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 第5短編集『豚の絶滅と復活について』kindle版、POD版ともに予約中です!! 2021年9月18日より発売。POD版では試し読みをすることができます。

まず感じるのは著者の文体の冷静さであろう。著者の作品は基本的に科学技術にかかわってストーリーが構成されるいわゆるSFの最たるものであるが、その叙述法は科学技術/SF的アイデアの核はさまざまなものがありながら、ストーリーの語り口に一定の冷静さが常にある。それは最終的に物語の話者が狂気に侵されるような作品でも変わらない。(中略)そして短編SFとしてその結末がもたらす印象は、サタイア/風刺的なものと不気味なもの/ホラーへの傾斜であろう。もちろんそれだけでは語れない作品も多数あるが、サタイアや不気味な風景を感じさせることは短編SFの得意とするところなのである。

 津田文夫(本書解説より)

 岡本俊弥の第5短編集です。今回のテーマは「さまざまなお仕事」です。

 世の中には「お仕事小説」と呼べる分野があります。よそ者にはうかがい知れない、職業特有の蘊蓄が詰まっているので、舞台裏をのぞき見しているような楽しみ方があります。ただし、中には見てはいけないものもある。本書では、そんな「危ないお仕事」を集めてみました。少しブラックで、どこか怪しいエピソードが11の中短編に詰まっています。

 「倫理委員会」では、それって人間がやる仕事なのと、友人から呆れられるお仕事が出てきます。「ミシン」とは、深刻な事故を防ぐために提案された特殊療法です。「うそつき」誰もがパートナーに頼り切る時代、うそじゃないと釈明する広報係の言い分。「フィラー」外見が似ていなくても、俳優になりきれるお仕事があるとしたらどうでしょう。「自称作家」さっぱり売れない自称作家が、契約をしたとたん信じられないことが起こります。「円環」一人の男が友人と、一生について語り合います。「豚の絶滅と復活について」とても特殊な環境にある国立養豚場、勤める飼育係は苦労が絶えません。「チャーム」周囲に影響を及ぼす特殊能力チャームの力をつきつめていくと。「見知らぬ顔」弁護士の依頼により分析した入国管理局のデータには、隠された秘密がありました。「ブリーダー」暇を持て余し、アプリ動物を育てる実験に参加した男が気がつくこととは。「秘密都市」あるインタビューによって、陰謀めいた恐るべき真実が明らかになります。解説(津田文夫)

第4短編集『千の夢』kindle版、POD版ともに発売中です!! 2021年2月24日より発売。POD版では試し読みをすることができます。

筒井康隆「鍵」を古いPCに置き換えたような戦慄の電子ホラー「見えないファイル」、ディープステート的な陰謀論を信じる部下の人事考課に女性上司が悩む「陰謀論」が印象に残った。

大森望「新刊めったくったガイド」本の雑誌 2021年4月号

水鏡子解説が云うところの「岡本地獄」というのが、作品の形としてホラーを成立させているということなんだろうと思われるけれど、(中略)岡本さんのホラーは人を怖がらせることを目的としていないように見える。SFとしてのアイデアと妙に落ち着いた叙述が、恐怖小説としては一種の遅延装置になっているんじゃないでしょうか。

津田文夫「続・サンタロガ・バリア」THATTA ONLINE 394号

地獄という言いかたは極端だと思うが、確かに岡本作品には不安や不条理が垂れこめる。感触としてはフィリップ・K・ディックのニューロティックな短篇に近い。だが、ディックのような強迫観念ではなく、正気のままに立ちすくむ感じだ。(中略)ビジネスのディテールはきわめてリアリティがある。そのいっぽうで、人間関係はかなり希薄で、それが全体の不条理感につながっている。

牧眞司(【今週はこれを読め! SF編】)

“ステラ”と呼ばれるストーリーテリング・デバイスに会社の命運が託される表題作「千の夢」を皮切りに、会社の“生態”を熟知した視点からでしか描き得ない物語が並ぶ。米大統領選直前の2020年9月初出の「陰謀論」は、タイムリーな題材を企業社会に組み込んで提示している。

VG+編集部(2021年2月23日記事より)

どの作品においても、主人公たちがまわりの環境や立場に振り回され、あがきながら、なんとか切り抜けようとするさまは、たしかに、小生も経験したことがある、あの時あの場面での、自分の感情を見事に写し取っている、ということを、実感できるのです。(中略)これまでの作品集では、どちらかと言えば、未知なるものへの知的な好奇心(や恐怖心)が刺激されることが多かったと思いますが、そういう知識欲望充足的な読書体験ではなく、内発的な共鳴共振の愉しみのほうが、本書では勝っているように感じました。 

服部誕(詩人)

研究開発だったり、テレワークだったり、セキュリティ、あるいはグローバリズムだったり、内容は多岐に渡り、作品間のつながりもない。発表時期もばらばらである。にもかかわらず異様なまでに「集」として収束し、まとまりがある。著者の「会社」に対する思いのたけが重くのしかかってくるようで、個人的には(既存の短編集)四冊の中でいちばん高く評価している。

水鏡子(本書解説より)

『機械の精神分析医』『二〇三八年から来た兵士』『猫の王』に続く第4短編集です。今回のテーマは「会社」です。

 日本人の9割近くが(規模はさまざまですが)何らかの会社や団体に雇われているといわれています。その中では独自の法律(社内規則)と身分制(社長とか部長とかの職階)が定められていて、従わなければ追放(解雇)されます。似ているようでいて、外国かと思うほどルールは会社ごとに異なります。おかしな上司や部下との関係で、トラブルに見舞われている人も多いでしょう。本書では、そんな会社の中で起こる、少し不思議なできごとが12作の短編で描かれています。

「千の夢」起死回生を狙う新商品ステラは、共感覚センサーによる「幸せ」を売るものだった。「呪い」画期的な発明を産むはずの研究所からは、何とも怪しいものばかりが出てくる。そこに、ありえない転機が訪れる。「瞳のなか」重大な決断を迫られるときどきに、一人の女が現われ男に核心を突くアドバイスを授ける。「遷移」ストレスに満ちたある職場で、登場人物の周囲が次々と入れ替わっていく。「同僚」地方のインフラを集約した中核市で、一人の男と同僚の女が何気ない会話をする。「シルクール」見知らぬ国の製品が主人公の前に現われる。それは次々と姿を変え、やがて世間を騒がす現実になる。「瞑想」社内SNSでの誹謗中傷を見つけたあと、主人公は法衣を着たコンサルタントのカウンセリングを受ける。「抗老夢」無駄な生を生きる意味があるのか、一人の科学者の提言はさまざまな波紋を広げていく。「見えないファイル」ジャンク屋で見つけたパソコンから、男が隠したはずの過去が湧き出してくる。「ファクトリー」謎のライバル会社の実態を探るため、現地に乗り込んだ主人公は、たらい回しにされたあげく意外な場所にたどり着く。「侵襲性」VR式のトレーニングジムに通ううちに、男は仮想コースの魅惑に取り憑かれてしまう。「陰謀論」主人公は若い管理職だったが、部下のベテラン社員から予想外の相談を受けることになる。解説(水鏡子)

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第3短編集『猫の王』kindle版、POD版ともに発売中です!! 2020年7月24日発売。上記FREE PREVIEWには対応しておりませんが、BUY ON AMAZONをクリックすると、ページの試し読みをすることができます。

本誌読者必読は、『絶景本棚2』にも出てくる水鏡子師匠の書庫をモデルに蒐書(小野田雅久仁『本にだって雄と雌があります』とは正反対の)の恐ろしい末路を描く「匣」か。SF的にはテッド・チャン風のダークなアイデアストーリー「決定論」がイチ押し。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2020年10月号

集中一番の長い作品である「死の遊戯 Game of Death」。…(中略)…最初の短編集『機械の精神分析医』収録のリアリズム思考の短編に較べ、こちらは相当に謎めいている上、「ぼく」による「診断」が下された後でも、VR世界は続いていくのだ。現代SFのエッジを捉えた作品になっていると思える力作。

津田文夫「続・サンタロガ・バリア」THATTA ONLINE 387号

とくに印象に残ったのは「決定論」。 自由意思のありかをさぐる実験が、レム『天の声』のような状況へ結びつく。テッド・チャン的テーマを、50年代SFの手法で――ややテクノロジカル・フィクション風に――書いたといえばよいか。

牧眞司(twitterより

作品の特色は…(中略)…ちょうどグレッグ・イーガンやテッド・チャンなど、現代の最先端の作家の作品に見られるように、現実と仮想、人間の意識とその見る世界とが、相互にずれ合い、重なり合い、干渉し合う、そんなデジタルな時代のランドスケープを描いていくところにあるといえるだろう。

大野万紀(本文解説より)

『機械の精神分析医』『二〇三八年から来た兵士』に続く第3短編集です。今回は、心の奥底に潜む獣性や、誰も感じ取れず見ることもできない檻を描く9つの作品を収めました。

 われわれはふだん文明人で理性的だと思っています。けれど、怒りに駆られたとき、理性は簡単にかなぐり捨てられ、破壊や殺戮に熱狂することもある。どちらが本性なのでしょうか。

 本書で描かれる中身はさまざま。猫などケダモノの姿をしていたり肉食獣の本能だったり、あるいは操り人形の糸、モノに憑依した意思だったりします。既存短編集より少し長めの作品を集めています。
 《機械の精神分析医シリーズ》最新中編も収録!

「猫の王」公園で拾った猫の子は、みるみる大きく育ち、不思議な現象を起こすようになる。「円周率」男は人体を使うDNAメモリの臨床実験に参加する。そのメモリには円周率が書き込んであるらしい。「狩り」小学校時代から気になる女の子たちには、ある共通する特徴があった。「血の味」インドの合成生物学研究所が開発した合成肉には、誰もが惹きつけられる深い旨味があった。「匣」巨大な書庫の持ち主が行方不明になる。調査に訪れた市役所職員たちが見た恐るべきものとは。「決定論」何もかもがあらかじめ決定されているとする社会で、根本を揺るがす重大な発見がなされる。「罠」あたりまえの日常を送る主人公は、朝の通勤途上「見えない壁」に行方を阻まれる。「時の養成所」荒涼とした谷間に、ヒト族のための養成所が設けられている。そこでは専門の指導者たちが特殊官僚を訓練していた。「死の遊戯」失業したプロのゲームアスリートが、謎めいたゲームにリクルートされる。聞いたこともないゲームシステムだった。
解説(大野万紀)

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第2短編集『二〇三八年から来た兵士』kindle版、POD版ともに発売中です!!
(2020年1月24日に発売されました。 上記PREVIEWボタンは未対応ですが、表題作を無料公開しています。こちらでお読みください

巻頭の表題作は戦争下にある別の世界の日本から兵士が地下鉄の駅に出現し・・・、兵士がいた世界がどんなところだったかと云うことと、結末の兵士の言葉からこの短編集に収録された作品のいくつかに共通する「死」の世界が浮き上がる。

津田文夫「続・サンタロガ・バリア」THATTA ONLINE 381号

ガリ版の翻訳SF同人誌をつくっていた頃を改変歴史SF化した「流れついたガラス」があまりにも懐かしい。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2020年4月号

『機械の精神分析医』に続く第二短編集です。前作がAIをテーマとしたのに対して、今回は主に「異世界」が描かれます。

 異世界というと、最近はなろう系などの異世界ファンタジイが主流なのですが、本書の中ではもっと身近なお隣の世界が舞台となっています。ディストピアとも、ユートピアともいえるもう一つの現実です。

 現在と、ほんのちょっとだけ違っている世界、社会的なルールが変わっていたり、起こるはずだった事件が起きなかったり、もっと早く起こった世界、とてつもない天災が起こった世界などなど、ショートショートから中編クラスまで、大小十作品を収めています。

 内容的には、並行世界もの(われわれがよく知っているはずの世界なのに、この世界と大きな差異がある。例えば、ある天災が起こる時期が異なる)、改変歴史もの(過去に起こった重要な史実が異なっている。例えば、第二次世界大戦が起こらなかった)といった分類ができるものや、ホラー(ロジカルな説明ができない、怪談めいたもの)、アフター・デザスター/ポスト・アポカリプス(大災害で破滅した世界のその後を描くもの)まで幅広く集めてみました。

 「二〇三八年から来た兵士」混雑する都会の地下鉄に出現した老人は、自らを日本共和国の兵士だと自称する。「渦」微生物量産化に取り組む、ベンチャー企業の開発者が気づく恐るべき暗合。「汽笛」遠くの工場から聞こえる蒸気機関車の響きは、少年たちの想像をかきたてる。「水面」屋根のはるか上で揺らめく、水面の意味する異変とは。「ザ・ウォール」ある日出現した壁は、日本全土を壊滅させ、残った人々の生活をも激変させる。「五億年ピクニック」夜のオフィスで受けた怪しい電話は、火星にある不動産の勧誘だった。「消滅点」N県上空に出現した電磁嵐のただなかで、家族を探す主人公の見たもの。「梅田一丁目明石家書店の幽霊」かつて梅田一丁目にあった書店には幽霊が出現するといううわさがあった。「流れついたガラス」大学新入生の少年は初めて小説を翻訳する。その間に、不穏な一年間の記憶がよみがえる。「あらかじめ定められた死」もし人間の寿命があらかじめ通知され、誰もが知ることができるとしたら。

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第1短編集『機械の精神分析医』kindle版、POD版ともに発売中です!!
(2019年7月7日に発売されました。上記PREVIEWボタンは未対応ですが、表題作を無料公開しています。こちらでお読みください

たまにこういうきちんとした文章構成アイデアの短編群をまとめて読むと少し居住いを正そうという気にもなる。本人も指摘するよう『機械の精神分析医 』の、一見藤井太洋を連想させる雰囲気が、小品指向の作品評価を下げる面がある。これはむしろ企業の中間管理者を軸に据えた「インサイダーSF」、60年代眉村卓短編のアップデートと見るべきで…(中略)…意外と師弟的影響が強かったんだと思ったりしている。

水鏡子「みだれめも」THATTA ONLINE 386号

リアルな設定と技術者的視点、ひねりの利いたオチが特徴で、藤井太洋の近未来ものと近いテイスト。連作外では、市役所の職員が急な海外出張をきっかけに猛スピードで出世しはじめる「マカオ」や…(中略)… 物語を構成する“登場人物”の求人が生まれる「人事課長の死」が秀逸。

大森望「新刊めったくたガイド」本の雑誌2019年9月号

 シンギュラリティは来ないかもしれません。人間を凌駕する人工知能なんて、すぐには現れないでしょう、おそらくは。ただ、それでもAI=人工知能がわれわれの生活に浸透してくるのは、間違いありません。スマホやテレビどころか、ボルトの中にまで入ってくる! よく聞く5Gは、そんな社会を生み出します。

 本書の中では、AIは単に「機械」と呼ばれています。 もはや当たり前の存在、どこにでもある機械は、さまざまなトラブルを引き起こします。工業製品の場合、トラブル=故障は交換して終わりというわけにはいきません。誰かが、その原因を突き止め、対策を打たなければいけないからです。しかし、どこでもとなると、ロボット心理学者スーザン・キャルヴィン博士のような高給取りは使えません。低コストの一般技術者が、対応することになるでしょう。本書の《機械の精神分析医》は、そんな連作です。

 この本の中では、そういった明日の「機械と人」のお話が収められています。リアルなものから幻想的なものまで、十作品を取り揃えています。極近未来という舞台設定は、最近吉川英治文学新人賞を受賞した藤井太洋さんとも共通しますが、ここに描かれたものは、もう少しシニカルな明日かもしれません。

 無人攻撃機の中に潜む思いがけない映像の正体「機械の精神分析医」、スーパーコンピュータから聞こえてくる何ものかの声「機械か人か」、新規採用予定の幹部候補ははたして人間なのか「にせもの」、空中バスの衝突事故に関わる過去の事例「衝突」、かつて親友だったベンチャー社主からの依頼「シュムー」。田舎都市を巻き込んだカジノ騒動の顛末「マカオ」、やり手課長に降りかかる過酷な運命「人事課長の死」、人間の感情を操る人形との会話「ノンバルとの会話」、神戸にそびえる摩天楼から届く招待状「魔天楼2.0」、亡くなった父親の遺品から見つかる意外な生涯記録「ビブリオグラフィ」を収めます。

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