1998年SF・マイベストSF5

海外作品(順不同)
ルイス・シャイナー『グリンプス』(東京創元社)
スタニスワフ・レム『虚数』(国書刊行会)
ステーヴン・バクスター『タイム・シップ』(早川書房)
キム・スタンリー・ロビンスン『レッド・マーズ』(東京創元社)
ニール・スティーブンスン『スノウ・クラッシュ』(アスキー)

 今年の作品は結構多彩な内容だったといえる。ロビンスン、バクスターは正統的なSFであるし、スティーブンスンはサイバー・パンクの“遺産”を受け継ぐ完成度の高い作品、一方レムは名のみ高かった傑作であり、シャイナーは個人的な感傷を込めた力作といえる。その他、プレストン&チャイルド『マウント・ドラゴン』(扶桑社)や、ハリー『サイバー戦争』(二見書房)も、SFからみて収穫と見なせるだろう。

国内作品(順不同)
矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』(新潮社)
瀬名秀明『BRAIN VALLEY』(角川書店)
井上雅彦篇『悪魔の発明』(廣済堂出版)
小林恭二『カブキの日』(講談社)
宇宙塵篇『塵も積もれば 宇宙塵40年史』(出版芸術社)

 矢作、瀬名両氏の作品は既に毀誉褒貶多数の評価が出ている。とはいえ、SFサイドから見ても、十分に価値ある作品といえる。アンソロジイでは井上雅彦の一連のシリーズのうち、SFアンソロジイと銘打った『侵略』よりも、作品の内容でSF味の強い『悪魔の発明』を選んだ。アンソロジイ分野では、他に『ハンサムウーマン』(ビレッジ・センター)も収穫に数えられる。ノンフィクションでは、資料的価値が高い『塵も―』が貴重であるが、小谷真理『ファンタジーの冒険』(筑摩書房)も内容が濃い。この他ホラーでの小野不由美など話題作は多かったが、SFという観点から外れるので割愛している。

【付記】(1998/1/30)
言い訳めくが、『ハンサム・ウーマン』はSFという観点では注目作とはいえない。万人にお勧めしかねるが、『SFバカ本』が好きな人には向いていると思う。