表紙イラスト:生頼範義(以下同じ)


 6年目に入ったSFアドベンチャーは 、一転、平井和正重視路線に戻ってしまう。ウルフガイ・シリーズ(狼のレクイエム)の新作<黄金の少女>が怒涛の連載開始、毎号100枚から150枚が掲載されるようになったからだ。この年の第5回日本SF大賞は、川又千秋『幻詩狩り』である。

 チェックリスト欄は、前年と全く同様のスタイルだった。ただし筆頭の伊藤典夫評はなくなり、事実上7人体制になる。

awaybull2.gif (77 バイト)1985年1月から12月までの担当者:
awaybull2.gif (77 バイト)伊藤典夫 ・鏡明・安田均・伊藤昭・大野万紀・野村芳夫・岡本俊弥・福本直美
 62号収録のレビューは、1984年9月14日から10月31日までの17冊。この年は、大半がhtmlで読めるが、未収録の一部を新たにpdfファイルで収録した 。

 今月の注目作は、石川英輔『プロジェクト・ゼロ』、H・ビーム・パイパー『リトル・ファジー』、バリントン・J・ベイリー『禅銃』、マイクル・ビショップ『樹海伝説』である。

 『プロジェクト・ゼロ』は1988年に文庫化されている。ベイリーは新刊でも入手可能。

プロジェクト・ゼロ 石川英輔 早川書房 安田均
リトル・ファジー H・ビーム・パイパー 東京創元社 伊藤昭
禅<ゼン・ガン>銃 バリントン・J・ベイリー 早川書房 岡本俊弥
樹海伝説 マイクル・ビショップ 集英社 野村芳夫
ウィアードテールズ2 那智史朗+宮壁定雄編 国書刊行会 福本直美
紐育、宣候(ニューヨーク、ようそろ) 光瀬龍 角川書店 福本直美
怪事件が多すぎる(幻想探偵社1) 清水義範 朝日ソノラマ 大野万紀
御先祖様はアトランティス ヘンリー・カットナー 朝日ソノラマ 鏡明
暁の戦士(黄昏の戦士3) エリック・V・ラストベーダー 早川書房 伊藤昭
法王計画 クリフォード・D・シマック 早川書房 大野万紀
眠くて死にそうな勇敢な消防士 アルベルト・モラヴィア 早川書房 福本直美
悪夢喰らい 夢枕獏 角川書店 大野万紀
アニメダマ 杉山卓 集英社 安田均
竜の夏 川又千秋 徳間書店 鏡明
恋する銀河 豊田有恒+星敬編 集英社 岡本俊弥
ゴッド・プロジェクト ジョン・ソール 文藝春秋 野村芳夫
白い鹿(アイルの書1) ナンシー・スプリンガー 早川書房 鏡明


 

 新年号のため川柳大会特集。

 63号収録のレビューは、1984年10月20日から11月30日までの21冊。

 今月の注目作は、安部公房『方舟さくら丸』、ソムトウ・スチャリトクル『スターシップと俳句』。

方舟さくら丸 安部公房 新潮社 福本直美
スターシップと俳句 ソムトウ・スチャリトクル 早川書房 岡本俊弥
1985年<続ジョージ・オーウェル『1984』> ジュルジ・ダロス 柘植書房 野村芳夫
定本ラヴクラフト全集1 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 岡本俊弥
黒ナイル 畑山博 中央公論社 福本直美
ヴァンパイア戦争2 笠井潔 角川書店 安田均
アメリカ鉄仮面 アルジス・バドリス 朝日ソノラマ 大野万紀
ティモシー・アーチャーの転生 フィリップ・K・ディック サンリオ 大野万紀
脱出を待つ者 ヴォンダ・マッキンタイア サンリオ 伊藤昭
メビウスの罠(ハイスピード・ジェシー1) 斎藤英一朗 朝日ソノラマ 鏡明
闇狩り師2 夢枕獏 徳間書店 福本直美
クリスタル・シンガー アン・マキャフリイ 早川書房 鏡明
マインド・イーター 水見稜 早川書房 伊藤昭
銀河英雄伝説W 田中芳樹 徳間書店 鏡明
精霊荒野に咽きて(ビッグウォーズ枝編) 荒巻義雄 徳間書店 安田均
ウィアードテールズ3 那智史郎他編 国書刊行会 野村芳夫
コーンの孤島 バーナード・マラムッド 白水社 岡本俊弥
武装音楽祭 野阿梓 早川書房 大野万紀
メルニボネの皇子(エルリック・サーガ1) マイクル・ムアコック 早川書房 伊藤昭
断絶への航海 ジェイムズ・P・ホーガン 早川書房 野村芳夫
祖父たちの戦争 マレイ・ラインスター 早川書房 安田均


 

 この号は84年のファンジン特集。石飛卓美(星群の会)が選ばれている(次号の『ミネルヴァの森話』)。

 64号収録のレビューは1984年10月25日から2月1日までの18冊(3月の1冊、9月の1冊を含む)。

 今月の注目作は、 山口泉『旅する人びとの国』、大宮信光『SFの冒険』である。

 著者の山口泉は4年後の1989年に第1回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞する。単行本としては、この年(1984年)の『吹雪の星の子どもたち』が処女長編。


旅する人びとの国 山口泉 筑摩書房 大野万紀
SFの冒険 大宮信光 新時代社 鏡明
吹雪の星の子どもたち 山口泉 径書房 大野万紀
星からの1通話 黒井千次 講談社 伊藤昭
日本国家分断 土門周平 中央公論社 岡本俊弥
定本ラヴクラフト全集2 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 安田均
火星の大統領カーター 栗本薫 早川書房 福本直美
悪魔はぼくのペット ゼナ・ヘンダースン 朝日ソノラマ 福本直美
神獣聖戦U 山田正紀 徳間書店 福本直美
邪悪な石の戦い(信じざる者コブナント第2部) ステファン・ドナルドソン 評論社 野村芳夫
ボヤズ=ヤキンのライオン ラッセル・ホーバン 早川書房 伊藤昭
99%のトラブル(高飛びレイク番外篇1) 火浦功 早川書房 岡本俊弥
魔獣狩り(サイコダイバー3) 夢枕獏 祥伝社 岡本俊弥
英雄ヤマトタケル(ヤマトタケル4) 豊田有恒 祥伝社 野村芳夫
この世の彼方の海(エルリック・サーガ2) マイクル・ムアコック 早川書房 伊藤昭
エイリアン魔界航路 菊池秀行 朝日ソノラマ 安田均
アレフの彼方 グレゴリイ・ベンフォード 早川書房 野村芳夫
時間街への招待状 亀和田武 光風社出版 鏡明


 

 この号の目玉は、荒巻義雄・秘宝シリーズ書下ろしの分載1回目。1984年ベスト特集も掲載されている。
 

 65号収録のレビューは1984年11月30日から85年1月31日(10月分1冊を含む)までの17冊。

 今月の注目作は、 ラリー・ニーヴン『不完全な死体』、ジャック・サドゥール『現代SFの歴史』。

 (*この月、評者はお休みでレビューなし)


不完全な死体 ラリー・ニーヴン 東京創元社 安田均
現代SFの歴史 ジャック・サドゥール 早川書房 野村芳夫
恐怖の改造人間/黄金のサイボーグ ダグラス・ヒル ポプラ社 野村芳夫
現代フランス幽霊譚 ベルナール・ブラン編 白水社 安田均
ジョン・コリア奇談集U ジョン・コリア サンリオ 福本直美
奇想天外殺人事件 横田順彌 講談社 福本直美
恐竜物語 レイ・ブラッドベリ 新潮社 大野万紀
月を盗んだ少年 デイヴィス・グラップ 朝日ソノラマ 野村芳夫
アイス・ベイビー 式貴司 CBSソニー出版 福本直美
定本ラヴクラフト全集3 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 鏡明
着飾った捕食家たち ピエール・クリスタン サンリオ 鏡明
ザ・ベスト・オブ・P・K・ディックV マーク・ハースト編 サンリオ 福本直美
火吹き山の魔法使い S・ジャクソン&I・リビングストン 社会思想社 安田均
銀河郵便は愛≠運ぶ 大原まり子 徳間書店 大野万紀
時の輪舞(下) 宮原京子 あらき書店 福本直美
木星買います アイザック・アシモフ 早川書房 鏡明
星々からの歌 ノーマン・スピンラッド 早川書房 大野万紀


 


 平井、筒井、荒巻の連載があるが、この号の目玉は神林長平の中篇「今宵、銀河を盃にして」だろう。

 66号収録のレビューは1984年12月5日から85年2月28日まで(10月2冊、11月2冊)の23冊。

 今月の注目作は、 C・J・チェリイ『ダウンビロウ・ステーション』。


ダウンビロウ・ステーション C・J・チェリイ 早川書房 伊藤昭
二人だけの協奏曲 赤川次郎+横田順彌 講談社 岡本俊弥
剣闘士ボロッカスの冒険1 鈴木良武 朝日ソノラマ 福本直美
星空のむこうの国 小林弘利 集英社 伊藤昭
宇宙漂流艦スバル33(1) 志賀千代美 ほおずき書籍 野村芳夫
新西遊記アクション イズ ラブ 伊藤勝幸 島影社 岡本俊弥
スターライト☆だんでい 火浦功 集英社 大野万紀
恋すればA級少年 岬兄悟 集英社 野村芳夫
過去への電話 福島正実 旺文社 鏡明
天野喜孝画集 魔天 天野喜孝 朝日ソノラマ 野村芳夫
ミーカはミーカ・トラブル・メーカー 大原まり子 集英社 安田均
あけましておめでとう計画 野田昌宏 早川書房 福本直美
帝都物語1 荒俣宏 角川書店 大野万紀
マイクロノーツ ゴードン・ウィリアムズ サンリオ 野村芳夫
悪霊ステーション 竹河聖 朝日ソノラマ 鏡明
銀河の女戦士 C・L・ムーア 朝日ソノラマ 安田均
ウィアードテールズ4 那智史朗+宮壁定雄編 国書刊行会 安田均
世界はぼくのもの ヘンリィ・カットナー 青心社 大野万紀
魔女でもステディ(ラヴ・ペア1) 岬兄悟 早川書房 岡本俊弥
白き狼の宿命(エルリック・サーガ3) マイクル・ムアコック 早川書房 伊藤昭
闇の月(アイルの書3) ナンシー・スプリンガー 早川書房 鏡明
定本ラヴクラフト全集4 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 福本直美
森の涙 田中光二 集英社 岡本俊弥

 

 


 この号は創刊6周年記念号にあたり、オールスターキャスト13人の読みきり、川柳大会もある。つくば科学万博の年だったので、その特集もある。

 67号収録のレビューは、1985年1月15日から3月31日の15冊。

 今月の注目作は2作、アンナ・カヴァン『氷』、クリフォード・D・シマック『超越の儀式』。


アンナ・カヴァン サンリオ 岡本俊弥
超越の儀式 クリフォード・D・シマック 東京創元社 大野万紀
怒りの惑星 パオロ・ヴォルボーニ 松籟社 安田均
悪魔のパスワード 脇英世 講談社 大野万紀
宇宙大作戦 マッドの天使たち J・A・ローレンス 早川書房 鏡明
聖金剛石の秘密(ランドルフィ物語1) 清水義範 朝日ソノラマ 福本直美
ウォー・ゲーム フィリップ・K・ディック 朝日ソノラマ 野村芳夫
残酷な方程式 ロバート・シェクリー 東京創元社 鏡明
逆時間の環(神のごとき人々3) セルゲイ・スニェーゴフ 東京創元社 野村芳夫
星のフロンティア マータ・ランドル 集英社 安田均
こころほしてんとう虫 夢枕獏 集英社 野村芳夫
長岡秀星の世界 PART2 長岡秀星 日本放送協会 福本直美
サイコキネシス大戦争 PART2 豊田有恒 角川書店 岡本俊弥
魔界行(バイオニック・ソルジャー1) 菊池秀行 祥伝社 鏡明
夢織り女 ジェイン・ヨーレン 早川書房 安田均

 

 


 この号は夢枕獏の九十九乱蔵シリーズ新作長編の分載第1回目が目玉。


 68号収録のレビューは1985年3月15日から4月25日までの19冊。

 今月の注目作は3作、小松左京『首都消失』、武藤芳治『スタヴロスは染まらない』、マーヴィン・ピーク『タイタス・グローン』である。
 『首都消失』は翌年の日本SF大賞を受賞している。


首都消失 小松左京 徳間書店 岡本俊弥
スタヴロスは染まらない 武藤芳治 新潮社 福本直美
タイタス・グローン(ゴーメンガースト三部作) マーヴィン・ピーク 東京創元社 安田均
Aの霊異記 紀和鏡 講談社 伊藤昭
四・三光年の地上で 中川裕朗 河出書房新社 野村芳夫
宇宙クリケット大戦争 ダグラス・アダムス 新潮社 鏡明
定本ラヴクラフト全集6 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 大野万紀
空白のメソポタミア(空白シリーズ7) 荒巻義雄 祥伝社 岡本俊弥
魔の配剤 オスカー・クック他 朝日ソノラマ 野村芳夫
悪魔の鎮魂歌 草川隆 朝日ソノラマ 大野万紀
エイリアン妖山記 菊池秀行 朝日ソノラマ 伊藤昭
銀河は滅びず 谷甲州+松本富雄+虚青裕 新時代社 鏡明
真珠の惑星サカウィ−ナ(デュマレスト・サーガ26) E・C・タブ 東京創元社 安田均
世紀末の風景 堺屋太一 文藝春秋 福本直美
躁宇宙・箱宇宙 梶尾真治 徳間書店 鏡明
前哨 アーサー・C・クラーク 早川書房 野村芳夫
三つの魔法 ジェイン・ヨーレン 早川書房 伊藤昭
美獣 高千穂遙 集英社 福本直美
帝都物語2 荒俣宏 角川書店 大野万紀


 


 この号では、大場惑の新作中篇「天界遊戯」が掲載されている。

 

 69号収録のレビューは1985年4月15日から5月31日(1月、3月の追加各1冊)までの20冊。

 今月の注目作は4作、坂村健『電脳都市』、ロバート・シルヴァーバーグ『ヴァレンタイン卿の城』。


電脳都市 坂村健 冬樹社 野村芳夫
ヴァレンタイン卿の城 ロバート・シルヴァーバーグ 早川書房 伊藤昭
南半球の発見 レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ 創土社 大野万紀
OBLAGON シド・ミード 講談社 伊藤昭
暁の女王マイシュラ(エルリック・サーガ4) マイクル・ムアコック 早川書房 福本直美
暗殺者の惑星 マイク・レズニック 新潮社 大野万紀
ザ・ベスト・オブ・P・K・ディック4 マーク・ハースト編 サンリオ 岡本俊弥
冬の狼(アラン史略1) エリザベス・A・リン 早川書房 大野万紀
仮装巡洋艦バシリスク 谷甲州 早川書房 安田均
ウィッチクラフト・リーダー ピーター・ヘイニング編 朝日ソノラマ 鏡明
星狩人 川又千秋 講談社 野村芳夫
レッド・プラネット ロバート・A・ハインライン 東京創元社 鏡明
リモコン・パパ 岬兄悟 角川書店 鏡明
大予兆 ウィリアム・クラーク 講談社 安田均
ウィアードテールズ5 那智史朗+宮壁定雄編 国書刊行会 岡本俊弥
愛しているかいSF 新井素子他 シャピオ 福本直美
妖魔戦線 菊池秀行 光文社 岡本俊弥
俺はスーパーマン 横田順彌 実業之日本社 野村芳夫
月世界2000年 福島正実 旺文社 福本直美
時空監視官出動! マイクル・マッコーラム 早川書房 安田均


 


 この号は連載の途中が多く、特に目玉はなし。

 70号収録のレビューは1985年5月15日から6月30日までの17冊。

 今月の注目作は4作、 梶尾真治『占星王をぶっとばせ』、村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』、ダグラス・ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』、アイザック・アシモフ『アシモフ自伝II』。

 

 


占星王をぶっとばせ!(ヌークリアス・ファミリィ1) 梶尾真治 シャピオ 安田均
世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 村上春樹 新潮社 鏡明
ゲーデル、エッシャー、バッハ ダグラス・R・ホフスタッター 白揚社 大野万紀
アシモフ自伝U アイザック・アシモフ 早川書房 福本直美
たもたれた力(信ぜざる者コブナント第3部) ステファン・ドナルドスン 評論社 野村芳夫
時界を越えて 藤本泉 旺文社 安田均
幻視の文学1985 渋澤龍彦+中井英夫選 幻想文学会出版局 野村芳夫
サイオン ジョーン・D・ヴィンジ 早川書房 伊藤昭
悪夢展覧会 夢枕獏 徳間書店 野村芳夫
暗黒界の悪霊 ロバート・ブロック 朝日ソノラマ 岡本俊弥
創星記 川又千秋 早川書房 大野万紀
デューン(砂漠の異端者3) フランク・ハーバート 早川書房 岡本俊弥
魔獣館 夢枕獏 祥伝社 福本直美
巡回洗脳班 かんべむさし 中央公論社 伊藤昭
SFマガジン・セレクション1984 早川書房編集部 早川書房 伊藤昭
モダンホラーとU.S.A. 村上春樹他 北宗社 岡本俊弥
金の鳥(アイルの書5) ナンシー・スプリンガー 早川書房 鏡明


 


 この号は夢枕獏の連載完結。

 71号収録のレビューは1985年5月25日から7月15日まで(2月1冊、4月2冊の追加)の21冊。

 今月の注目作は、ジョン・ヴァーリイ『ミレニアム』、スティーヴ・ジャクソン『魔法使いの丘』(ソーサリー・シリーズ)。

 『魔法使いの丘』はゲームブック(本自体がゲームソフトと同じ構造を持っている。ゲーム機が普及するまでの、20年間さまざまなものが作られた。20世紀末までにブームは終焉)の本邦初紹介となるもの。


ミレニアム ジョン・ヴァーリイ 角川書店 岡本俊弥
魔法使いの丘(ソーサリー1) スティーヴ・ジャクソン 東京創元社 野村芳夫
トールキンとC・S・ルイス 本多英明 笠間書店 岡本俊弥
影の軍団 門田泰明 光文社 伊藤昭
鏡のなかの鏡 ミヒャエル・エンデ 岩波書店 野村芳夫
ウォー・デイ W・ストリバー+J・W・クネトカ 新潮社 福本直美
最後のポケット 眉村卓 角川書店 安田均
タイムトラベルSF傑作選 星敬編 集英社 福本直美
定本ラヴクラフト全集5 H・P・ラヴクラフト 国書刊行会 伊藤昭
冷凍の美少女 ジェラルド・カーシュ 朝日ソノラマ 大野万紀
ザ・サイキック(エクソシスト探偵特別編) 田中光二 徳間書店 鏡明
惑星封鎖命令!(メド・シップ2) マレイ・ラインスター 早川書房 鏡明
女神にグッドバイ(ラヴ・ペア2) 岬兄悟 早川書房 福本直美
シンディック C・M・コーンブルース サンリオ 大野万紀
これからの出来事 星新一編 新潮社 大野万紀
核の黙示録 A・A・グーハ 白水社 安田均
ダーティペアの大逆転(ダーティペア2) 高千穂遙 早川書房 野村芳夫
寒い国へ行きたくないスパイ 横田順彌 徳間書店 岡本俊弥
透明人間大パーティ 鮎川哲也他編 講談社 安田均
ショート・ショートの広場’85 星新一編 講談社 伊藤昭
われら顔を選ぶとき ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 鏡明


 


 この号は笠井潔の巨人伝説新作分載開始、銀河英雄伝説外伝掲載など。
 

 72号収録のレビューは、1985年6月28日から8月31日までの計19冊。

 今月の注目作は3作、平井和正『真幻魔大戦15』、山田正紀『顔のない神々』、日本SF年鑑編集委員会『日本SF年鑑85』である。

 


真幻魔大戦15 平井和正 徳間書店 鏡明
顔のない神々 山田正紀 角川書店 伊藤昭
日本SF年鑑’85 日本SF年鑑編集委員会 新時代社 安田均
小鼠油田を掘り当てる レナード・ウィバーリー 東京創元社 大野万紀
ウルフ対談 平井和正 徳間書店 福本直美
ショート・ショートの広場 星新一編 講談社 岡本俊弥
怪物が街にやってくる 今野敏 泰流社 野村芳夫
お前が悪い! 火浦功 角川書店 伊藤昭
オデッセイ・ファイル アーサー・C・クラーク&ピーター・ハイアムズ パーソナル・メディアKK 岡本俊弥
一発!(ショート・ショート・バラエティ1) 川又千秋 角川書店 野村芳夫
夜明けのロボット アイザック・アシモフ 早川書房 伊藤昭
シルクロードの秘宝(秘宝シリーズ3) 荒巻義雄 徳間書店 福本直美
妖獣都市 菊池秀行 徳間書店 野村芳夫
魔法の迷宮 フィリップ・ホセ・ファーマー 早川書房 鏡明
魔界の盗賊 マイクル・シェイ 早川書房 野村芳夫
テレポートされざる者 フィリップ・K・ディック サンリオ 岡本俊弥
黄金の空隙 清水義範 シャピオ 大野万紀
半獣神 夢枕獏 光風社出版 大野万紀
切り裂き街のジャック 菊池秀行 早川書房 福本直美


 


 この号は山田正紀「神獣戦線」新作中篇など。

 

 73号収録のレビューは1985年7月15日から9月15日まで(6月1冊追加)の21冊。

 今月の注目作は3作、荒巻義雄『空白の大涅槃』、パトリック・パリンダー『稼動する白昼夢』、マイクル・ムアコック『ストームブリンガー』。

 ムアコックのエルリック・サーガは2006年に合本のかたちで再刊されている。

 


空白の大涅槃(空白シリーズ8) 荒巻義雄 徳間書店 岡本俊弥
SF・稼動する白昼夢 パトリック・パリンダー 勁草書房 鏡明
ストーム・ブリンガー(エルリック・サーガ6) マイクル・ムアコック 早川書房 福本直美
初恋物語 森村誠一 角川書店 伊藤昭
幻術師ダンカン(大魔界外伝1) 田中文雄 早川書房 福本直美
魔界行U 菊池秀行 祥伝社 鏡明
クトゥルーY 幻妖の創造 H・P・ラヴクラフト他 青心社 安田均
銀河乞食軍団(外伝1) 野田昌宏 早川書房 大野万紀
真夜中の黒ミサ 恐怖の一世紀1 デニス・ホイートリー選 朝日ソノラマ 野村芳夫
ゴルフ奇譚集 ジャン・レイ 白水社 野村芳夫
死霊の町 藤本泉 角川書店 鏡明
腹鼓記 井上ひさし 新潮社 福本直美
海と少女 ピーター・ベンチリー 晶文社 野村芳夫
夜の声 W・H・ホジスン 東京創元社 岡本俊弥
スライナック パトリシア・ウインザー 晶文社 大野万紀
魔法の通廊(魔法の国ザンス4) ピアズ・アンソニイ 早川書房 伊藤昭
ロシュワールド ロバート・L・フォワード 早川書房 岡本俊弥
造物主の掟 ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社 野村芳夫
太陽の汗 神林長平 光文社 安田均
妖魔陣 菊地秀行 光文社 安田均
怒りのヘリック(ヘリック3) 田中光二 光文社 大野万紀

 1985年全般については、1985年の4月号に総括記事が書かれている。執筆者は、国内が 野村芳夫、翻訳が福本直美で、評者全員の推薦作から下記作品が選ばれている (アドベンチャーのベストは発行年月日1月〜12月で区分けを行うため、概ねその年の2月に出る4月号から翌年1月に出る3月号までが選考範囲となる)。

 同号掲載の評者による総括は下記の通り。

 一言で言えば、周辺分野の充実した年だった。小説外が、三割近くを占めた。評者個人のベストも、最終的に選ばれたベストも大差がないので、一般論としても、この感想はそれほど間違っていないはずだ。ノンフィクションは、どれもが厳密にはSF外である。しかし、SFというジャンルがなければ出てこなかったろうし、そういう発想がない時代なら、受け入れられなかったろう。選ぶ意義は、そこにある。

 もう一点、(国内、翻訳を問わず)シリーズが多いのは近年の流行としても、短編集の傑作が異例に多かった。既に、総括などで指摘があることだろう。最近特に感じることなのだが、現時点でのSFのもっとも完成した部分は、実は中短編にあるのではないか。第一に、技法が完成している点。市場が今でも続いており、積み重ねがある。手垢が付いて、今や神々しい光沢が増したアイデアを、破綻なく、しかも小説としてまとめるには、この程度の長さが一番適している。おかしな比べかただが、昨年の短編集は、同じ長さの長編を明らかに凌いでいた。ただし、そうであっても、時代は内情とは連動しない。ノウハウに乏しい(長い!)長編が求められる。シリーズであればなお良い。だから、中身が間延びするのは、あまりに当然すぎる結果だ。たとえば、チェリイの『ダウンビロウ・ステーション』は、後半息が続かなくなっている。八〇年代期待の新鋭、ブリンの『スタータイド・ライジング』でも、中身以上に、技法的な問題を感じる。

 昨年の総括で述べた多様化は、ますます進行している。ベストの選出でも、その傾向が反映されている。まだ、同じ状態が続くはずである。だが、意外に早い時期に本格指向の復活があるかも知れない。
 

1982-86年のSFアドベンチャー収録書評リスト(Excel版)