眉村卓『異郷変化』小学館

装丁:おおうちおさむ 山田彩純(ナノナノグラフィックス)

 小学館P+D BOOKS版の眉村卓復刊本もこれで5冊目。本書は「小説CLUB」(出版社も含めて現存しない)に掲載された7つの短編をまとめたものである。主に1974年から75年にかけて雑誌掲載、76年に角川文庫で出版されて以来となる。当時の小説CLUBは官能寄りの中間小説誌で、超常官能ものともいえる半村良の伝奇小説《妖星伝》などが連載されていた。

 須磨の女:週一で神戸のラジオ番組を持った東京在住の主人公は、局のある須磨の近辺を案内するという女と知り合う。
 奥飛騨の女:出張の関係で岐阜から富山に向かう列車に乗った主人公は、見知らぬ女と乗り合わせた過去を思い出す。女は高山を案内してくれると言ったのだ。
 風花の湖西線:作家である主人公は予定を決めずに列車に乗る。次作の構想がまだ出来ていないのだ。そこで女子高生たちを見かけたことで、高校生だった記憶が甦る。
 空から来た女:テレビ番組のスタッフ一行が淡路島に旅行に出かける。向かった先はUFO目撃で有名なところで、ディレクターの前に現われた女は空から来たと言い張る。
 中之島の女:画廊での展示会のために来阪したイラストレーターの2人は、深夜の中之島を歩こうと思い立つ。しかしそこには異形の女たちがいて。
 銀河号の女:大阪で朝早い会議があるため、夜行寝台特急に乗った主人公は、骨箱らしきものを抱えた喪服の女たちを目撃する。
 砂丘の女:地方の営業所に本社から視察に赴いた主人公は、同期だった現場の所長から状況を聞く。その説明は納得のいかないものだった。

 《女シリーズ》ではあるが、眉村卓の描く女性は(掲載誌が求めるような)性愛の対象とはそもそも異なるものだ。それぞれ(書かれた当時の)社会的な象徴を担う存在なのである。自然環境や地域の歴史、学校制度が大きく変わった頃の思い(著者は新制中学の第一期生)、宇宙人に対する諧謔的な解釈、大企業の定型的な役割が生み出す怨霊、忘却される戦争に抗う亡霊、地方と中央との意識の落差などなど、長編とも関連する深化したテーマをはらんでいる。いかにも著者らしい書き方で、そこに本書の特徴があるのだろう。