
カバーデザイン:岩郷重力+M.U
著者は1970年生まれの米国作家。脚本家、映画監督、プロデューサーでもあり「エルム街の悪夢」や「メッセージ」などの数々の脚本を手がけてきた。本書は小説家としてのデビュー作で、映画化のオファーも既にある。本文の中では「前世」や「来世」と同じニュアンスで「同時世」というものが登場、「現世」ではないところがポイントだ。ただ、それでは何のことか分からないので、標題を『同時世界』としたのだろう。
ガス爆発の事前通報がある。しかし死傷者の出たその事故に作為の痕跡はなく、なぜ予告できたのかが謎だった。安全保障省予測分析課の捜査官は、通話履歴から通報者=セラピストの女を突き止めるが、それは前世療法を施している患者が語る「未来の記憶」なのだった。
本来の前世療法は転生輪廻を前提とするものではなく、患者の精神安定の手がかりに前世というフィクションを使うに過ぎない。本書ではそれが「2057年の未来」に実在する。前世(過去)のはずなのに、なぜ未来なのか。視点は主要な登場人物(捜査官、セラピスト、患者)ごとに切り替わり、前世の伝える事件の真相へと迫っていく。
これはLOCUSの書評でも指摘されていることだが、本書の未来と現在がつながる関係は、自身が脚本を書いた映画「メッセージ」を思わせる(登場するヘプタポッドには未来や過去という区別がない)。また、後半で明らかになる敵の正体はこの作品(本書を読んでからご確認ください)とも似ている。とはいえ、本書の主眼はSFアイデアの面白さより、超常的な犯人捜しに伴うサスペンスにある。その盛り上げ方は、多くの映画を手がけてきただけあってなかなか手堅い。続編を意識した終わり方となっているのは(契約上の)お約束か。
- 「映画の原作を読んでみる、その1」評者の記事








