エディ・ロブソン『人類の知らない言葉』東京創元社

Drunk on All Your Strange New Words,2022(茂木健訳)

カバーイラスト:緒賀岳志
カバーデザイン:岩郷重力+W.I

 著者は1978年生まれの英国作家。主に《ドクター・フー》などのTVドラマシリーズで、シナリオやノヴェライゼーションを手掛けてきた。これまで受賞歴はなかったが、本書は2023年の全米図書館協会RUSA賞のSF部門(ジャンル小説に与えられる賞で8つの部門から成る)に選ばれている。

 主人公はイングランド北部出身の通訳。通訳といっても、異星人と思念言語(テレパシー)で会話するという特殊能力が要求される。近未来、人類は異星文明ロジア(ロジ人)と外交関係を築いていた。彼らは言葉を介さず、テレパシーでコミュニケーションを取るのだ。しかし、文化担当官専属の通訳に就いていた主人公は、担当官が殺されるという重大事件に巻き込まれる。

 長時間通訳をすると飲酒の酩酊と脳が錯覚し、文字通り酔っぱらってしまう(原題Drunkの意味)。赴任地のニューヨークは防潮堤に囲まれ、過去の面影だけが残るテーマパークになっている。ロジ人はテレパシーで会話するが、アナログな文字を重要視しアナログな紙書籍を好む。ロジ語に翻訳された本は、地球側の主要輸出品になっている……という、設定は何とも皮肉っぽい。

 何しろ主人公は酔ってしまって、殺人時に何が起こったのか覚えていない(酔っぱらい科学者のギャロウェイ・ギャラガーみたい)。ロジ人に反感を持つ勢力は存在するので、主人公も一味ではないかと疑われる。物語は、近未来のニューヨークやイングランド北部(ハリファックス)の風俗を点描しながら手探りで進む。

 タイトルから連想される「非人類とのコミュニケーション」は主題ではない。本書は犯人捜しの(特殊設定)ミステリなのである。探偵は太り気味(そういう副作用もある)の通訳だが、八方塞がりな状況ながらしだいに真相に近づいていく。SFとしてのスケール感はやや足りないものの、主人公のユーモラスな語り口でまずまず楽しめる。