから考えていたより、優れた企画が多くて良かった(23歳 女)
スタッフ・参加者ともに良質な大会でした(28歳 男)
企画といえば対談・パネルディスカッション・映画しかないと思っているのではないですか。私はSF大会に行ったのであって「何々先生の話を聞く会」に行ったのではないのです(26歳
男)
今回のコンセプトは好きです(28歳 女)
参加者それぞれの参加の仕方があるなぁ、と実感(21歳 女)
へっへっへっ、病つきだぜぇ(20歳 女)
アホばっかしや。SF大会にきてア二メ・特撮の歌をうたうなっちゅうねんっ!(23歳 男)
スタッフの印象がうすいです。もっと派手なTシャツ着てウロウロして欲しかった(20歳 男)
来年、名字が変わるので大会参加は不可能です。でも、SFは絶対にやめません(23歳 女)
スタッフが、でしゃばりすぎて鼻につくこともなく好感が持てました(29歳 男)
ロリコンのお兄さんたちを駆除しといてください (15歳 女)
参加者は企画に夢中になるのはいいけど風呂にくらい入ってほしい(29歳 女)
参加者まかせでスタッフが余り動いてなかったような気がする(20歳 男)
スタッフがめだたず、ノン・トラブルで運営するのは大変なことだったと思います(26歳 男)
スタッフのことを特に憶えていないというのはヒジョーに良かったからでしょう(23歳 男)
馬鹿騒ぎをするでもなく、かといって盛り上がりに欠けるわけでもなく、和やかで居心地のいい大会でした(23歳 男)
子連れがチラホラしていましたから、母子室ありの会場というのは正解でしたね(31歳 男)
合宿の朝食は弁当式で「持ち帰り自由」なども―つの手だと思う。勿体ない(24歳 男)
いくら女性とはいえ、ダブルべッドというのはちょっとどうかと思う(19歳 女)
SF大会なんですから、最低限「SFを読む」SFファンの集いであってほしいです(25歳 男)
コンべンションってクセになるのよね。年賀状と一緒で(23歳 女)
大会も25回目を数えた今、ワールドコンの日本での開催を考えてもよいのでは(27歳 男)
当日のスタッフももちろんですが、ずっと準備に携わってきた全スタッフに「ごくろうさま」といいたい(26歳
男)