表紙イラスト:生頼範義(以下同じ)


 1981年7月にSF宝石からSFアドベンチャーに移って2年目、1982年に書評のスタイルが変わる。
 この年から、これまでの3段組1段のみの小さな書評欄だけでなく、見開き2ページ(後には1ページ)の注目作欄が登場、これまでになく内容が充実した。そのかわり、月々の書評点数は減少し、従来の網羅的な書評から、厳選の方向へと方針が変わったのである。
 ただし、この書評点数は年々拡大し、評者の拡大を孕んでいく。

awaybull2.gif (77 バイト)1982年1月から1982年12月までの担当者:
awaybull2.gif (77 バイト)伊藤典夫 ・鏡明・安田均・伊藤昭・大野万紀・野村芳夫・岡本俊弥
 
 26号収録のレビューは、1981年10月15日から11月10日までの18冊(『傾いた地平線』のみ9月30日)。この年もワープロ、パソコン以前の時代であるため、岡本分のみpdfファイルで収録した。

 今月の注目作(特選作と記載)は、筒井康隆『エロチック街道』とジョアナ・ラス『フィーメール・マン』である。
 注目作では、各担当者の短評が掲載されていた(初期の数ヶ月のみ)。『エロチック街道』の評者短評は、
 「『虚人たち』に至る技巧と実験の集大成。新しい段階に入った著者の全貌が窺える」

エロチック街道 筒井康隆 新潮社 伊藤典夫
フィメール・マン ジョアナ・ラス サンリオ 岡本俊弥
傾いた地平線 眉村卓 角川書店 岡本俊弥
タイムストーム G・R・ディクスン 講談社 伊藤昭
去りにし日々、今ひとたびの幻 ボブ・ショウ サンリオ 伊藤昭
はざまの世界 ノーマン・スピンラッド サンリオ 野村芳夫
瞑想者の肖像 岬兄悟 早川書房 鏡明
暗夜 BLACK FILELD 橋本治 北宋社 野村芳夫
大宇宙の探求者 E・E・スミス 東京創元社 鏡明
対馬沖ソ連艦に突入せよ 川又千秋 祥伝社 安田均
創世記機械 ジェームズ・P・ホーガン 東京創元社 鏡明
狐と踊れ 神林長平 早川書房 安田均
タイムマシン惑星 石原藤夫 早川書房 安田均
風の竪琴弾き パトリシア・マキリップ 早川書房 伊藤昭
あやつり心中 小松左京 徳間書店 岡本俊弥
怪奇日蝕 式貴士 CBSソニー出版 野村芳夫
魔界の剣闘士 清水義範 双葉社 野村芳夫
幻獣変化 夢枕獏 双葉社 伊藤昭



 第2回日本SF大賞(井上ひさし『吉里吉里人』)特集。
 27号収録のレビューは、1981年10月31日から11月30日までの18冊 。

 今月の注目作は、かんべむさし『ベルゴンゾリ旋盤』と、スパイダー&ジーン・ロビンスン『スターダンス』である。
 評者短評は、
 かんべ「現実的な話から表題作まで、さまざまなレベルにおいて“突き抜け”つつある。『言語破壊官』以来の進歩派、大変なものだ」、
 ロビンスン「宇宙に舞う“ジャズ・ダンス”というイメージ。現代アメリカSF最良の部分と、何か喰い足りぬ部分とが混交している」


ベルゴンゾリ旋盤 かんべむさし 徳間書店 大野万紀
スターダンス スパイダー&ジーン・ロビンスン 早川書房 伊藤昭
不死を狩る者 鏡明 徳間書店 伊藤典夫
魔界水滸伝1 栗本薫 角川書店 岡本俊弥
殺意の明王 荒巻義雄 有楽出版社 野村芳夫
ポールシフト 真木洋三 講談社 大野万紀
星なき世界 ゴードン・エクランド 早川書房 安田均
ロードマークス ロジャー・ゼラズニイ サンリオ 伊藤昭
沈黙の声 トム・リーミイ サンリオ 岡本俊弥
天使の卵 風見潤+安田均編 集英社 伊藤典夫
キリマンジャロ・マシーン レイ・ブラッドベリ 早川書房 野村芳夫
長岡秀星の世界 長岡秀星 日本放送出版協会 野村芳夫
日本本土決戦 檜山良昭 光文社 鏡明
窒素固定世界 ハル・クレメント 東京創元社 伊藤昭
特務機関GWA K・H・シェール 早川書房 岡本俊弥
愚者の聖戦 クリフォード・D・シマック 早川書房 鏡明
夏の旅人 田中文雄 早川書房 伊藤昭
泰平ヨンの回想記 スタニスワフ・レム 早川書房 伊藤典夫


 

 この号の目玉は、平井和正「真幻魔大戦」の中篇一挙掲載と、それに併せたシリーズ紹介記事。
 28号収録のレビューは1981年11月20日から82年1月10日までの18冊。

 今月の注目作は、豊田有恒『神風のヤマトタケル』、ロジャー・ゼラズニイ『混沌の宮廷』(真世界シリーズ)である。豊田有恒の作品は、先にハヤカワSF文庫で出たヤマトタケル・シリーズ(1971-74年)の新書版続編。ゼラズニイの作品は、アンバーものと称された代表的なシリーズ5巻の完結編(未訳の新アンバー・シリーズもある)。


神風のヤマトタケル 豊田有恒 祥伝社 鏡明
混沌の宮廷 ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 大野万紀
空から墜ちてきた歴史 小松左京 新潮社 安田均
亜空間不動産株式会社 石川英輔 講談社 鏡明
むさし片眼鏡 かんべむさし 講談社 野村芳夫
心中天浦島 栗本薫 早川書房 伊藤昭
スターライナーズ スチュアート・カウリー 旺文社 伊藤典夫
ルーシーは爆弾持って空に浮かぶ 河野典生 集英社 岡本俊弥
プレーボール!2002年 ロバート・ブラウン 早川書房 岡本俊弥
異星の人 ガードナー・ドゾア サンリオ 伊藤典夫
おれは誰だ? ボブ・ショウ サンリオ 安田均
冬の夜ひとりの旅人が イタロ・カルヴィーノ 松籟社 安田均
わが名はヘリック 田中光二 光文社 大野万紀
フロリダ超能力集落 矢野徹 角川書店 野村芳夫
ゴルゴタの迷路 ジョン・ガードナー 新潮社 伊藤典夫
ランダウの幻視星 石原藤夫 徳間書店 岡本俊弥
もし星が神ならば ベンフォード&エクランド 早川書房 野村芳夫
魍魎伝説 谷恒生 双葉社 伊藤昭



 この号の目玉は、井上ひさしと石川喬司による対談と、「パソコン特集」である。まだMacやWindows以前、AppleIIやPC8001の時代のこと。コピー機やファクシミリは、ようやくオフィスから一般家庭に降りつつあった。
 29号収録のレビューは1981年12月14日から82年1月31日までの18冊。

 今月の注目作は、小松左京『宇宙から愛をこめて』、フィリップ・K・ディック『流れよ我が涙、と警官は言った』である。

 また、1981年ベストの座談会も掲載されている。


宇宙から愛をこめて 小松左京 文化出版局 野村芳夫
流れよ我が涙、と警官は言った フィリップ・K・ディック サンリオ 野村芳夫
プロミスト・ランド ブライアン・M・スティプルフォード サンリオ 岡本俊弥
あした出会った・少女 森下一仁 集英社 伊藤昭
通りすがりのレイディ 新井素子 集英社 大野万紀
燃えつきた橋 ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 伊藤典夫
一人で歩いていった猫 大原まり子 早川書房 伊藤典夫
飛行船の上のシンセサイザー弾き 難波弘之 文化出版局 岡本俊弥
氷神女神アーシュラ 田中文雄 早川書房 大野万紀
妖精郷の騎士 ディ・キャンプ&プラット 早川書房 鏡明
ドルセイ魂 ゴードン・R・ディクスン 東京創元社 大野万紀
闇の牙 田中光二 集英社 鏡明
ヴァンパイアー戦争1 笠井潔 角川書店 安田均
幻魔大戦13,14,15 平井和正 角川書店 鏡明
オー・マスター・キャリバン! フィリス・ゴットリーブ 早川書房 岡本俊弥
新お伽話 殿谷みな子 早川書房 伊藤典夫
乱調変調悪あがき超科学講座 横田順彌 徳間書店 安田均
告げ口心臓 ジュリアン・シモンズ 東京創元社 野村芳夫



 この号の目玉は、星新一の新作ショート・ショート、豊田有恒、梶尾真治の中篇である。特集は「50年代の夢よ、もう一度」。黄金時代から30年で変質したSFの中身を、主にテーマ面から概観。

 30号収録のレビューは1982年1月30日から3月1日までの18冊。

 今月の注目作は4作、高千穂遙『黄金のアポロ』、亀和田武『まだ地上的な天使』、R・A・ラファティ『子供たちの午後』 (大阪の青心社によるSF叢書の第1巻目)、ロバート・ブロック編『フレデリック・ブラウン傑作集』である。


黄金のアポロ 高千穂遙 角川書店 鏡明
まだ地上的な天使 亀和田武 早川書房 野村芳夫
子供たちの午後 R・A・ラファテイ 青心社 岡本俊弥
フレデリック・ブラウン傑作集 フレデリック・ブラウン サンリオ 伊藤典夫
ダイノスター破壊計画 キット・ペドラー&ゲリー・デイヴィス 角川書店 野村芳夫
太陽の世界5 半村良 角川書店 大野万紀
シルマリルの物語(上) J・R・R・トールキン 評論社 野村芳夫
空白の黙示録 荒巻義雄 祥伝社 岡本俊弥
J・R・R・トールキン或る伝記 ハンフリー・カーペンター 評論社 安田均
ザ・ニンジャ エリック・ヴァン・ラストベーダー 講談社 鏡明
パラダイス・ゲーム ブライアン・M・スティプルフォード サンリオ 岡本俊弥
永井豪選/原色馬鹿図鑑 横田順彌 有楽出版社 伊藤典夫
ゴルの遊牧民 ジョン・ノーマン 東京創元社 大野万紀
恋のサイケデリック 鈴木いづみ 早川書房 安田均
銀河私椋船団 A・バートラム・チャンドラー 早川書房 安田均
真幻魔大戦8 平井和正 徳間書店 伊藤典夫
爆裂都市 戸井十月 徳間書店 大野万紀
時空間の剣鬼PART2 宮崎惇 双葉社 鏡明



 この号の目玉は、平井和正「真幻魔大戦」の中篇一挙掲載の他、「SFロボット研究」特集。

 31号収録のレビューは1982年3月5日から4月10日までの17冊。

 今月の注目作は3作、小松左京『さよならジュピター』、J・R・R・トールキン『シルマリルの物語』、フレデリック・ポール『仮面戦争』である。小松左京の『さよなら…』は鳴り物入りで迎えられた作品だったが、本命の映画(1984公開)は大ヒットまでには至らなかった。


さよならジュピター 小松左京 サンケイ出版 大野万紀
シルマリルの物語(上下) J・R・R・トールキン 評論社 野村芳夫
仮面戦争 フレデリック・ポール 早川書房 安田均
扉を開けて 新井素子 CBSソニー出版 野村芳夫
アマチュアたち ドナルド・バーセルミ サンリオ 岡本俊弥
フェンリス・デストロイヤー ブライアン・M・スティプルフォード サンリオ 岡本俊弥
沈黙は死の匂い ロイド・ビッグルJr. サンリオ 鏡明
天国製造株式会社 石川英輔 講談社 伊藤典夫
新仮名草子 机上庵志異 佐藤さとる 講談社 安田均
魔界水滸伝2 栗本薫 角川書店 岡本俊弥
プロメテウスの乙女 赤川次郎 角川書店 大野万紀
アメリカが凍えた日 リチャード・ローマー 集英社 野村芳夫
疲れた社員たち 眉村卓 有楽出版社 安田均
バルーン・バルーン 岬兄悟 文化出版局 大野万紀
地獄 西村寿行 徳間書店 鏡明
アンテナ惑星 石原藤夫 早川書房 伊藤典夫
ロボット物語 スタニスワフ・レム 早川書房 鏡明



 この号の目玉は、新井素子『ラビリンス』前編掲載、「プレイ!SFクイズ・ウォーズ」特集。

 32号収録のレビューは1982年3月31日から4月30日までの17冊。

 今月の注目作は4作、石川喬司『彗星伝説』、石原藤夫『宇宙船オロモルフ号の冒険』、リチャード・アダムス『シャーディック』、A&B・ストルガツキー『蟻塚の中のかぶと虫』である。


彗星伝説 石川喬司 講談社 安田均
宇宙船オロモロフ号の冒険 石原藤夫 早川書房 大野万紀
シャーディック リチャード・アダムス 評論社 伊藤昭
蟻塚の中のかぶと虫 アルカジイ&ボリス・ストルガツキー 早川書房 野村芳夫
星に叫ぶ岩ナルガン パトリシア・ライトスン 評論社 伊藤典夫
凶夢など30 星新一 新潮社 岡本俊弥
フォークロスコープ日本 都築道夫 徳間書店 岡本俊弥
時の復讐 ロイド・ビッグルJr. サンリオ 鏡明
虚栄の都市 山田正紀 祥伝社 大野万紀
魔性の森 ハバート・リーバーマン 角川書店 伊藤昭
コナン・ザ・グレート スプレイグ・デ・キャンプ&リン・カーター 角川書店 岡本俊弥
怪奇の創造 城昌幸傑作選 星新一編 有楽出版社 大野万紀
ディオ デーモン・ナイト 青心社 野村芳夫
マッド・サイエンティスト S・D・シフ編 東京創元社 野村芳夫
鼠と竜のゲーム コードウェイナー・スミス 早川書房 鏡明
メディア9 栗本薫 徳間書店 伊藤典夫
ジュリアの館 ピーター・ストラウブ 早川書房 安田均



 この号の目玉は、かんべむさし『笑い宇宙の旅芸人』連載開始(この後連載が長く続き、4年後に第7回日本SF大賞を受賞する)、「マイ・コレクション」(作家の趣味のコレクション)特集。

 33号収録のレビューは1982年4月30日から5月31日までの17冊。

 今月の注目作は3作、栗本薫『グイン・サーガ6-10』、山田正紀『最後の敵』(翌年の第3回日本SF大賞受賞作)、J・H・ロニー・エネ『人類創世』(1911年に出たフランスSFの古典。82年の映画公開に併せて翻訳された)、ジョー・ホールドマン『さらば ふるさとの惑星』(集英社ワールドSFの第1回配本)である。


グイン・サーガ6〜10 栗本薫 早川書房 鏡明
最後の敵 山田正紀 徳間書店 伊藤昭
人類創世 J・H・ロニー・エネ 角川書店 伊藤典夫
さらば ふるさとの惑星 ジョー・ホールドマン 集英社 岡本俊弥
青い惑星 プログレス出版所編 プログレス出版所 伊藤典夫
謎のテンプラ中佐 富田良雄 叢文社 鏡明
剣の騎士(コルム1) マイクル・ムアコック 早川書房 大野万紀
暗黒球の魔神 風見潤 朝日ソノラマ 大野万紀
イシュタルの船 エイブラム・メリット 早川書房 安田均
アフターマン ドゥーガル・ディクソン 旺文社 野村芳夫
スワン・ソング ブライアン・M・スティプルフォード サンリオ 岡本俊弥
ロンドン大洪水 リチャード・ドイル サンリオ 安田均
タイムマシン金融KK 若桜木虔 秋元書房 大野万紀
ヴァリス フィリップ・K・ディック サンリオ 安田均
ゴルの暗殺者 ジョン・ノーマン 東京創元社 野村芳夫
死亡した宇宙飛行士 J・G・バラード NW-SF社 伊藤昭
地球物語 大原まり子+火浦功+水見綾 早川書房 野村芳夫



 この号の目玉は、平井和正「真幻魔大戦」中篇一挙掲載、光瀬龍のエッセイ連載開始、「コナンとヒロイック・ファンタジーの世界」特集。

 34号収録のレビューは1982年5月20日から7月10日までの17冊。

 今月の注目作は4作、堀晃『恐怖省』、ジョージ・R・R・マーチン&リサ・タトル『翼人の掟』、ロバート・L・フォワード『竜の卵』、ウォルター・テヴィス『モッキンバード』である。


恐怖省 堀晃 集英社 大野万紀
翼人の掟 ジョージ・R・R・マーチン&リサ・タトル 集英社 安田均
竜の卵 ロバート・L・フォワード 早川書房 伊藤典夫
モッキンバード ウォルター・テヴィス 早川書房 伊藤昭
神州日月変(上下) 栗本薫 講談社 伊藤昭
バルスーム リチャード・A・ルポフ 東京創元社 鏡明
やぎ少年ジャイルズT ジョン・バース 国書刊行会 岡本俊弥
天の声 スタニスワフ・レム サンリオ 大野万紀
剣の女王 マイクル・ムアコック 早川書房 大野万紀
ロボット貯金箱 風見潤+安田均編 集英社 鏡明
ファー・コール ゴードン・R・ディクスン 早川書房 鏡明
小松左京のSFセミナー 小松左京 集英社 岡本俊弥
銀河乞食軍団1 野田昌宏 早川書房 野村芳夫
金色の階段の彼方 ハネス・ボク 早川書房 野村芳夫
ふしぎの国のレストラン 浅倉久志編 徳間書店 伊藤典夫
ラジウム怪盗団現わる! エドモンド・ハミルトン 早川書房 安田均
惑星の剣闘士 清水義範 双葉社 野村芳夫



 この号の目玉は、荒巻義雄「秘宝シリーズ」新作長編前半一挙掲載、「All about SF Convention」(SF大会)特集。

 35号収録のレビューは1982年6月7日から7月26日までの20冊。

 今月の注目作は4作、豊田有恒『神々の黄昏』、ジョン・バース『ヤギ少年ジャイルズI・II』、フィリップ・K・ディック『聖なる侵入』、ジョン・ヴァーリイ『ティーターン』である。
  『ティーターン』は1998年に新装版で復刊。続編の『ウィザード』は1994年に出ている。


神々の黄昏 豊田有恒 集英社 伊藤典夫
やぎ少年ジャイルズT・U ジョン・バース 国書刊行会 岡本俊弥
聖なる進入 フィリップ・K・ディック サンリオ 野村芳夫
ティーターン ジョン・ヴァーリィ 東京創元社 鏡明
はてしない物語 ミヒャエル・エンデ 岩波書店 安田均
写真漫画ジーザーズ・クライスト・トリックスター 筒井康隆 ツルモトルーム 伊藤典夫
橡家(つるばみ)の伝説 佐々木丸美 講談社 大野万紀
ショートショートの広場4 星新一編 講談社 安田均
眩暈 ボブ・ショウ サンリオ 伊藤昭
鳥の歌いまは絶え ケイト・ウィルヘルム サンリオ 安田均
ケスリス C・J・チェリイ 早川書房 伊藤昭
イタルバーに死す ロジャー・ゼラズニイ 早川書房 鏡明
月と太陽の魔術師 タニス・リー 早川書房 野村芳夫
ドルセイの決断 ゴードン・R・ディクスン 東京創元社 大野万紀
星々の轟き エドモンド・ハミルトン 青心社 伊藤昭
勇者の血 田中光二 集英社 岡本俊弥
黄色い夢、青い夢 眉村卓 集英社 伊藤典夫
22世紀のコロンブス J・G・バラード 集英社 大野万紀
球は転々宇宙間 赤瀬川隼 文藝春秋 鏡明
天使の惑星 横田順彌 有楽出版社 野村芳夫



 この号の目玉は、荒巻義雄「秘宝シリーズ」新作長編後編掲載、「テクノ・フロントライン、テクノ・ドリーム」(最新科学技術)特集。

 36号収録のレビューは1982年7月15日から8月31日までの20冊。

 今月の注目作は4作、石原藤夫『S-F図書解説総目録上』(下巻は14年後の1996年に出た)、川又千秋『夢幻惑星』、笠井潔『機械じかけの夢』、マイクル・ビショップ『焔の眼』である。


S-F図書解説総目録・上(1946-70) 石原藤夫編 S-F資料研究会 岡本俊弥
夢幻惑星 川又千秋 徳間書店 安田均
機械じかけの夢 笠井潔 講談社 伊藤昭
焔の眼 マイクル・ビショップ 早川書房 鏡明
ヒノシオ号の冒険 石原藤夫 徳間書店 大野万紀
人騒がせな死体たち 津山紘一 集英社 野村芳夫
びっくり展覧会 都築道夫 集英社 伊藤典夫
幻獣少年キマイラ 夢枕獏 朝日ソノラマ 大野万紀
嵐の惑星ガース E・C・タブ 東京創元社 伊藤典夫
真ク・リトル・リトル神話体系1 黒魔団編 国書刊行会 大野万紀
ゲイトウエイ2 フレデリック・ポール 早川書房 岡本俊弥
横須賀カタパルト 石原藤夫 徳間書店 伊藤昭
魍魎伝説2 谷恒生 双葉社 鏡明
日本SF年鑑1982年版 日本SF年鑑編集委員会編 新時代社 伊藤典夫



 この号の目玉は、恒例の平井和正「真幻魔大戦」中篇一挙掲載、「ファンダムは爆発だ!」( ファングループなどの集合体を、SFでは総括的にファンダムと称する)特集。

 37号収録のレビューは1982年8月10日から9月30日までの20冊。

 今月の注目作は4作、新井素子『ラビリンス』、山尾悠子『夢の棲む街/遠近法』、スティーヴン・キング『ファイアスターター』、C・J・チェリイ『色褪せた太陽三部作』である。


ラビリンス−迷宮 新井素子 徳間書店 鏡明
夢の棲む街/遠近法 山尾悠子 三一書房 岡本俊弥
ファイアスターター スティーヴン・キング 新潮社 伊藤典夫
色褪せた太陽(三部作) C・J・チェリイ 早川書房 大野万紀
百億光年の凶弾士 吉津實 双葉社 鏡明
宇宙兵物語 今日泊亜蘭 早川書房 岡本俊弥
復活一九八五 井沢元彦 角川書店 安田均
霧の中の二剣士 フリッツ・ライバー 東京創元社 野村芳夫
真ク・リトル・リトル神話体系2 黒魔団編 国書刊行会 伊藤昭
失われた遺産 ロバート・A・ハインライン 早川書房 野村芳夫
冬物語 タニス・リー 早川書房 安田均
神という機械への夢 大宮信光編 サンリオ 安田均
惑星カマゾツ マドレイン・ラングル サンリオ 安田均
アララットの死闘 ジェリー・パーネル 東京創元社 伊藤典夫
人間狩り フィリップ・K・ディック 集英社 岡本俊弥
E.T. W・コツウィンクル 新潮社 大野万紀
怒りの神 ディック&ゼラズニイ サンリオ 安田均
輪廻の蛇 ロバート・A・ハインライン 早川書房 伊藤昭
竜の探索(パーンの竜騎士2) アン・マキャフリイ 早川書房 鏡明
雪の女王 ジョーン・D・ヴィンジ 早川書房 岡本俊弥

 1982年全般については、1983年の4月号 に総括記事が書かれている。執筆者は、国内が伊藤典夫、翻訳が安田均で、評者全員の推薦作から下記作品が選ばれている(アドベンチャーのベストは発行年月日1月〜12月で区分けを行うため、概ねその年の2月に出る4月号から翌年1月に出る3月 号までが選考範囲となる)

 同号掲載の評者によるコメントは下記の通り。

 特に気がついたのは、ハードSFとディックの年だったことだ。
 主に年の前半に集中したハードSFは、それこそ錚々たる顔ぶれで、例えばこんな調子で表現できる。

 ・巨大プロジェクトSF 『さよならジュピター』、
 ・応用数学SF 『宇宙船オロモルフ号の冒険』、
 ・高重力理論SF 『竜の卵』、
 ・宇宙哲学SF 『天の声』、などなど。

 特に上記の4作が優れている。評者のキャッチフレーズはでたらめだけれど、これだけのハードSFが出たということだ。質的に凌げる作品は、当面出てこないだろう。その上内容は四種四様、プロットの立て方一つにしても、重複する部分がない。――とにかく、昨年4月から6月にかけて、4作が出たことで、優に1年分の重みがあった。ハード傍系と書くと語弊があるが、本格SFの『タイムスケープ』や『最後の敵』も、この流れに入るだろう。
 もう1つ、ディックの年といえるのは、問題作の『ヴァリス』や『聖なる侵入』、映画『ブレードランナー』があっただけではなく(もちろんそれもあるのだが)、各専門紙で特集された多くのディック特集が、思いのほか充実していたからだ。ファンジンにも、面白い特集が載った。長い間、内容のある論争らしい論争が絶えていたSF界に、たとえ一部にでも有意義な意見のぶつかり合いが生まれたのだ。ディックの死もムダではなかった――とまで言うといいすぎになるか。

1982-86年のSFアドベンチャー収録書評リスト(Excel版)