
カバーイラスト:飯田研人
カバーデザイン:坂野公一(well design)
著者は1947年生まれの米国作家。十数冊の著作を出しているが、宗教テーマが多いためか日本では中短編2作の紹介があるだけだった。本書はそのうちの中編(ノヴェラ)で、SFマガジン2011年3~5月号に連載されたものを、改訳単行本化したもの(アメリカでも単行本になっている)。2010年のスタージョン記念賞を受賞している。
1945年、ドイツは降伏し日本も劣勢に立たされていた。しかし、その頃でもハリウッドではB級ホラー映画の制作は続いている。そこで活躍する怪物役の名優に、なぜかアメリカ海軍から極秘作戦へのオファーがかかる。モハーヴェ砂漠の奥にある秘密基地で生物兵器が開発されているが、実戦に使うにはあまりに危険すぎたため、ミニチュアと着ぐるみを使ったデモンストレーションで日本を降伏に追い込むというのだ。もちろん、着ぐるみに入るのはその名優だった。
まるでネタのようなアイデアだ。本書はそれをコメディを交えながら、いかにもリアルに描き出す。特撮で敵を屈服させることにも理屈が付けられ、その結果起こる事態に不思議な説得力が生まれる。軽快な並行世界もののようでいて、やがて重い現実に収斂していく。本書の場合は2つの読みどころがあるだろう。1つは40年代のB級ホラーもの、戦後のホラーや日本を含む怪獣映画への深いオマージュ、もう1つは終幕を占める主人公のヒロシマに対する贖罪の思い。
遺書を書く導入部も結構深刻なはずなのだが、諧謔を交えた語りによってそうは感じさせない。巧みにありえない物語の中へと誘い込まれる。
- 『怪獣保護協会』評者のレビュー