チャーリー・ジェーン・アンダース『空のあらゆる鳥を』東京創元社

All the Birds in the Sky、2016(市田泉訳)
装画:丸紅茜
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。

 著者は、SFブログ/オンラインマガジンの老舗io9(現在はGizmodoと1つになっている)創設者の一人で元編集長。中短編を中心とした著作が百編近くあり、2012年には中編がヒューゴー賞を受賞している。本書は初長編ながら、ネビュラ賞、ローカス賞(ファンタジイ長編部門)、クロフォード賞(IAFAファンタジイ賞)を受賞するなど高評価を得たものだ。現代を舞台に、ファンタジイとSF要素を巧みに組み合わせている。

 少女がいた。少女は、鳥たちが何を言っているのか聞き分けることができた。そして、迷い込んだ森の中で不思議な巨木にたどり着き、答えのない問いかけを受ける。少年がいた。コンピュータが得意な天才ハッカーで、2秒間だけのタイムマシンを密かに発明する。しかし、小柄で変わり者だったため、学校ではひどい虐めを受けていた。ある日学校に奇妙なカウンセラーが着任し、2人の将来は別々の方向に引き裂かれていく。

 少女は魔法使い(超常現象を扱う)、少年は天才科学者なのだが、2人とも家庭ではまったく理解されない。少女の両親は姉の言いなりで、妹である少女の希望を聞いてくれないし、少年の両親はお互い仲が悪く、少年とも進路を巡って対立している。2人は家を出て大人になり、地球環境を保全しようとする超能力者グループと、地球を捨てなければ人類は滅ぶと考える科学者グループとに属し、やがて激しく抗争する関係となる。

 一見「魔法(古いもの)対科学(新しいもの)」という昔ながらのテーマに思えるが、舞台が現代ということで、さまざまな社会問題との関連がつけられている。親から見れば、天才少年は引きこもりの問題児だし、魔法少女も要領のよい姉と比べて友人も少なく将来が不安だ。大人になってからはさらに深刻さは増す。少女は自然環境の破壊者に対し暴力で報復する過激派、一方の少年も独善的な倫理観で動く秘密プロジェクトに加担する。ある意味、親が恐れた通りになるのである。

 その一方、本書は、幼い頃に惹かれ合った少年と少女の、別れと再会の物語でもある。夢のようだった田舎時代の記憶が、破滅に近づいた世界の中で再びよみがえり、新たな意味を2人に与えるのだ。