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第3短編集『猫の王』kindle版、POD版ともに発売中です!! 2020年7月24日発売。上記FREE PREVIEWには対応しておりませんが、BUY ON AMAZONをクリックすると、ページの試し読みをすることができます。

本誌読者必読は、『絶景本棚2』にも出てくる水鏡子師匠の書庫をモデルに蒐書(小野田雅久仁『本にだって雄と雌があります』とは正反対の)の恐ろしい末路を描く「匣」か。SF的にはテッド・チャン風のダークなアイデアストーリー「決定論」がイチ押し。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2020年10月号

集中一番の長い作品である「死の遊戯 Game of Death」。…(中略)…最初の短編集『機械の精神分析医』収録のリアリズム思考の短編に較べ、こちらは相当に謎めいている上、「ぼく」による「診断」が下された後でも、VR世界は続いていくのだ。現代SFのエッジを捉えた作品になっていると思える力作。

津田文夫「続・サンタロガ・バリア」THATTA ONLINE 387号

とくに印象に残ったのは「決定論」。 自由意思のありかをさぐる実験が、レム『天の声』のような状況へ結びつく。テッド・チャン的テーマを、50年代SFの手法で――ややテクノロジカル・フィクション風に――書いたといえばよいか。

牧眞司(twitterより

作品の特色は…(中略)…ちょうどグレッグ・イーガンやテッド・チャンなど、現代の最先端の作家の作品に見られるように、現実と仮想、人間の意識とその見る世界とが、相互にずれ合い、重なり合い、干渉し合う、そんなデジタルな時代のランドスケープを描いていくところにあるといえるだろう。

大野万紀(本文解説より)

『機械の精神分析医』『二〇三八年から来た兵士』に続く第3短編集です。今回は、心の奥底に潜む獣性や、誰も感じ取れず見ることもできない檻を描く9つの作品を収めました。

 われわれはふだん文明人で理性的だと思っています。けれど、怒りに駆られたとき、理性は簡単にかなぐり捨てられ、破壊や殺戮に熱狂することもある。どちらが本性なのでしょうか。

 本書で描かれる中身はさまざま。猫などケダモノの姿をしていたり肉食獣の本能だったり、あるいは操り人形の糸、モノに憑依した意思だったりします。既存短編集より少し長めの作品を集めています。
 《機械の精神分析医シリーズ》最新中編も収録!

「猫の王」公園で拾った猫の子は、みるみる大きく育ち、不思議な現象を起こすようになる。「円周率」男は人体を使うDNAメモリの臨床実験に参加する。そのメモリには円周率が書き込んであるらしい。「狩り」小学校時代から気になる女の子たちには、ある共通する特徴があった。「血の味」インドの合成生物学研究所が開発した合成肉には、誰もが惹きつけられる深い旨味があった。「匣」巨大な書庫の持ち主が行方不明になる。調査に訪れた市役所職員たちが見た恐るべきものとは。「決定論」何もかもがあらかじめ決定されているとする社会で、根本を揺るがす重大な発見がなされる。「罠」あたりまえの日常を送る主人公は、朝の通勤途上「見えない壁」に行方を阻まれる。「時の養成所」荒涼とした谷間に、ヒト族のための養成所が設けられている。そこでは専門の指導者たちが特殊官僚を訓練していた。「死の遊戯」失業したプロのゲームアスリートが、謎めいたゲームにリクルートされる。聞いたこともないゲームシステムだった。
解説(大野万紀)

こちらで販売中です

第2短編集『二〇三八年から来た兵士』kindle版、POD版ともに発売中です!!
(2020年1月24日に発売されました。 上記PREVIEWボタンは未対応ですが、表題作を無料公開しています。こちらでお読みください

巻頭の表題作は戦争下にある別の世界の日本から兵士が地下鉄の駅に出現し・・・、兵士がいた世界がどんなところだったかと云うことと、結末の兵士の言葉からこの短編集に収録された作品のいくつかに共通する「死」の世界が浮き上がる。

津田文夫「続・サンタロガ・バリア」THATTA ONLINE 381号

ガリ版の翻訳SF同人誌をつくっていた頃を改変歴史SF化した「流れついたガラス」があまりにも懐かしい。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2020年4月号

『機械の精神分析医』に続く第二短編集です。前作がAIをテーマとしたのに対して、今回は主に「異世界」が描かれます。

 異世界というと、最近はなろう系などの異世界ファンタジイが主流なのですが、本書の中ではもっと身近なお隣の世界が舞台となっています。ディストピアとも、ユートピアともいえるもう一つの現実です。

 現在と、ほんのちょっとだけ違っている世界、社会的なルールが変わっていたり、起こるはずだった事件が起きなかったり、もっと早く起こった世界、とてつもない天災が起こった世界などなど、ショートショートから中編クラスまで、大小十作品を収めています。

 内容的には、並行世界もの(われわれがよく知っているはずの世界なのに、この世界と大きな差異がある。例えば、ある天災が起こる時期が異なる)、改変歴史もの(過去に起こった重要な史実が異なっている。例えば、第二次世界大戦が起こらなかった)といった分類ができるものや、ホラー(ロジカルな説明ができない、怪談めいたもの)、アフター・デザスター/ポスト・アポカリプス(大災害で破滅した世界のその後を描くもの)まで幅広く集めてみました。

 「二〇三八年から来た兵士」混雑する都会の地下鉄に出現した老人は、自らを日本共和国の兵士だと自称する。「渦」微生物量産化に取り組む、ベンチャー企業の開発者が気づく恐るべき暗合。「汽笛」遠くの工場から聞こえる蒸気機関車の響きは、少年たちの想像をかきたてる。「水面」屋根のはるか上で揺らめく、水面の意味する異変とは。「ザ・ウォール」ある日出現した壁は、日本全土を壊滅させ、残った人々の生活をも激変させる。「五億年ピクニック」夜のオフィスで受けた怪しい電話は、火星にある不動産の勧誘だった。「消滅点」N県上空に出現した電磁嵐のただなかで、家族を探す主人公の見たもの。「梅田一丁目明石家書店の幽霊」かつて梅田一丁目にあった書店には幽霊が出現するといううわさがあった。「流れついたガラス」大学新入生の少年は初めて小説を翻訳する。その間に、不穏な一年間の記憶がよみがえる。「あらかじめ定められた死」もし人間の寿命があらかじめ通知され、誰もが知ることができるとしたら。

こちらで販売中です

第1短編集『機械の精神分析医』kindle版、POD版ともに発売中です!!
(2019年7月7日に発売されました。上記PREVIEWボタンは未対応ですが、表題作を無料公開しています。こちらでお読みください

たまにこういうきちんとした文章構成アイデアの短編群をまとめて読むと少し居住いを正そうという気にもなる。本人も指摘するよう『機械の精神分析医 』の、一見藤井太洋を連想させる雰囲気が、小品指向の作品評価を下げる面がある。これはむしろ企業の中間管理者を軸に据えた「インサイダーSF」、60年代眉村卓短編のアップデートと見るべきで…(中略)…意外と師弟的影響が強かったんだと思ったりしている。

水鏡子「みだれめも」THATTA ONLINE 386号

リアルな設定と技術者的視点、ひねりの利いたオチが特徴で、藤井太洋の近未来ものと近いテイスト。連作外では、市役所の職員が急な海外出張をきっかけに猛スピードで出世しはじめる「マカオ」や…(中略)… 物語を構成する“登場人物”の求人が生まれる「人事課長の死」が秀逸。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2019年9月号

 シンギュラリティは来ないかもしれません。人間を凌駕する人工知能なんて、すぐには現れないでしょう、おそらくは。ただ、それでもAI=人工知能がわれわれの生活に浸透してくるのは、間違いありません。スマホやテレビどころか、ボルトの中にまで入ってくる! よく聞く5Gは、そんな社会を生み出します。

 本書の中では、AIは単に「機械」と呼ばれています。 もはや当たり前の存在、どこにでもある機械は、さまざまなトラブルを引き起こします。工業製品の場合、トラブル=故障は交換して終わりというわけにはいきません。誰かが、その原因を突き止め、対策を打たなければいけないからです。しかし、どこでもとなると、ロボット心理学者スーザン・キャルヴィン博士のような高給取りは使えません。低コストの一般技術者が、対応することになるでしょう。本書の《機械の精神分析医》は、そんな連作です。

 この本の中では、そういった明日の「機械と人」のお話が収められています。リアルなものから幻想的なものまで、十作品を取り揃えています。極近未来という舞台設定は、最近吉川英治文学新人賞を受賞した藤井太洋さんとも共通しますが、ここに描かれたものは、もう少しシニカルな明日かもしれません。

 無人攻撃機の中に潜む思いがけない映像の正体「機械の精神分析医」、スーパーコンピュータから聞こえてくる何ものかの声「機械か人か」、新規採用予定の幹部候補ははたして人間なのか「にせもの」、空中バスの衝突事故に関わる過去の事例「衝突」、かつて親友だったベンチャー社主からの依頼「シュムー」。田舎都市を巻き込んだカジノ騒動の顛末「マカオ」、やり手課長に降りかかる過酷な運命「人事課長の死」、人間の感情を操る人形との会話「ノンバルとの会話」、神戸にそびえる摩天楼から届く招待状「魔天楼2.0」、亡くなった父親の遺品から見つかる意外な生涯記録「ビブリオグラフィ」を収めます。

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