表紙イラスト:生頼範義(以下同じ)


 4年目に入ったSFアドベンチャーは、従来の平井和正マガジン的な編集方針を改め、幅広い日本作家特集を組むようになる(幻魔大戦等は82〜84年の増刊号に移った)。赤川次郎や西村寿行ら「問題小説」系ミステリ作家の連載もなくなり、SFプロパー雑誌として充実してきた。

 チェックリスト欄は、82年とほぼ同様の体裁で掲載された。もともと日本作家を中心とした雑誌では、(肯定的ではない)作品批評はタブー視されてきた。しかし、チェックリストでは(さすがに罵詈讒謗はないが)例え徳間書店発行の書籍であっても、問題点は必ず指摘される。そういった“治外法権”を守ってきたわけだ。批評眼に定評のある、伊藤典夫主催という裏付けも効いていた。

awaybull2.gif (77 バイト)1983年1月から12月までの担当者 (82年と同じ):
awaybull2.gif (77 バイト)伊藤典夫 ・鏡明・安田均・伊藤昭・大野万紀・野村芳夫・岡本俊弥
 38号収録のレビューは、1982年9月30日から10月31日までの17冊。この年もワープロ、パソコン以前の時代であるため、岡本分のみpdfファイルで収録した 。

 今月の注目作は、式貴士『なんでもあり』と マイケル・ムアコック『堕ちた天使』、タニス・リー『闇の公子』、ブライアン・W・オールディス『解放されたフランケンシュタイン』である。

なんでもあり 式貴士 CBSソニー出版 伊藤典夫
堕ちた天使 マイケル・ムアコック 集英社 安田均
闇の公子 タニス・リー 早川書房 大野万紀
解放されたフランケンシュタイン ブライアン・W・オールディス 早川書房 伊藤昭
魔王の聖域(ザンス2) ピアズ・アンソニイ 早川書房 鏡明
城と眩暈 小池滋+志村正雄+富山太佳夫編 国書刊行会 野村芳夫
ハーマゲドンの嵐(エクソシスト探偵3) 田中光二 徳間書店 伊藤昭
急行エトロフ殺人事件 辻真先 講談社 鏡明
悪魔の戦場 矢野徹 早川書房 伊藤典夫
星ぼしに架ける橋 チャールズ・シェフィールド 早川書房 岡本俊弥
アースウインド ロバート・ホールドストック サンリオ 野村芳夫
かんちがい閉口坊 かんべむさし 文藝春秋 野村芳夫
エクトロスとの戦い マドレイン・ラングル サンリオ 安田均
ポケットのABC 眉村卓 角川書店 岡本俊弥
ポケットのXYZ 眉村卓 角川書店 鏡明
狂走団 川又千秋 角川書店 岡本俊弥
剣の王(コルム3) マイクル・ムアコック 早川書房 大野万紀


 

 第3回日本SF大賞山田正紀の受賞第1作、同じく1月号で発表されたファンジン優秀作作家、松本富雄(星群の会)、波津尚子(イスカーチェリ・SFクラブ)による受賞第1作が掲載された。特集は「新春特別企画」によるSF川柳など。
 
 39号収録のレビューは、1982年10月30日から12月3日までの17冊。

 今月の注目作は、光瀬龍『SFマガジン版 派遣軍還る』、かんべむさし『38万人の仰天』と、カービー・マッコーリー『闇の展覧会』、E・C・タブ『キノコの惑星スカー』(デュマレスト・サーガ5)である。
  『派遣軍還る』は、SFマガジン版と宇宙塵版の2種類がある。『闇の展覧会』は編み直し版(一部新訳)が2005年に、デュマレストは2006年に復刊されている(特にデュマレストは表紙も含めて同じ体裁)。


SFマガジン版・派遣軍還える 光瀬龍 早川書房 野村芳夫
38万人の仰天 かんべむさし 朝日新聞社 鏡明
闇の展覧会1,2 カービー・マッコリー編 早川書房 伊藤昭
キノコの惑星スカー(デュマレストサーガ5) E・C・タブ 東京創元社 安田均
羊をめぐる冒険 村上春樹 講談社 伊藤典夫
日没国物語 原秀雄 新宿書房 野村芳夫
楕円の鏡 渡辺恒人 近代文藝社 伊藤典夫
樹上の銀(闇の戦い4) スーザン・クーパー 評論社 岡本俊弥
銀河英雄伝説 田中芳樹 徳間書店 伊藤昭
爆破予告 ペール・ヴァールー 角川書店 岡本俊弥
リードワールド ロバート・ホールドストック サンリオ 安田均
宇宙カジノ略奪作戦(高飛びレイク1) 火浦功 早川書房 伊藤典夫
影の姉妹 佐々木丸美 講談社 大野万紀
遊星からの物体X アラン・ディーン・フォスター サンリオ 鏡明
時間線をさかのぼって マドレイン・ラングル サンリオ 大野万紀
西の反逆者(東の帝国1) フレッド・セイバーヘーゲン 早川書房 大野万紀
失われた黄金都市 マイクル・クレイトン 早川書房 岡本俊弥


 

 この号の目玉は、平井和正「真幻魔大戦」の中篇一挙掲載(83年の幻魔一挙掲載はこの月のみ)。特集は「ニューウェイブSFコミック」。
 40号収録のレビューは1982年11月30日から82年12月31日までの19冊。

 今月の注目作は、 森詠『燃える波濤(全3巻)』、田中光二『宇宙からの衝撃』、ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』、グレゴリイ・ベンフォード『タイムスケープ』の4作である。
 『銀河ヒッチハイク・ガイド』(以降の3部作を含めて)は、2005〜06年に河出書房新社から新訳で出ている。


燃える波涛(全三巻) 森詠 徳間書店 野村芳夫
宇宙からの衝撃 田中光二 光文社 伊藤典夫
銀河ヒッチハイク・ガイド ダグラス・アダムス 新潮社 岡本俊弥
タイムスケープ グレゴリイ・ベンフォード 早川書房 鏡明
黒い炎の戦士1、2 白石一郎 徳間書店 岡本俊弥
クトゥルーV H・P・ラヴクラフト 青心社 伊藤昭
怪物世界 ピーター・ヘイニング編 国書刊行会 野村芳夫
林彪の罠 川又千秋 祥伝社 野村芳夫
オレの愛するアタシ 筒井広志 新潮社 鏡明
怪盗お花七変化 久利武 現代書林 伊藤昭
白い竜(パーンの竜騎士3) アン・マキャフリイ 早川書房 鏡明
オメガ・ポイント ジョージ・ゼブロウスキー サンリオ 野村芳夫
フランス幻想文学傑作選1 窪田般彌・滝田文彦編 白水社 伊藤典夫
地球、この緑の島より(UFOハンター2) 田中光二 文藝春秋 岡本俊弥
キマイラ朧編(キマイラ・吼2) 夢枕獏 朝日ソノラマ 大野万紀
始皇帝の秘法 荒巻義雄 徳間書店 伊藤典夫
黒の山脈(東の帝国2) フレッド・セイバーヘーゲン 早川書房 大野万紀
魔法の国の旅人 ロード・ダンセイニ 早川書房 安田均
魔法株式会社 ロバート・A・ハインライン 早川書房 伊藤昭


 

 この号の目玉は、川又千秋『亜人戦士II』の前半一挙掲載、山田正紀の中篇掲載である。1982年ベスト特集も掲載されている。
 
 41号収録のレビューは1982年11月20日(11月分は2冊)から83年2月4日までの18冊。

 今月の注目作は、 筒井康隆『着想の技術』、神林長平『あなたの魂に安らぎあれ』、シオドア・スタージョン『スタージョンは健在なり』、ポール・アンダースン『大魔王作戦』である。
 『スタージョンは…』は、2004年に『時間のかかる彫刻』(東京創元社)と改題され復刊している。

 

 


着想の技術 筒井康隆 新潮社 大野万紀
あなたの魂に安らぎあれ 神林長平 早川書房 野村芳夫
スタージョンは健在なり シオドア・スタージョン サンリオ 伊藤昭
大魔王作戦 ポール・アンダースン 早川書房 岡本俊弥
10億人の餓死 相澤惣治 実業之日本社 伊藤典夫
亜空間潜艦を撃て 斎藤英一郎 朝日ソノラマ 野村芳夫
青い鷹 ピーター・ディキンソン 偕成社 安田均
真ク・リトル・リトル神話大系3 那智史郎編 国書刊行会 岡本俊弥
暗黒の破壊王(エスパーコネクション4) 清水義範 朝日ソノラマ 鏡明
血は異ならず ゼナ・ヘンダースン 早川書房 鏡明
スター・トレック2/カーンの逆襲 ヴォンダ・マッキンタイア 早川書房 大野万紀
白馬の王子 タニス・リー 早川書房 野村芳夫
幸せの青い鳥 火浦功 早川書房 伊藤昭
異聞・ミッドウェー海戦 豊田有恒 角川書店 伊藤昭
天のさだめを誰が知る D・R・ベンゼン 東京創元社 安田均
アードネーの世界(東の帝国3) フレッド・セイバーヘーゲン 早川書房 大野万紀
夢魔のふる夜 水見稜 早川書房 鏡明
宇宙からの訪問者 クリフォード・D・シマック 東京創元社 伊藤典夫


 


 この号の目玉は、川又千秋『亜人戦士』後半掲載と豊田有恒中篇掲載など。

 42号収録のレビューは1983年1月25日から3月10日までの17冊。

 今月の注目作は4作、 村上龍『だいじょうぶマイ・フレンド』、A&B・ストルガツキー『ストーカー』、アーシュラ・K・ル=グイン『マラフレナ(上下)』、ジェイムズ・ホワイト『生存の図式』である。


だいじょうぶマイ・フレンド 村上龍 集英社 伊藤昭
ストーカー A&B・ストルガツキー 早川書房 岡本俊弥
マラフレナ アーシュラ・K・ル・グイン サンリオ 鏡明
生存の図式 ジェイムズ・ホワイト 早川書房 安田均
真ク・リトル・リトル神話大系4 那智史郎編 国書刊行会 鏡明
ジャック・ロンドン大予言 ジャック・ロンドン 晶文社 野村芳夫
アシモフ博士の世界 アイザック・アシモフ 早川書房 野村芳夫
Dr.アシモフのSFおしゃべりジャーナル アイザック・アシモフ 講談社 大野万紀
異空間アドベンチャー 谷恒生 学校図書 大野万紀
海神の裔 豊田有恒 集英社 岡本俊弥
所は何処、水師営 光瀬龍 角川書店 伊藤典夫
真ク・リトル・リトル神話大系5 那智史郎編 国書刊行会 安田均
フランス幻想文学傑作選2 窪田般彌・滝田文彦編 白水社 伊藤典夫
風にブギ 岬兄悟 早川書房 大野万紀
七胴落とし 神林長平 早川書房 伊藤昭
プタヴの世界 ラリイ・ニーヴン 早川書房 伊藤典夫
われら2DK超軍団 辻真先 双葉社 野村芳夫

 

 


 この号は創刊4周年記念号にあたり、29作家のオールスターキャスト。

 43号収録のレビューは、1983年2月25日から3月1日までの17冊。
 今月の注目作は4作、平井和正『幻魔大戦(第1期20冊)』、石川英輔『人造人間株式会社』、キングズリイ・エイミス『去勢』、L・ニーヴン&S・パーネル『ドリーム・パーク』。


幻魔大戦1〜20 平井和正 角川書店 伊藤典夫
人間改造株式会社 石川英輔 講談社 大野万紀
去勢 キングズリイ・エイミス サンリオ 野村芳夫
ドリーム・パーク ラリー・ニーヴン&S・バーンズ 東京創元社 安田均
ラスト・ウェーブ 島田眸 かんき出版 野村芳夫
宇宙の牢獄 高斎正 徳間書店 鏡明
銀河十字軍(銀河の聖戦士2) 田中光二 徳間書店 伊藤昭
巨人伝説<復活篇> 笠井潔 徳間書店 岡本俊弥
二分割幽霊綺譚 新井素子 講談社 安田均
アルファ・ケンタウリからの客 筒井広志 新潮社 伊藤典夫
美しき魔王(クラッシャージョウ7) 高千穂遙 朝日ソノラマ 鏡明
邪火神 川又千秋 角川書店 伊藤昭
ポエム君とミラクル・タウンの怪事件 横田順彌 集英社 鏡明
鋼鉄城の勇士(ハロルド・シェイ3) S・ディ・キャンプ&C・プラット 早川書房 岡本俊弥
死者の都 タニス・リー 早川書房 伊藤昭
機械神アスラ 大原まり子 早川書房 岡本俊弥
未来の二つの顔 ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社 大野万紀

 

 


 この号から作家特集が組まれるようになる。第1回は堀晃で、書下ろし短編の他、作家論や座談会も掲載。

 44号収録のレビューは1983年2月15日(2月分は1冊)から4月30日までの17冊。

 今月の注目作は4作、筒井康隆『筒井康隆全集1』、谷甲州『エリヌス−戒厳令−』、J・P・ホーガン『未来からのホットライン』、バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣』。


筒井康隆全集1 筒井康隆 新潮社 岡本俊弥
エリヌス−戒厳令− 谷甲州 早川書房 鏡明
未来からのホットライン ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社 伊藤昭
カエアンの聖衣 バリントン・J・ベイリー 早川書房 野村芳夫
アメリカを買って クロード・クロッツ 早川書房 安田均
横田順彌 徳間書店 鏡明
海神の戦士 今野敏 徳間書店 伊藤典夫
六道遊行 石川淳 集英社 大野万紀
逃げ姫 眉村卓 集英社 大野万紀
聖戦士キリー(銀河創世伝1) 藤川桂介 集英社 安田均
天中花 式貴司 CBSソニー出版 安田均
女王国トライアングル 川田武 角川書店 岡本俊弥
宇宙の果てのレストラン ダグラス・アダムス 新潮社 伊藤昭
フランス幻想文学傑作選3 窪田般彌・滝田文彦編 白水社 伊藤典夫
見知らぬ者たちの船 ボブ・ショウ サンリオ 伊藤典夫
幻魔の虜囚 タニス・リー 早川書房 大野万紀
虹色の地獄(映画版クラッシャー・ジョウ) 高千穂遙 朝日ソノラマ 野村芳夫


 


 この号は山田正紀特集。中篇掲載、座談会、インタビュー(柴野拓美)など。

 45号収録のレビューは1983年4月25日から6月1日までの14冊。

 今月の注目作は4作、栗本薫『レダ』、梶尾真治『おもいでエマノン』、ディヴィッド・ジェロルド『H・R・L・I・E』、J・P・ホーガン『巨人たちの星』(<星を継ぐもの>3部作の完結編)である。

 


レダ 栗本薫 早川書房 大野万紀
おもいでエマノン 梶尾真治 徳間書店 安田均
H・R・L・I・E デイヴィッド・ジェロルド サンリオ 鏡明
巨人たちの星 ジェイムズ・P・ホーガン 東京創元社 岡本俊弥
皇帝陛下の戦場(異次元戦場1) 矢野徹 角川書店 伊藤昭
SFマガジン・セレクション1981 早川書房編集部編 早川書房 野村芳夫
クトゥルーW 邪神の復活 C・A・スミス他 青心社 岡本俊弥
銀河乞食軍団2〜4 野田昌宏 早川書房 野村芳夫
1ダースの未来 プロンジーニ・マルツバーグ編 講談社 鏡明
ミニミニSF傑作展 アシモフ他編 講談社 伊藤昭
銀河の壷直し フィリップ・K・ディック サンリオ 伊藤昭
英雄たちの帰還(ハロルド・シェイ4) S・ディ・キャンプ&C・プラット 早川書房 大野万紀
暗殺心 アサッシン 都築道夫 徳間書店 野村芳夫
198X年宇宙兵器大戦 岩野正隆 実業之日本社 安田均


 


 この号は荒巻義雄特集。ビッグウォーズ・シリーズの中篇書き下ろし、座談会、作品論(笠井潔)等。

 46号収録のレビューは1983年5月15日から6月30日までの18冊。

 今月の注目作は4作、 神林長平『言葉使い師』、山野浩一『レヴォリューション』、クリストファー・プリースト『逆転世界』、ジュリアン・メイ『多彩の海』である。
 『逆転世界』は1996年に東京創元社から復刊されている。

 


言葉使い師 神林長平 早川書房 伊藤昭
レヴォリューション 山野浩一 NW-SF社 野村芳夫
逆転世界 クリストファー・プリースト サンリオ 大野万紀
多彩の地 ジュリアン・メイ 早川書房 伊藤典夫
フォックスさんにウインクを 大和真也 集英社 伊藤典夫
新・黒魔団(黒魔術小説傑作集1) デニス・ホイートリー 国書刊行会 鏡明
孤児(野獣の書1) ロバート・ストールマン 早川書房 岡本俊弥
宇宙大作戦 新たなる航海 マーシャク&カルブレス編 早川書房 伊藤典夫
族長の秋 G・ガルシア=マルケス 集英社 伊藤昭
魔獣大陸 川又千秋+永井豪 角川書店 岡本俊弥
銀河の夢 星敬編 集英社 岡本俊弥
プリズマティカ サミュエル・R・ディレイニー 早川書房 大野万紀
青銅の斧(リチャード・ブレイド1) ジェフリー・ロード 東京創元社 鏡明
サイコキネシス大戦争 豊田有恒 角川書店 大野万紀
シークがきた 椎名誠 徳間書店 野村芳夫
飛翔せよ、遥かなる空へ(リバー・ワールド3) フィリップ・ホセ・ファーマー 早川書房 鏡明
神話星団(亜人戦士2) 川又千秋 徳間書店 伊藤昭
ジョン・コリア奇談集 ジョン・コリア サンリオ 安田均


 


 この号は横田順彌特集。短編書き下ろし、自作コスチュームショー、座談会など。

 47号収録のレビューは1983年6月25日から8月15日までの20冊。

 今月の注目作は4作、星新一編『ショート・ショートの広場5』、ゴードン・R・ディクソン『ドルセイ!』、ジョン・ブラナー『衝撃波を乗り切れ』、ジェームズ・ミッチェナー『スペース』である。

 


ショート・ショートの広場5 星新一編 講談社 安田均
ドルセイ! ゴードン・R・ディクスン 東京創元社 鏡明
衝撃波を乗り切れ ジョン・ブラナー 集英社 伊藤昭
スペース ジェームズ・ミッチェナー 集英社 野村芳夫
とらえらえたスクールバス 眉村卓 角川書店 岡本俊弥
娘を悪魔に(黒魔術小説傑作集3) デニス・ホイートリー 国書刊行会 安田均
闇の城 タニス・リー 早川書房 伊藤典夫
紀元3000年のパラダイス ヘルベルト・W・フランケ 三修社 伊藤昭
日本壊滅 檜山良昭 光文社 大野万紀
水晶の涙 ジェイン・ヨーレン 早川書房 野村芳夫
カリガリ博士の子供たち S・S・ブロウアー 晶文社 伊藤典夫
日向で眠れ/豚の戦記 ビオイ=カサーレス 集英社 鏡明
浴槽で発見された手記 スタニスワフ・レム サンリオ 大野万紀
巨人伝説(遍歴編) 笠井潔 徳間書店 岡本俊弥
暗黒の廻廊 マイクル・ムアコック 早川書房 大野万紀
虜囚(野獣の書2) ロバート・ストールマン 早川書房 岡本俊弥
カローンの蜘蛛(トワイライト・サーガ) 栗本薫 光風社出版 伊藤典夫


 


 この号は眉村卓特集。短編書き下ろし、対談、作家論など(『不定期エスパー』はこの後90年まで連載が続く)。

 48号収録のレビューは、ソノラマ関係の追加レビュー7冊と、1983年6月25日から9月2日までの計21冊。

 今月の注目作は2作、『日本SF年鑑(1983年版)』と、ハリスン&オールディス編『ベストSF1』である。


日本SF年鑑(1983年版) 日本SF年鑑編集委員会 新時代社 伊藤典夫
ベストSF1 ハリスン&オールディス編 サンリオ 岡本俊弥
吸血鬼ハンター“D” 菊地秀行 朝日ソノラマ 伊藤典夫
X13号を追え 野町祥太郎 朝日ソノラマ 野村芳夫
30億年の滅亡指令 筑井信明 西田書店 伊藤典夫
赤い炎の暗殺者(スペース・レインジャー3) 仁賀克雄 朝日ソノラマ 岡本俊弥
パラレルワールド大混線 若桜木虔 集英社 大野万紀
エイリアン秘宝街 菊池秀行 朝日ソノラマ 大野万紀
怒れる深海底 斎藤英一郎 朝日ソノラマ 安田均
凄ノ王伝説3 永井泰宇 角川書店 鏡明
猫の尻尾も借りてきて 久米康之 朝日ソノラマ 岡本俊弥
危険なアイドル 草川隆 朝日ソノラマ 安田均
超能力者破壊指令(エスパー・シリーズ3) 若桜木虔 秋元書房 伊藤昭
悪霊先生 加納一朗 朝日ソノラマ 伊藤昭
妖魔を撃て(ハンター&ウォッチ2) 清水義範 朝日ソノラマ 鏡明
惑星総督グライムズ(銀河辺境13) A・バートラム・チャンドラー 早川書房 安田均
湖畔の女 小松左京 徳間書店 野村芳夫
トワイライト・ゾーン ロバート・ブロック 角川書店 野村芳夫
オールド・タウンの燃えるとき マイク・マックウェイ 東京創元社 大野万紀
インベーダー・サマー 菊地秀行 朝日ソノラマ 鏡明
妖魔の潜む沼 クリフォード・シマック 東京創元社 伊藤昭


 


 この号は星新一特集。1001編目の書き下ろしショート・ショートと対談など。

 49号収録のレビューは1983年8月10日から9月30日までの17冊。

 今月の注目作は4作、 半村良『太陽の世界10』、田中芳樹『銀河英雄伝説II』、ウィルスン・タッカー『静かな太陽の年』、イアン・ワトスン『マーシャン・インカ』である。
 『太陽の世界は』18巻(1989)まで出たが完結しなかった。銀河英雄伝説は、その後10巻(1987)まで出て完結。

 


太陽の世界10 半村良 角川書店 大野万紀
銀河英雄伝説U 田中芳樹 徳間書店 伊藤昭
静かな太陽の年 ウィルスン・タッカー 東京創元社 野村芳夫
マーシャン・インカ イアン・ワトスン サンリオ 伊藤典夫
黄金のジャンヌ・ダルク 若桜木虔 松文館 鏡明
開戦前夜・パラレルワールド大戦 若桜木虔 松文館 安田均
妖魔の騎士 フィリス・アイゼンシュタイン 早川書房 安田均
ぬすまれた学園 北園哲也 秋元書房 岡本俊弥
うるさい宇宙船 高井信 集英社 安田均
幻想惑星ナーガ(大魔界3) 田中文雄 早川書房 大野万紀
パロへの帰還(グィンサーガ16) 栗本薫 早川書房 鏡明
琥珀のひとみ ジョーン・D・ヴィンジ 東京創元社 岡本俊弥
真幻魔大戦11 平井和正 徳間書店 伊藤典夫
パラミータの炎(テクセル・キオ1) 石川英輔 朝日ソノラマ 岡本俊弥
白い流刑星 斎藤英一郎 朝日ソノラマ 野村芳夫
敵は海賊、海賊版 神林長平 早川書房 鏡明
キマイラ餓狼編(キマイラ吼3) 夢枕獏 朝日ソノラマ 伊藤昭

 1983年全般については、1984年の4月号 に総括記事が書かれている。執筆者は、国内が鏡明、翻訳が大野万紀で、評者全員の推薦作から下記作品が選ばれている (アドベンチャーのベストは発行年月日1月〜12月で区分けを行うため、概ねその年の2月に出る4月号から翌年1月に出る3月号までが選考範囲となる)

 同号掲載の評者によるコメントは下記の通り。

 まず、海外では話題作がいくつか翻訳されている。特にイギリスの3作家、ベイリー『カエアンの聖衣』、ワトスン『マーシャン・インカ』、プリースト『逆転世界』らが代表的。いずれもイギリスの新鋭(というより、もう第一線の作家)たちの、本領を窺うことができる作品だった。しかし、どうも一致した評価は得られていない。一長一短、批判する人もあれば絶賛する人もいる。小説の構造から観念まで、一貫した完成度を保つに至らないからだろう。中では、『カエアン――』がまずまず安定した作品となっている(その分、破壊力に欠けるという見方もある)。個人的には、前述した順番に評価したい。
 また、翻訳の待たれていた『危険なヴィジョン』(の3分の1)や、『ベストSF1』など伝説的な作品集が出た。15-6年前のアンソロジイだが、幸いなことに、どちらもあまり古びてはいない。もっとも、翻訳の“幻”は早く解消してほしいですね。
 国内では、神林長平の活躍が際立つ。一昨年の短編集以降、昨年は1短編集3長編を出版。新人の中では、最もパワフルな動きを示している。かんべむさし以来の言語感覚と、ディックともやや異なる、得体の知れない不気味さ(そしてユーモア)が特徴か。
 他でも、1001篇目を飾り、なお衰えを見せない星新一、さらに人気を増しつつある新井素子ら、日本では対照的な新旧両作家が注目株だった。

 

1982-86年のSFアドベンチャー収録書評リスト(Excel版)