「オール読物」に掲載された中短編4編から成る作品集である。もともと幻想小説を多く書く著者なのだが、本書は設定がすべてSFなので注目を集めた。
「深海のEEL」(2009/2):駿河湾で突然獲れた巨大ウナギには、ありえない量のレアメタルが含まれていた
「豚と人骨」(2009/12):マンションの建設現場から、大量の人骨を含む奇怪な遺跡が発掘される
「はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか」(2010/5):田舎の工場団地に現れたストーカーの正体
「エデン」(2011/3):厳寒の地に作られた村では、60年余も続くトンネル工事が行われていた
何故ウナギ(表題「EEL」はウナギのこと。もちろん『深海のYrr』に引っ掛けている)にレアメタルが含まれるのか、縄文時代に大量の人骨が埋められた理由は何か、ストーカーはなぜ主人公を狙って追いかけるのか(表題が最後にその謎を明かす)、最新鋭の機材を使うストイックな禁欲主義者たちの目的などなど、すべての作品に科学的/SF的な理由付けがなされている。テーマは時事的ながら、変に政治ネタに走らず、ファンタジイにも逃げずに収めたところは感心する。科学的に正しいかどうかについては議論があるだろうが、そもそも本書の主眼はそこにはない。世俗の煩悩に溺れた登場人物たちが、超常(超常識)現象に遭遇した際の慌てぶりに、妙に現実感がある。
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