
カバーイラスト:丹地陽子
カバーデザイン:大野リサ
北清夢(ユメ・キタセイ)はニューヨーク在住の日系アメリカ人。日本に住んだこともあるという。既に3冊の著作があり、さらに1冊を準備中(2027年刊)のようだ。本書は最初に書かれた宇宙ものの長編にあたる。
選抜された80名の乗員と共に、恒星間宇宙船は未知の植民惑星を目指して飛行している。航行には30年を要するため、最初と最後の10年間は人工冬眠で眠る。ところが予期しない爆発事故が発生、船長が死亡し船は航路を外れてしまう。困難な軌道修正と人為的とみられる爆発の犯人捜しのため、船内には不穏な空気が立ちこめる。
まずこの80名は全員が女性、男は1人もいない。船内では人工妊娠による出産が行われ、その子どもたちが惑星到着後に主力の植民者となるのだ。80名は世界中から選抜されるが、出資国の資金力により枠は決まっている。船長、副船長は米中から選ばれる。主人公は母国語にも不自由な日系人なのに、たった1人の日本枠を得る。折しも地球では紛争が発生していた。
宇宙船乗組員の設定が際立つ。現代社会の状況も反映されていて、AIの見せるVR空間も面白い。『WOMBS』のような異形さまではないものの、物語自体は波乱を交えながら進み、登場人物同士の(過去、直近にあった)駆け引きや葛藤が描かれる。シスターフッド・ドラマ的には、こういう切口もありだろう。とはいえ、主人公日系女性(日本人の母親と相容れず悩む)の感性は、冒頭で引用された「おくのほそ道」とはずいぶん違う。あえて芭蕉を置いたのはなぜか、それを宇宙の旅としてどう解釈したのか、ちょっと気にはなる。
- 『WOMBS(ウームズ)』評者のレビュー