SFチェックリスト(1988年1月〜1992年3月)
1979年から81年
1979年
1980年
1981年
(2〜6月)
1981年
(7〜12月)

1982年から86年

1982年
1983年
1984年
1985年
1986年
(1〜9月)

1986年から87年
1986年
(10〜12月)
1987年

1988年から92年
1988年
1989年
1990年


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 88年から92年はSFチェックリストの最後の時代である。と同時に、SFアドベンチャーの最後の時代でもあった。アドベンチャー自身は、SF専門からポップ・カルチャー雑誌に変身し季刊化、4号続くが、93年の夏に休刊する。

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(ポップ版SFアドベンチャー93年夏号)

 チェックリストでは、87年まで変わりつつあるSF状況に追いつくべく、レビュアーを増やす方針が採られていた。しかし、88年以降のチェックリストは、メンバーも当初に近い5名(後6名)に戻り、厳選の方向を模索した。この頃、SFの出版点数は急激に増えていたが、チェックリストの範疇を外れたものも多くなっていた。シミュレーション・ノベルやヤングアダルトが主流になりつつあったためである。たしかに、その意味ではSFアドベンチャーと共に、この欄が消えたことも時代の流れに即していたのかもしれない。

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(月刊最終号:SFアドベンチャー92年3月号)


 なお、88年はベストSFの選出は行われなかったので、岡本の個人ベストのみが挙げてある。89年90年はベストがある。91年は、発表以前に掲載誌自体がなくなってしまったため未公表。

1988年1月から1992年3月までの担当者:
artbul2a.gif (214 バイト)鏡明+大野万紀+野村芳夫+岡本俊弥+星敬
artbul2a.gif (214 バイト)山岸真(1990/4から)+大須満(1991/08のみ)
artbul2a.gif (214 バイト)トレンドウォッチング:鏡明+星敬(対談による月別概況報告)+山岸真(不定期)

1988年のベスト

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(SFアドベンチャー1989年4月号)

総括執筆:星敬(創作)+岡本俊弥(翻訳)

bulletサミュエル・R・ディレイニー『ノヴァ』(早川書房)
bulletルーシャス・シェパード『緑の瞳』(早川書房)
bulletブルース・スターリング篇『ミラーシェード』(早川書房)
bulletジーン・ウルフ『新しい太陽の書四部作』(早川書房)
bulletマーク・レイドロー『パパの原発』(早川書房)
bulletフレデリック・ポール篇『ギャラクシー』(東京創元社)
bulletJ・G・バラード『奇跡の大河』(新潮社)

欠点はあるけれど、読む価値も充分ある昨年の話題作
bulletイアン・バンクス『蜂工場』(集英社)
bulletジョナサン・キャロル『死者の書』(東京創元社)

最後に時事的なノンフィクションから一冊
bullet巽孝之『サイバーパンク・アメリカ』(勁草書房)
岡本による総括

 諸般の事情から、2年つづけて海外SFの総括を行なうことになった。総括の下調べは、けっこう大変なのだが、海外SFに限ってみるなら、昨年は一昨年の傾向がそのまま継承されたといえる。昨年の項目を書き写し、コメントを直す程度で(もちろん、そんなことはしませんが)、ほとんど問題が残らないくらい、本質的な変化は少ない。今回は、大括りな項目別に述べていきたい。

◎出版点数
 本誌調査の数字では、

 新訳SF     ……65冊
 同ファンタジイ周辺……68冊
 ゲーム・ブック  ……11冊
 再刊合計     ……25冊

 計133冊は、一昨年より10冊余り減少している。ただ、SFの目減りが30冊と著しく、その分ファンタジイが増えている。各出版社の重点が、ホラー、ファンタジイに傾いた年だった。サンリオ文庫がなくなった影響もある。なお、この数値は上下巻を一冊と数えている。

◎サイバーパンク
 日本でのサイバーパンク現象は拡大、拡散し、いまや原形とは似ても似つかないものまで、その範囲に含めている。翻訳では、サイバーパンク本流ではない(主人公の設定や物語の視点が類似する)、作家も紹介された。

 バラード『沈んだ世界』を想起させるという書評(評者も同じ読後感を抱いた)があった、ルーシャス・シェパード『緑の瞳』、核戦争後の世界を舞台に、謎の宗教団体に立向かうアウトローを描く、ティム・パワーズ『奇人宮の宴』などは、“サイバーパンク時代”を反映した雰囲気をもった作品だ。ただ、SFの約束ごとに執着しないシェパードと、すべてが旧来SFの範疇に含まれるパワーズとは、それ以外の共通項を持っていない。シェパードについては、評価が難しいという意見が案外多かった。

 本流作家では、マーク・レイドロー『パパの原発』が、未熟−重厚−興奮−興醒めなどなど、議論を引起こした。どの意見も、ある一面で正しい。そこが作品としては未完成ながら、本書の魅力かもしれない。

 集大成アンソロジィ、ブルース・スターリング篇『ミラーシェード』は、まさにこの時代必読の書。集録作品の質には、相当なばらつきがあるけれど、ともかく読むなら今で、来年では遅すぎる。

 ところで、グレッグ・ベアは『コロナ』(スタートレックもの)、『天空の劫火』(パニック小説)、『蛇の魔術師』(異世界ファンタジイ)と、多彩に翻訳されたが、かえって守備範囲の狭さがめだってしまった。

 年末には、表題通りの作家インタビュー集『サイバーパンク・アメリカ』が出た。研究者とまでいかなくても、全貌に興味のある方にお薦めする。

 その関連ではないが、忘れてはならない作品として、コードウェイナー・スミス、アルフレッド・ベスターとならぶサイバーパンクの原点、サミュエル・R・ディレイニーの『ノヴァ』がある。一見シンプルな物語の裏に、複雑に織込まれた隠喩の数々……。発表後20年がたち、90年代を迎える今になって、どれだけの読者が本書の理解者となりえるかが興味深い。

◎SF一般
 ジーン・ウルフの“新しい太陽の書”四部作は、『独裁者の城塞』でついに完結した。類書(長大異世界ファンタジイ)の中では、もっともSFに近く、完成度も高い。SF作家がファンタジイを手掛ける例は多いけれど、本シリーズは独特の雰囲気と輻輳した構成を持っている。

 冒険ハードSF、グラント・キャリン『サターン・デッドヒート』も広く支持された。しかし、もともと何の変哲もない“普通のSF”であるわけで、絶賛をあびるほどの斬新さはないのだ。このような作品が少ないことこそ問題だろう。

 その他の話題作としては、イアン・ワトスンとマイクル・ビショップという黄金コンビの『デクストロU接触』がある。良くも悪しくも作者2人の個性を反映しており、予想通りの内容だった。

 一方、作家の個性という点では『太陽の帝国』に続くJ・G・バラード『奇跡の大河』がある。これまたバラード・ランドそのもの。前作『太陽…』には及ばないが、期待は裏切られない。

◎ファンタジイ
 年の初めにマーヴィン・ピーク『タイタス・アローン』が出て、ゴーメンガスト3部作は完結した。

 現代ファンタジイ、R・A・マカヴォイ『黒竜とお茶を』は、キャラクターの魅力で話題を呼んだ。

 そのほか年内に完結はしなかったが、ディヴィッド・エディングス『ベルガリアード物語』(全5巻中4巻)、マリオン・ジマー・ブラッドリー『アヴァロンの霧』(全4巻中3巻)などが水準以上の出来だった。マイケル・ムアコック『ブラス伯爵』(ブラス城年代記シリーズ)の翻訳もスタートした。

 変ったところで、ロールプレイング・ゲームのノウハウを用い、設定や登場人物の性格付けを行なった小説(ノヴェライズではない)、M・ワイズ&T・ヒックマン『ドラゴンランス戦記』(全6巻)が完結している。

 他では、社会思想社からファンタジイのシリーズが刊行され、中にはデイヴィッド・ビショフなどが含まれている。

◎ホラー
 あいかわらずスティーヴン・キングは強く、4冊(リチャード・バックマン名義を含む)。 早川書房のモダン・ホラーは計10冊を刊行し、ペースを確立した。もっとも、ショーン・ハトスン、ジェームズ・ハーバートで5冊を占めている。“ベストセラー作家”ディーン・R・クーンツの『ファントム』が、やや変った趣向である。

 また、青心社から、大瀧啓介篇『クトゥルー』シリーズ(文庫版)が刊行開始となった。

◎周辺
 クレイグ・バーカーと並ぶ、イギリスSF、ホラー(かつ純文学)のもう1人の星、イアン・バンクス『蜂工場』が出た。単純に言ってしまうと異常心理もの。その描写の異様さが注目された。ただ、翻訳の段階では既にイギリスでの評判が伝わっていたから、かえって欠点がめだってしまう。たとえば、結末はこれでいいのかなど、物語のバランスに議論が起った。

 もう1冊、ジョナサン・キャロル『死者の書』も話題を呼んだ。こちらは、童話作家の研究をするうちに、しだいに奇妙な事実に突き当るという、ノンフィクションから、ファンタジイ、ホラーと、しだいに現実から遠ざかる構成で書かれたもの。謎の究明までと、究明後の展開に落差があり、その点が問題になった。

 ただ、この2作品は、どちらも処女長篇にあたる。欠点があったとしても、今後の期待につながるものだ。

◎その他シリーズもの
 ペリー・ローダンは、常かわらず10冊を刊行(第146巻まで)。ダーコーヴァはややペースが落ちて、4冊(上下2巻本が多かった)。旧来からのシリーズものは、長大作品が分冊で出る中に紛れてしまい、目立たなかった。

◎訃報
 作家の訃報については、昨年の予言(!)が的中し、現役大物作家ロバート・A・ハインライン(80才)、クリフォード・シマック(83才)らの死が伝えられた。また、ノースウェスト・スミスで知られるC・L・ムーア(76才)が、一昨年に既に亡くなっていたことが報じられた。マイナーなところでは、レムリアン・サーガ(ゾンガー)などのリン・カーター(58才)、ジェイムスン教授シリーズのニール・R・ジョーンズ(79才)らが死去している。

 今年も、ベストSFの選出は行なわれなかったので、最後に個人的な推薦作を挙げてみる(上掲)。残念ながら、昨年は、選択の余地が少なかった。ファンタジイ、ホラーは除く。(出版順)

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1989年のベスト

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(SFアドベンチャー1990年4月号)

総括執筆:鏡明(創作)+大野万紀(翻訳)

bullet筒井康隆『残像に口紅を』(中央公論社)
bullet酒見賢一『後宮小説』(新潮社)
bullet夢枕獏『上弦の月を喰べる獅子』(早川書房)
bullet小林信彦『イエスタディ・ワンス・モア』(新潮社)
bullet中井紀夫『山の上の交響楽』(早川書房)
bullet高橋源一郎『ペンギン村に陽は落ちて』(集英社)
bullet清水義範『金鯱の夢』(集英社)

(翻訳)
bulletスティーヴン・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る』(早川書房)
bulletルーディ・ラッカー『ソフトウェア』(早川書房)
bulletウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライブ』(早川書房)
bulletジョージ・アレク・エフィンジャー『重力が衰えるとき』(早川書房)
bulletスタニスワフ・レム『完全な真空』(国書刊行会)
bulletエヴァンズ&ホールドストック編『アザー・エデン』(早川書房)
bulletバリントン・ベイリー『時間衝突』(東京創元社)
bulletK・W・ジーター『悪魔の機械』(早川書房)

岡本による総括

 総括でも触れられるだろうが、アメリカでの最近の傾向として、ファンタジイ、特にホラーの急増(SF・ファンタジイ・ホラーで、10対10対7の割合)があげられる。SFは、80年代後半、伸びが落ちている。日本でも88年ごろから、同じ傾向が翻訳SFにあらわれている。早川書房もふくめて、ホラー/ファンタジイの占める割合が拡大しているのである。

 代表格は、『12月の扉』『ライトニング』など8冊(上下で一冊として)が出たクーンツである。きわめて類型的な構造で、しかし水準以下にはならないところが、ホラー出版ブームの意味自体を暗示させている。型どおりのファンタジイの中では、力作ながら、ダークファンタジイと呼ばれる『月の骨』(キャロル)、『ウィーヴワールド』(バーカー)あたりはどちらかというと、マイナーな部類だろう。また、別格キングの、映画公開と同時刊行『ペット・セマタリー』には、映像をはるかにしのぐ重さ≠ェあった。

 SFでは、サイバーパンクの残り火『モナリザ・オーヴァドライヴ』(ギブスン)、『蝉の女王』(スターリング)、『ウェットウェア』(ラッカー)が水準以上だった。また、その傍流としての『戦時生活』(シェパード)や、電脳風俗小説『重力が衰えるとき』(エフィンジャー)が読むに値する。しかし、小説的な完成度の反面、破天荒な迫力に、いま一つ不足している。

 そういう意味では、まず、『完全な真空』(レム)と『時間衝突』(ベイリー)が、パワー十分の傑作。アンソロジイの、『アザー・エデン』(エヴァンズ&ホールドストック編)も質の高いイギリスSF≠フアンソロジイだった。

 一方、日本SFでは、ティーンズ文庫(SF、ファンタジイ、青春小説などなど混在)の占有率が急激に伸びている。アメリカにもヤングアダルト向けはあるが、これほど率は高くない。善し悪しは別にして、新しい市場として注目される。今後、供給源の限られる状況で、いつまで量が確保できるかが問題になるだろう。(翻訳には、まがりなりにも養成講座があるのに、なぜか小説のテクニカルな講座は少ない。これは、出版に限らず、日本の多くの分野にいえることだが、要は底が浅いのである)。ということと、いわゆる日本SFとは、あまり関係はなかったようだが、毎年の新人が、ティーンズ文庫でしか出ないようでは問題だろう。

 しかし、『山の上の交響楽』(中井紀夫)と、ファンタジーノベル大賞『後宮小説』(酒見賢一)が、新しい作家の可能性を見せるという意味で、大きな収穫である。安定した中堅作家の、SF大賞『上弦の月を喰べる獅子』(夢枕獏)や、『Uの世界』(神林長平)など、それぞれ作家がデビュー以来あたため続けたテーマも、ここにきて結実しつつあるようだ。深みのある創造力に富んだ小説が、健在なのがうれしい。短篇集を3冊出した草上仁、《航空宇宙軍史》の谷甲州は、質的にも安定している。

 実験小説『残像に口紅を』(筒井康隆)や、『宝石泥棒U』(山田正紀)も、きわめて挑戦的な作品である。第一世代の作家で、現在なおSFのコア部分にあり、しかもアクティブな作家は少ない。眉村卓の『不定期エスパー』は、雑誌連載で完結。単行本は今年となる。もう一つの大作『引き潮のとき』も終幕を迎えつつあり、90年本格SFの第一の注目作家は、眉村卓ではないか。

 その他、メッセージ小説『宇宙のみなもとの滝』(山口泉)や、ノスタルジィを込めた『Yesterday Once More』(小林信彦)などが目を引く作品だった。

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1990年のベスト

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(SFアドベンチャー1991年5月号)

総括執筆:星敬(創作)+山岸真(翻訳)

bullet山本弘『時の果てのフェブラリー』(角川書店)
bullet神林長平『帝王の殻』(中央公論社)
bullet椎名誠『アド・バード』(集英社)
bullet大原まり子『ハイブリッド・チャイルド』(早川書房)
bullet大江健三郎『治療塔』(岩波書店)
bullet梶尾真治『サラマンダー殲滅』(朝日ソノラマ)

(翻訳)
bulletジョナサン・キャロル『炎の眠り』(東京創元社)
bulletケン・グリムウッド『リプレイ』(新潮社)
bulletブルース・スターリング『ネットの中の島々』(早川書房)
bulletK・W・ジーター『ドクター・アダー』(早川書房)
bulletジョン・クロウリー『エンジン・サマー』(福武書店)

岡本による総括

 まずは概要を、カレンダー風にして追いかけてみよう。

【1月】

年初の話題作は、ハード・ヤングアダルト『時の果てのフェブラリー』(山本弘)だろう。SF味の少ない分野で、今後どこまで伸びて行けるかに、注目が集っている。『時空と大河のほとり』のベンフォードは、この後、合作も含め大部の長篇が4作も出た。『銀河宇宙オデッセイ』(NHK)にも出演。

【2月】

神林長平の最高傑作、『帝王の殻』が出た。また、大河小説『不定期エスパー』(眉村卓)が完結した。

【3月】

SF大賞を受けた『アド・バード』(椎名誠)が出た。『水域』(9月刊)『武装島田倉庫』(12月刊)と、どの作品も傑作。
 一昨年からの、ストルガツキー翻訳の集大成的作品『トロイカ物語』、SFプロパー外の話題作、宗教的な全体主義社会を描く『侍女の物語』(アトウッド)も出た。

【4月】

一方、SFプロパーの注目作家ワトスンの、日本独自に編まれた短篇集『スロー・バード』は、この作家の才能の全貌を見渡せるもの。

【5月】

日本でのSFコアの最右翼『ハイブリッド・チャイルド』(大原まり子)と、SFサイドの評価には、筒井康隆からも疑問の声がでた『治療塔』(大江健三郎)は、見事なまでに対照的な内容。そして、待望久しい′カの傑作『スターメイカー』(ステープルドン)は迫力十分な重量級。また、密度の濃いホラー・アンソロジイ『スニーカー』(キング他)が出た。ただし、昨年は、翻訳に占めるホラーの点数は減った。

【6月】

毎年一冊づつの翻訳だが、そのたびに話題を呼ぶ『炎の眠り』(キャロル)。

【7月】

久しぶりの入門書『SFハンドブック』(早川書房編集部編)、『リプレイ』(グリムウッド)は、時間ものに新風を吹き込んだ秀作。日本国際賞を受けた人口知能の大御所ミンスキー『心の社会』は、SFファンも読む価値がある。

【8月】

ホーキングをきっかけにブームがひろがった宇宙論で、SF関係者も執筆する『宇宙論が楽しくなる本』(JICC出版)は、標題通りよくわかって楽しい内容だった。「消えた少年たち」(新潮九月号収録)を契機に、日米でその作家姿勢が問われたカードの『死者の代弁者』は、これも論議をかもす問題作。

【9月】

ディッシュの意外な一面をみせる、奇妙な味の小説『ビジネスマン』と、ノンフィクションでは、『ゲーデル、エッシャー、バッハ』で有名な、ホフスタッターの新作、『メタマジック・ゲーム』が出た。

【10月】

ヤングアダルトが書かない(あるいは、書けない)部分を詳細に描いた、冒険SF『サラマンダー殲滅』(梶尾真治)。難解な構成をもつ『黒い時計の旅』(エリクソン)は、文学側からのSFの成果といえるだろう。

【11月】

文章表現などに抜群の旨さがありながら、いま一歩詰めの迫力に欠ける『フィーヴァードリーム』(マーティン)。『ネットの中の島々』(スターリング)は、サイバーパンク作家の近未来政治小説=B最近流行の中南米ものでは、『落ちゆく女』(マーフィー)が優れている。

【12月】

グロテスクな『ドクター・アダー』(ジーター)。実に美しい世界を描く『エンジン・サマー』(クロウリー)には、70年代の哀切さえ感じられる。

 ざっと、駆け足だったが、詳細は総括で述べられるだろう。複数の作品を出した作家では、ここ2年間、年3冊のペースを守り、安定した作風の草上仁。ミルキーピア・シリーズを、3冊出した東野司。ファンタジイ大賞作家岡崎弘明の、入選作2冊が注目される。菅浩江のヤングアダルトものも、SFサイドから大きな話題を呼んだ。

1988年1月から92年3月までの書評作品全リスト
(テキストファイル版。HTMLファイルでは巨大になりすぎるため、今回からテキストファイルにしています。HTMLの場合テーブル形式の情報に無駄が多すぎるためです。テキストでは各項目はカンマ“,”で区切られます。見にくい場合は、次に示すxlsファイルをダウンロードしてExcelなどでごらん下さい)

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arcbul3a.gif (92 バイト)1988年1月から92年3月の書評リスト(Excel版)
Ie4.X等のexcelプラグインを装備したブラウザでは直接見ることができます。
それ以外ではいったんダウンロードしてください。
自動でダウンロードできない場合はマウスの右クリックで名前を付けて保存。

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