パット・カディガン『ウィリアム・ギブスン エイリアン3』竹書房

Alien 3 The Unproduced Screenplay,2021(入間眞訳)

カバーデザイン:石橋成哲
Front cover artwork by Mike Worrall

 円城塔・ゴジラのノヴェライズの次となると、やっぱりギブスン・エイリアンだろう。本書は熱狂的なエイリアンファンだったウィリアム・ギブスンが書いた『エイリアン3』の脚本を、盟友パット・カディガン(キャディガン)がノヴェライズしたもの。ご存じのとおり、この脚本が映画に採用されることはなかったが、脚本がネットに流れてから逆に評価が高まった。ギブスンを外した映画『エイリアン3』は不評だったからだ。遅まきながら、2018年には脚本の第2稿がコミック化、2021年に第1稿(本書)がノヴェライズされている。第1稿と2稿では、エイリアンの設定や登場人物が異なっている。

 テラフォーム途上の植民惑星〈LV426〉は、棲息するゼノモーフ(エイリアン)により壊滅する。救援に赴いた海兵隊も歯が立たず、輸送船〈スラコ〉で脱出するが、船内にはクイーン・ゼノモーフが潜んでいたのだ。激闘の末、わずかな生き残りはコールドスリープに就く(『エイリアン2』)。物語は、その輸送船が独立ステーションの領空に侵入したところからはじまる。

 本バージョンでは、主人公はコールドスリープから目覚めたヒックス伍長とアンドロイドのビショップ、アンカーポイント(宇宙ステーション)の科学者スペンスあたり。登場人物はとても多く次々死んでいく。キャラの一覧表がないので、読むのが結構大変である。舞台は巨大なステーション内部、バイオハザード状態で数を増したエイリアン相手に、迷宮的な船内逃避行が繰り広げられる。

 エイリアンの続編として、何が正解なのかについてはさまざまな議論がある。リプリーの物語であるべきなのか、あくまでも殺戮者エイリアンが主役なのか。ただ、リプリー役のシガニー・ウィーヴァーが出演を渋ったため、ギブスンとしては後者を選ばざるを得なかった。結果的に、前作で活躍したリプリーや生き残り少女ニュートは、冒頭のみしか出てこないのだ(実現しなかったさらなる続編が匂わされている)。

 脚本の第1稿は、『エイリアン2』(1986)公開の翌年末には早くも完成。20世紀末、1980-90年代の社会状況(ソビエト崩壊直前、中国台頭のはるか以前)が設定に影響している。脚本からノヴェライズまで34年間のギャップはあるが、キャディガンはそこに余分なアップデートを加えなかった。あくまでも、上映されたかも知れない正統派『エイリアン3』であるわけだ。

  • 『ミラーシェード』評者コメント
    (謝辞が、当時若かった『ミラーシェード』の寄稿者たちに捧げられている。同時代の『エイリアン』には、そういうノスタルジーが含まれるという意味なのだろう)