ショーニン・マグワイア『不思議の国の少女たち』(東京創元社) Every Heart A Doorway,2016(原島文世訳)
ショーニン・マグワイア『トランクの中に行った双子』(東京創元社) Down Among the Stics and Bones,2017(原島文世訳)
ショーニン・マグワイア『砂糖の空から落ちてきた少女』(東京創元社) Beneath the Sugar Sky,2018(原島文世訳)
カバーイラスト:坂本ヒメミ、カバーデザイン:藤田知子
著者は1978年生まれ、2009年デビューの米国作家。主にアーバンファンタジイに分類される作品を書いてきた。年に3~4冊のペースで、すでに40冊を越える著作がある。その中でも《Wayward
Children》(《彷徨える子どもたちのシリーズ》、三村美衣の解説では《迷える青少年のためのホーム》)は、最初の『不思議の国の少女たち』が2017年のヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞(中編部門)を受賞して注目を集めた作品だ。どれも薄い小冊子形式で出版されており、原著版は現在第4部まで刊行されている。
不思議の国の少女たち:奇妙な全寮制の学校があった。広大な私有地の中にあり、ふつうの学校から落ちこぼれた少年少女を受け入れていた。ただ、彼らには共通点があった。みんな「向こう」の世界に帰りたいと願っているのだ。新入生だった主人公は仲間たちに恵まれるが、思わぬ殺人事件に巻き込まれてしまう。
トランクの中に行った双子:生徒たちの中で異彩を放つ双子の姉妹の物語。二人は学校に来る前、トランクの中に現れた階段を下りて、暗い荒れ果てた世界にたどり着いた経験を持つ。
砂糖の空から落ちてきた少女:ある日学校の池に、お菓子の国から一人の少女が落ちてくる。その子は意外な母親の名前を明かすのだが。
「向こう」側には、妖精の棲むファンタジイ世界があったり、死者の国、ホラー的な怪物の支配地や、お菓子の国のようなおとぎ話の世界もある。論理性があるもの、ナンセンスなものなどさまざまだ。しかし、そこは訪れたものを必ず受け入れてくれる。主人公たちが感じる、居心地の悪い現実世界との大きな違いだ。だから、彼らは向こう側に戻りたいといつも思っている。たとえ確率がどんなに低くても。
子どもの頃、物語世界にのめり込んだ読書家なら、(昔のことではあるが)本書の主人公に共感を抱くだろう。どう考えても、リアルより物語の中の方が楽しいからだ。ただ、楽しいばかりでは済まされない。本書は社会問題を直接のテーマとしたわけではないものの、(2巻目の双子の場合など)家庭内で蔑ろに/玩具にされた子どたちについての考察がある。DVとなるのは暴力だけではない。
この3巻では最初の巻で大きな事件が起こり、2巻目でその遠因が探られ、3巻目で解決が図られる。各巻で個々の物語は完結するが、通して読むことでより全体像が明らかになる。
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