ジーン・シェパード(1921~99)の初単行本となる。原著2冊から抜粋した日本オリジナル版。著者はラジオのパーソナリティや映画 A Christmas Story(1983)の原作者/脚本家としてアメリカでは有名なマルチタレントで、一方、スリック雑誌に掲載されるユーモア小説の書き手でも知られていた。本書に含まれる「スカット・ファーカスと魔性のマライア」は、ソフトなユーモア小説を好んだ浅倉久志の訳になる(もともと、新版《異色作家短篇集》の若島正編『狼の一族』に収録)。
ところで、シェパードとSFとは関係がある。ラジオ番組中に話した架空の本Frederick R. Ewing 作 I, Libertine,1956(存在しないのに注文が殺到し、ベストセラーになったため急遽出版された) をゴーストライトしたのがシオドア・スタージョン(共著扱い)だったのだ。スタージョンは他にエラリイ・クイーン『盤面の敵』(1963)のゴーストライトもしていて(やむを得なかったのだろうけれど)そこそこは稼げたのかもしれない。