
カバーデザイン:岩郷重力+S.KW
林譲治による《ファーストコンタクト・シリーズ》(とでも呼べる一連の長編作品)の最新作。このところ《知能侵蝕》、『惑星カザンの桜』、前作『地球壮年期の終わり』と、創元、ハヤカワの2大SF出版社で毎年各1冊(以上)が書き下されてきた。その前の《星系出雲の兵站》~《工作艦明石の孤独》などの宇宙SFにも同様の要素があったが、それらよりもテーマを絞り込んだ作品群といえる。
JAXAの木星探査衛星が、軌道上で未知の電波源と遭遇する。それはカメラにも写らないほど漆黒の巨大な宇宙船で、なぜか人類のゲノム情報を送信してくる。そのため、異星人はゲノム・トーカーと呼ばれるようになるのだ。しかしゲノムを分析すると、それが16000年もの過去に由来すると分かる。なぜ彼らはそんな情報を知っているのか。
宇宙人とのコンタクト、技術的に大きな格差がある中での情報交換は、本書の場合、限られたメンバーにより行われる。登場人物一覧で分かるが、主要な登場人物は異星人側2人、人類側は夫婦の科学者と生物学者くらいのごく少数だ。政治的な駆け引きよりも、過去に起こった謎に対するロジカルな究明に重点が置かれる。
この物語は『地球壮年期の終わり』と対になっているようだ。『壮年期』では人類は漸増的にしか進化する道はなかったのだが、本書ではクラークの『幼年期の終わり』のような飛躍的進化への道が暗示される。どちらが良いとはいえない(人類なのか/個人なのかで異なる)ものの、(政治などの夾雑物を交えず)SF的なスケール感を味わいたいのなら本書が面白いだろう。
- 『地球壮年期の終わり』評者のレビュー