倉田タカシ『タフな狩り』集英社

イラスト:シマ・シンヤ
デザイン:坂野公一(welle design)

 足かけ5年(構想からならそれ以上)を費やした力作長編。小説すばるの2021年1月号から25年4月号まで4回に分けて分載されたものを、大幅に加筆修正したのが本書である。書きはじめたころ(2019年末)にコロナ禍がはじまり、自宅外で書くスタイルだったためにスランプに陥り苦しんだという(著者インタビュー)。物語はいまからおよそ40年後の日本が舞台。再度の震災と原発事故を経て人口が半減し、各地方は外資に支配された〈工場〉と称する閉じた生活圏に分割され、差別のある格差社会となっている。

 茨城県の〈工場〉に住む主人公はその暮らしや苛めが耐えられず、アプリの助言にそそのかされるようにして脱走する。やがて、危ない狩りを生業とする4人組の1人になった。いまの仕事は、狩猟レジャー施設から逃げ出した〈獣〉を追うことだった。それは生き物ではないが、限定された知能を持ち巧妙に逃げ回る。

 物語の舞台は次々と変転し、静岡県西部の富裕層が住む〈人食い山〉、東京(唯一の都会)外縁にある神奈川県武蔵小杉、不法滞在者が占拠する東京湾沿岸にある可動住宅群(足を持って歩行する)と移っていく。こういう変貌を遂げた近未来のありさまや、ロボット/ドローンなどガジェットの数々は、架空の旅を描いた著者らしい発想に満ちていて、メカというよりキャラ的なかわいらしさがある。

 主人公は高齢者に対する強い憎しみを隠さない。著者によれば、あえて読者が共感できない露悪的な性格にしたようだ(いまどきの世相なら、差別意識はかえって好まれるのかもしれないが)。仲間たちも何らかの過去や負い目があって、後半になると隠れていた暗部が顕わになる。ただ、未来日本のありさまも、ただ過酷/絶望だけというわけではなく希望も残る。同じディストピア日本ものに椎名誠《北政府》があるが、この仄かな暖かみの有無が乾いた椎名世界との違いを感じさせる。